<山本敦のAV進化論 第208回>
テレビが人の動きを理解する ー ソニーが「BRAVIA CAM」をつくる理由
■BRAVIA CAMは「人の動きを理解するテレビ」を実現する
あらためBRAVIA CAMを企画した経緯を志岐氏に訊ねた。
「ソニーが目指す “人に近づく” ものづくりの方向性から、BRAVIAは常にこれから進化すべき方向を検討しています。過去には2018年に発売した上位モデルでNetflix画質モードを提供し、クリエイターが意図したままの映像にユーザーが近づく体験を実現しました。2021年モデルのBRAVIAの上位機種では、高画質・高音質な映像配信サービスのBRAVIA COREが対応しています」
「その後、クリエイターや制作者の意図する画質を、ユーザーの様々な視聴環境に適応させて、テレビの画面でより正確に再現することにもチャレンジしています。環境光センサーによる自動画質調整、リモコンに内蔵するマイクで自動音場補正ができる機能などがこれらに当たります。BRAVIA CAMが目指す体験はこれらの挑戦に続くものであり、テレビの前で姿勢を変えたり移動するユーザーの “動き” にも対応しながら、より快適な視聴体験を届けたいという発想から生まれています」
BRAVIA CAMにより「シンプルに、常時ベストな画質・音質でコンテンツを楽しめる機能」が、シリーズの上位機種と親和性が高いという判断から、まずはZ9KとA95Kの各機種に同梱することを決定した。価格など具体的なことはまだ明らかにされていないが、オプションとして別売される場合、筆者の感覚としては2〜3万円程度で買い足せれば使ってみたいと思う。テレビの基本である画質・音質が向上して、ハンドジェスチャーによる新しいスマートテレビ体験が楽しめることはすべてのBRAVIAユーザーに歓迎されるだろう。将来はスタンダードモデルも含むBRAVIAの全機種が、BRAVIA CAMに対応してもいいいと思う。
■BRAVIA CAMに注目したい「3つのポイント」
以上、ソニーが年初にグローバルモデルとして発表したBRAVIA CAMの特徴を紹介してきた。ぜひ日本の次期BRAVIA新シリーズにも対応するアクセサリーとして登場してほしいと思う。
筆者がBRAVIA CAMに注目する理由は主に3つある。ひとつは、本機がいつも画質をベストコンディションに整えてくれれば、より多く「テレビの画質」に興味を持つ人が増えるように思うからだ。
ハンドジェスチャー操作のように、テレビに表示されているコンテンツに「触れるインターフェース」が普及すると、映像やサウンドを受動的に楽しむだけでなく、スマホやパソコンのように、ユーザーが能動的に働きかけるコンテンツが増えて、「スマートテレビ」の進化もさらに進みそうに思う。これがふたつめの理由だ。
そして最後に、自動画質調整やハンドジェスチャー操作により、視聴者の「動き」に対応してくれるテレビは、視聴する度にその置き場所を自由に変えたり、LGが発表して話題を呼んだ “ローラブルディスプレイ” を採用するテレビ「Signature R」シリーズのように「使わない時間は片付けられるテレビ」の進化を、巡り巡って促すように感じられたからだ。
引き続き一番の注目ポイントは画質と音質であることに変わりはないが、これからのBRAVIAはソニーが得意とするセンシングテクノロジーを取り込みながら、どのように「便利なテレビ」へと変貌を遂げていくのか楽しみにしたい。