PRこれからのDACチップの進むべき道筋に大きな一石を投じる
AKM、さらなる音質改善に挑む。デジ/アナ分離のアイデアを継承、設計ノウハウを磨き上げたフラグシップDAC「AK4499EX」
ブランドの価値を改めて問い直し、再びオーディオ業界に戻ることを決意
今回、AK4499EXについて、その開発経緯や他社ファブでのチップ製造のエピソードについて、AKM開発陣に伺う機会を得た。インタビューに応じてくださったのは、AK4499、そしてAK4191+AK4498開発にも携わってこられた旭化成エレクトロニクスのマーケティング&セールスセンター ソリューション第一部、オーディオマイスターの佐藤友則氏、製品設計センター 製品開発第一部 高音質オーディオASIC設計エキスパートの中元聖子氏、そして中鉢達也氏である。
「半導体工場火災においては多くの皆様にご心配とご迷惑をおかけいたしました。私は入社以来、25年ひたすらDACチップ開発を行ってきました。今回の工場火災により、我々は自社の製品価値について改めて考えさせられ、そして見つめ直すこととなりました。AKMがDACチップを辞めてしまうかもしれないという声も聞こえる中、再びオーディオ業界に貢献したいという思いもまた強くなりました。AKMの音をもう一度、今まで以上の良い音として届けたい。そういった気持ちの中で生まれたのがAK4490RやAK4493S、そしてAK4499EXです。AK4490Rの“R”は“Rich”、AK4493Sの“S”は“Superior”、AK4499EXの“EX”は“Exceed”を意味していまして、いずれも前モデルより優れた、本当に良いものであるということを型番に込めました」(中元氏)
AK4490Rは768kHz/32bit・PCM&11.2MHz・DSD対応でS/N比は120dB、THD+Nは−112dB。AK4493Sは768kHz/32bit・PCM&22.4MHz・DSD対応でS/N比は123dB、THD+Nは−115dBというスペックであり、基本的に前製品を踏襲しているが、最新の高音質設計を導入してインピーダンスの最適化を行い、よりスピード感と余裕のある音を実現し、消費電力も抑えている。
デジタル/アナログを分離しスムーズな信号経路を実現
そしてセパレートDAC構成となるAK4191とAK4499EXの組み合わせは、スペック面の特徴として以下3つのポイントがあるという。
1.最新の設計技術によるデジタルとアナログの完全セパレート構成
2.S/N特性の改善に寄与する「DWA Routing Technology」
3.超ハイスペックフォーマットへの対応とシンプル操作の両立
「一つ目は最新の設計技術を用いたデジタルセクションとアナログセクションを完全に分離したセパレート構成であること。二つ目は世界最高のアナログ特性を実現させること。そして三つ目は現在最高水準の超ハイレートなハイレゾ対応を果たしつつシンプルな操作で実現できる2チップソリューションであることです。AK4499EXには新技術であるDWA Routing Technologyを取り入れたことでAK4499よりも対ノイズ性能を向上させました」(中元氏)
AK4499EXは2ch仕様のチップ構成で、chあたりのS/N比は135dB、歪み特性は−124dBとAK4499のchあたりのS/N比134dBより1dB改善している。一方デジタル処理を担うAK4191は1536kHz/64bit・PCM&44.8MHz・DSDまでの入力に対応し、オーバーサンプリングレート256倍を達成。デジタルフィルターの抑圧量となる阻止帯域減衰については150dBを実現している。
「まずセパレート構成のメリットですが、ワンチップ構成ではどんなに手を尽くしても同じシリコンウエハー上にアナログとデジタルが存在するため、ノイズの干渉は避けられません。セパレート構成ではそのノイズ混入経路を完全に断つので、ノイズの影響を受けず、聴感上のノイズ特性を改善しています。しかしながら、ただ分ければいいかというと、そういうわけではなく、最新の音質設計技術により、D/A変換を行うコア部分に対して様々な角度からのノイズケアを施していることで実現しているソリューションとなっています。そしてインピーダンスの最適化により、応答性に優れたスピード感のあるダイナミックなサウンドを実現できました。今回使用するプロセスにあったインピーダンス設計としていまして、ただ低ければよいというものではありません」(中元氏)
AK4499は4ch仕様であったが、AK4499EXでは2ch仕様となっている理由として大きなポイントとなっているのが、ピン配列からくる基板上の自然なレイアウトにあるという。AK4499は128ピン、AK4499EXでは64ピンと半分になっているうえ、デジタルとアナログの領域の境界を明瞭にし、基板の配線のしやすさ、信号の流れの最適化を実現し、さらなる高音質、理想のサウンド追求に貢献している。
「AK4499では4ch仕様でしたが、ch間のレイアウトをシンメトリーにしたいという思いがありました。信号の流れを自然にしたいというのは、我々も目指していたものですが、供給先となるセットメーカーさんの側からも要望されていたことでもあります。デジタルの飛び地ができると分離したいのに基板上で全くできなくなってしまう。それならば4ch仕様を切り捨ててしまってもよいのではないか。むしろchあたりのノイズをしっかり下げることで、各chバラバラでも、束ねてパラレル化しても、基板上で線が引きやすくなりますし、自然なレイアウトにした方が使い勝手も高まります」(佐藤氏)