<山本敦のAV進化論 第208回>
テレビが人の動きを理解する ー ソニーが「BRAVIA CAM」をつくる理由
最適化の頻度については、例えば大きなソファに場所を移して視聴を再開した時には再び調整を行う。数十センチの誤差範囲で検知ができるそうだ。ユーザーが室内を立って歩き回っている間は調整を行わない。その都度テレビの明るさが変わる必要はないという判断からだ。ただし、一定時間離席すると、テレビが自動的に画面の輝度を下げて消費電力を抑える「オートパワーセーブモード」に入る。
明るさ以外にもテレビの画質に関わる要素を自動最適化機能に加えるべきかについて、伊藤氏は「当初はスモールスタートとして、発売後のフィードバックを確かめながら検討したい」と述べている。
■ハンドジェスチャーでテレビをリモコン操作
BRAVIA CAMがアップデートにより追加を予定する、もうひとつの面白い機能が「ジェスチャーコントロール」だ。本機能もまたカメラで捉えた画像処理から「手の形」を判別、実現している。本機能はぜひ体験したうえでインプレッションをお伝えしたかったが、今回はグローバルモデルの取材なので叶わなかった。どのような使い勝手になるのか志岐氏に解説していただいた。
BRAVIA CAMの正面で手をかざす(片手のみ)と、有効化したジェスチャーコントロールのメニューが画面に表示される。対応するのは音量のアップダウンなど4つの基本操作。メニューはユーザーが視聴するコンテンツにより少し変わる。例えば生放送の場合はチャンネル送りは必要でも、コンテンツの再生・一時停止は必要ない。代わりに映像配信コンテンツの場合にこれが有効になる。
HDMI CECによりテレビと接続されている外部機器についても、同じリモコン操作がハンドジェスチャーにより対応する。志岐氏は「手の動きを素速く認識して機敏に動作する」とコメントしている。ソニーがYouTubeに公開しているBRAVIA CAMのコンセプトムービーでおおよそのイメージが参照できる。
BRAVIA CAMにハンドジェスチャー操作を載せることを企画した背景には「テレビに付属するリモコン、Googleアシスタントによる音声操作に続く、テレビの新たなユーザーインターフェースを実現したい」という開発者の思いがあったと伊藤氏が振り返っている。
対応する操作メニューはあえて少なめにしている。あまりに多くの操作に対応しても、ユーザーが覚えきれないことが多々あるからだ。筆者もハンドジェスチャーに対応するグーグルのスマートディスプレイ「Google Nest Hub Max」を使った時に同じことを実感した。本機の「クイックジェスチャー」ができる操作の内容もまたシンプルだ。
BRAVIA CAMには、もし可能であればユーザーがよく使う機能を2〜3件ほど学習させて、任意のジェスチャーを割り当てた後に繰り返し使えるスロットを用意してほしい。伊藤氏によると、ジェスチャー操作のアップデートについてもまた「反響を見ながら対応することは可能」であるというから、ソニーが今後この機能をどのように育てていくのか楽しみだ。
もうひとつの近接検出センサーを使った「Proximity Alert」は、子どもがテレビの画面に近づき過ぎることを防ぐことを目的とした機能だ。視聴者とテレビとの間が一定の間隔よりも狭くなると、テレビの画面にアラートを表示して視聴中のコンテンツを隠す。音によるガイダンスも同時に聞こえてくるようだ。
■ビデオ通話はGoogle Duoで対応。ジェスチャー操作ができるアプリも増えるのか
BRAVIA CAMによるビデオ通話は、ソフトウェアアップデートを待たずに最初から使える。カメラの撮影解像度は最大フルHD。レンズの画角は情報非公表だが、最適な視聴距離に置かれているソファに、数名の通話参加者が腰かけて話せるようなイメージだという。
ビデオ通話は本機オリジナルのソフトではなく、新しいBRAVIAも搭載するGoogle TVのプラットフォームを活用して、Google Playストアから「Google Duo」などビデオ通話アプリをダウンロードして楽しむ使い方になる。
多くのユーザーがカメラを内蔵するBRAVIA CAMを抵抗感なく使えるように、カメラのレンズを物理的に覆い隠すシャッターを付けた。ビデオ通話等を使いたい時にハードウェアスイッチを操作してカメラ機能をオンにする。そもそもBRAVIA CAMを使わない時には外しておくこともできる。
Google Playストアからダウンロードしたゲームやライフスタイル系のアプリも、先ほどのジェスチャー操作でぜひ操作したい。伊藤氏もそのような使い方は想定の範囲内であるとしながら、「Google TVのプラットフォームに準拠している製品なので、今後はパートナーと協業しながら様々な体験を提供できる可能性を模索したい」と答えている。