PRこれからのDACチップの進むべき道筋に大きな一石を投じる
AKM、さらなる音質改善に挑む。デジ/アナ分離のアイデアを継承、設計ノウハウを磨き上げたフラグシップDAC「AK4499EX」
さらなる特性改善を可能にした「DWA Routing Technology」
そして二つ目の世界最高クラスのアナログ特性の実現という点について、具体的なこだわり、新技術であるDWA Routing Technologyについても中鉢氏が説明してくださった。
「世界最高クラスのアナログ特性の追求は低ノイズ・低歪みであることです。理想の音を追求するために、DACの真のノイズ特性を低減しています。特に1chあたりのS/N特性が真の回路特性と考え、AK4499より1dB改善しました。また歪み特性はAK4499と同じ−124dBと世界最小クラスです。ファブが変わったことで、この特性を出すことは設計として非常に苦労した点の一つですね。他社ファブの特徴を理解して、どこを変更すべきかを考え、我々がずっと取り組んできた低歪み技術を組み合わせることによって−124dBを達成できました。
そしてS/N特性が1dB改善した点は、新技術であるDWA Routing Technologyがもたらした効果が大きいと考えています。超低ノイズを達成するためには、電流出力型DACの電流生成に用いられる多数の抵抗素子の高いマッチング精度が要求されます。一般的にはダイナミック・エレメント・マッチングという技術を使い、抵抗を満遍なく平均化して使用することでそのミスマッチを見かけ上、下げています。DWA Routing TechnologyのDWAはデータ・ウェイティッド・アベレージの略となりますが、この技術ではダイナミック・エレメント・マッチングをベースに、製造因によるミスマッチの影響を減らしS/Nを改善させました。無信号時や小信号を含め、様々な振幅でのノイズが減少していることで微小信号のリアリティ、細やかな表現がAK4499より良くなったと感じています」(中鉢氏)
今回のAK4191+AK4499EXのセパレートDAC構成のチップや、今年に入って登場したAK4490RやAK4493Sは他社ファブでの製造委託生産となる。これまで自社ファブだからこそのメリットやこだわりもあったはずだが、この点をどう克服したのだろうか。
「ファブを持っていた強みもありましたが、これまでの知見が蓄えられていたことの方が大きいように感じます。この知見によってどこのファブを使ってもどのようにすればよいのかがわかる。これは自社ファブを持っていたことで、プロセス側とのやり取りを重ねて深い知見を得られたというメリットですね。“このプロセスの特徴はこうなっているから、こうした対策をしないといけない”という設計としてのノウハウを持っている。延岡工場のプロセス開発に携わったメンバーは社内にいますし、やり取りを重ねることで得た知見はとても大きな資産です。だからこそどこで作っても大丈夫という自信があります。新しいファブを使うときに“ここがリスクだろう”“使いやすいだろう”という見極めが意外とできるようになっていますね」(中元氏)
「DWA Routing Technologyもプロセスエンジニアと色々やり取りを重ね、“こういったことが起こり得る”という紙の上、ファブのデータの上だけではわからないことも想像し、また判断して進めてきました。プロセスエンジニアや回路設計者とともに協力して出来上がっているといえますね」(中鉢氏)
超ハイスペックフォーマットへの対応とジッターへの対策
三つ目のポイントである超ハイレゾ音源に対応しつつ、シンプルな操作を実現する2チップソリューションについては、AK4191が持つデジタル処理部の先進性がもたらすメリットが大きい。AK4191は1536kHz/64bit・PCM&44.8MHz・DSDまでの入力に対応しており、今後よりハイレートな音源が登場した際、問題なく対応できる。
そしてPCM/DSDモード切替やPCMサンプリング周波数モード、DSDデータストリームレートの切り替えも自動で行う機能性の高さ、さらにAK4499EXに対し、ミュートコントロールを行う制御信号生成機能を設け、音源切り替え時などのPOPノイズ抑制を実現している。これに加え、音質的に大きな優位点となるのが、デジタル部とアナログ部のクロックを分離でき、低ジッターな伝送が可能になる非同期動作モードを搭載していることだ。
「AK4191のオーディオインターフェースはオーディオクロックに同期して動作しています。AK4191の後段からD/A変換するAK4499EXは別の低ジッタークロックを用いることで高精度なD/A変換が可能になります。例えばストリーミングデータの再生時など、送られてくるデータと、クロックがDACで動かしたいデータとクロックのレートが揃っていない場合でもより高精度なD/A変換が可能です」(中元氏)
「データ変換時にはイメージ成分と言われる不要な成分も発生します。サンプリングレートコンバーターにも比肩するパワフルな演算量のデジタルフィルターで150dBの阻止帯域減衰能力を実現させて、イメージ成分に対処しています。このフィルターをデジタルチップに持たせることで非同期動作のノイズも抑えられ、結果として劣化のないアナログ特性を実現できました」(中鉢氏)
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