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ゼンハイザーのタラモア工場見学(3)

ものづくりで“情熱”を伝えたい。ゼンハイザーのヘッドホンを「あえて手作業」で組み立て続けるわけ

公開日 2024/10/29 06:30 編集部:平山洸太
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ゼンハイザーのタラモア工場(アイルランド)は、これまで30年以上にわたり、同社のオーディオファイル向け製品を作ってきた。初代からHD 600シリーズを作り続けてきたほか、2022年にはHD 800やIE 900などのハイエンドモデルについても、ドイツからタラモアに集約された。

全3回となる本シリーズ。第1回では同社のトランスデューサーが “全自動” で作られていく様子、そして第2回ではヘッドホンやイヤホンが “手作業” で作られていく様子をお伝えした。また、HD 600シリーズの組み立てを体験できたので、その様子も合わせてレポートした。

最終回となる本記事では、タラモア工場のトップで30年の経験をもつ、プラントマネージャーのPat Fulton(パット フルトン)氏にインタビューを実施。手作業へのこだわりや工場集約による変化などを、一問一答形式でお伝えしていく。

Consumer Hearing Ireland Limited.でPlant Managerを務めるPat Fulton(パット フルトン)氏

なお、タラモア工場で作られているのは、ゼンハイザーのオーディオファイル向け製品。具体的には、ヘッドホン「HD 800シリーズ」「HD 600シリーズ」、イヤホン「IE 900」「IE 600」、ヘッドホンアンプ「HDV 820」、そして1000万円級のエレクトロスタティック型ヘッドホンシステム「HE 1」(※日本未発売)となる。

熟練の技術でハンドメイド。あえて手作業を続けるわけ



――タラモア工場の使命や目標について教えて下さい。また、どれくらいのスタッフが製造に携わっているのでしょうか

我々は「毎日改善する(Improve everyday)」という、とてもシンプルなスローガンを掲げています。全従業員が一丸となり、日々改善しようとしているのであれば、より良いプロセス、より良い製品、より良い方法を見つける絶好のチャンスになると考えています。

ここには100人以上の従業員がいます。たとえ小さな改善であっても、それが積み重なって大きな成果を生みます。だから改善は、我々にとっては非常に重要なことだと考えています。

「改善」していくことが重要だと話す


――オーディオファイル製品の製造にあたり、主に品質面を保つために、こだわってきた点などありましたら教えて下さい

ご存知のとおり、品質は非常に重要であり、それに多くの時間を費やしています。最高の品質をお届けするため、最良のプロセスに取り組むことに多くの時間を費やしています。そして、全ての製品は100%テストしています。

すべての製品を1台ずつチェックしている


――タラモア工場では、あえて手作業による組み立てを続けていますが、それはなぜでしょうか

我々がタラモア工場でこだわっているのは、テクノロジーと手作業によるアプローチの両方を、うまくミックスさせるということです。

人の手が加わることによって、起こったり伝わったりする想いがあるはずです。そして、ゼンハイザー製品を使うユーザーたちが、ものづくりに注ぐプライドと情熱を少しでも感じてくれることを願っています。我々は、それがとても特別なことだと思っています。

この工場の従業員は、自分たちの仕事に大きなプライドを持っていて、常にベストを尽くしたいと思っています。ですから、その特別な想いが製品に反映されることを願っています。そのために、手作業にこだわっているのです。

HD 800 Sの製造現場


――ハンドメイドでトランスデューサーを製造するには、何か特別なトレーニングが必要で、どのくらい時間がかかりますか?

はい、確かに特別なトレーニングが必要です。トランスデューサーを自分で手作りできるようになるまでに、作業内容によっては、かなりの時間がかかってしまいます。また、手先の器用さも必要です。

そのために、非常に専門的なトレーニングプログラムを用意しています。このトレーニングを通して技術を学ぶことによって、時間とともに従業員が成長し、スキルを高めていけるのです。

HD 800シリーズに搭載されるトランスデューサーはハンドメイドとなる

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