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PR「120Vテクノロジー」を始めとする独自技術を訊く

オリジナル音響技術のメリットを解説!SPL本社キーマンを直撃インタビュー

公開日 2023/05/10 06:30 インタビュアー:岩井 喬/構成:プレミアムヘッドホンガイドマガジン編集部
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120Vテクノロジーだから歪まず余裕を持った再生音に



───「120Vテクノロジー」について、この技術ならではの特長とメリットを改めて詳しく教えてください。なぜ、ハイボルテージで駆動すると、音がよくなるのでしょうか?

ハーマン 「120Vテクノロジー」の生誕のきっかけは、1990年代中盤にマスタリングスタジオから要望を受けたからです。その背景は、この時代のデジタル技術の進化が目まぐるしく、たとえば44.1kHzや8bitだったものが徐々に倍になり、4倍になったりというようにサンプリングレートやビット数の向上がありました。

そういった進化にあわせて、マスタリングエンジニアは使う機材を考え直さなければいけない状況だったのです。その中で、デジタルの進化にどんな状況であっても対応する、進化を超越する存在としてのアナログ技術を求められたというのが、「120Vテクノロジー」生誕のきっかけになります。

その特長は、ボルテージの数値を上げることで音が扱える最大のレベル、つまり音量を引き上げることができることです。音が歪んでしまう限界を引き上げることができます。それによってどんな力強いパワフルなエネルギッシュなサウンドが来たとしても、歪まずに余裕を持ってリラックスしたサウンドを届けることができます。

スタジオ用途のマスタリングコンソール「MMC1」で初めて搭載されました。様々なデジタルコンバーターから出てくる音を、最大限リラックスさせた状態で処理をさせるために開発した技術が「120Vテクノロジー」というわけです。

───なぜ、SPLは+60V、-60Vの合計120Vを選んだのですか?

ハーマン 90年代にアメリカのアヴァロンという音楽制作用オーディオ機器で有名な会社が、±30Vで60Vの技術を使って製品を開発したことがありました。そのとき、ヴォルフガング・ノイマン氏と私で、アヴァロンの技術を超えた新しいものを考えていたときに、「向こうが±30Vで60Vなら、俺たちはその倍の120Vでいこう!」といったところから始まりました(笑)。

SPL基幹技術「120Vテクノロジー」


一般的なディスクリートアンプの2倍、半導体オペアンプの4倍にあたる±60Vのハイボルテージで音声処理を行うオリジナル音響技術。電子回路への供給電圧を高めることで、ダイナミックレンジの拡大、歪みやノイズの抑制など様々な好影響がもたらされる。


───数値で超えようという競争心がスタートだったんですね(笑)

フロッケン 「120Vテクノロジー」では、ディスクリートオペアンプというパーツがキーデバイスとしてありまして、それが入力、出力、また製品の回路上にいくつも配置されています。Phonitorシリーズ、および他の「120Vテクノロジー」が採用された製品のキーポイントといえば、すべての製品に共通してこのモジュールがいくつも採用されていて、それにより製品全体の回路のクリーンアップと品質向上に寄与しているということです。

───Phonitor xとseのDAC搭載モデルの「DAC768xs」には、DLP120というローパスフィルターが入っていないと伺いました。DSDの再生はできると思うのですが、xやseはどういう処理になるのでしょうか?

ハーマン PhonitorシリーズのDAC搭載モデルは、すべて旭化成エレクトロニクス「AK4490」を採用しています。ですので、xとseでは、このDACチップ内で信号のフィルタリング処理を行なっています。通常は専用でアナログのローパスフィルター回路を設けることはしないので、xeについては、かなり稀有な設計思想を持っていると認識しています。

───ローパスフィルターの機能をチップの外に出して、ディスクリートで組んでいるようなもの?

ハーマン はい。それを「120Vテクノロジー」で駆動させています。

一般的なモニターと異なる音楽的でリアルな表現



───AK4490は入手の難しいDACチップになってしまいましたが、たとえばそれが枯渇したとき、代替するチップについてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

ハーマン AK4490は、その音質に惚れ込んで、SPLが好んで選択しています。火災が起こる前にもそれなりの数を確保していましたし、事故があった時もありとあらゆる方法を使って在庫の確保に奔走しました。旭化成エレクトロニクスからは、新世代のチップが出ていますが、ピン配列が異なるというところで、それに対応するような新しい基板の開発にも実際に着手しています。ただ、それはできる限り行わない手法で進めたいというのが、SPL側の本音です。

どうしてもその手法でいかなければならない時、DAC部分だけ新しい基板を採用して製品の開発・製造を継続するという方針を持っています。もちろん他メーカーのDACチップが製品に適合するかを確認しましたが、現時点ではSPLが求めるサウンドの方向性に対して、高音域の主張が合わなかったり音の厚みがなかったり、製品とマッチしないという結論に至っています。

───実際に「Phonitor x」を聴かせていただいて、すごくS/Nがよく、静寂感のあるサウンドで、特に音場の広さというか、残響音の細かい部分がよくわかるところが素晴らしいと感じました。特に立ち上がり、立ち下がりの部分のリアリティですね。バランス駆動にすると、ピアノのハンマーの当たるような音とペダルのニュアンスといったところが、変に強調することなく見えてくる。

「120Vテクノロジー」があるからこそだと思うのですが、ダイナミックレンジの広い中に、きちっと小さい音から大きい音まで見通せるところが、他の製品とは違うメリットですね。一般的なモニターサウンドとは違い、Hi-Fi としても楽しめるスムーズな表現はSPLならではの魅力だと思いました。


ハーマン ありがとうございます。120Vテクノロジーを使用した製品の開発をこれからも進めていきますので、今後の新しい製品にもぜひ期待してください。

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