前回まででスピーカーについてのおさらいはひと区切り。今回からは、アンプについて見ていきましょう。
さて、アンプとはどういうもので、どんな役目をするのでしょう?「CDプレーヤーやFMチューナーから音楽信号を受けとり、それを必要なレベルまで大きくしてスピーカーをドライブする」。そう、正解です!でも、つまみのたくさんついたアンプがどうやってその役目をしているのか、もっとくわしく知りたいとは思いませんか。アンプはどんな電子部品で構成されているのでしょう。
またアンプにもいろんな種類があります。プリメインアンプにプリとパワーをセパレートしたもの。またA級、B級って何のこと?アナログアンプとデジタルアンプの違いとは何か。なぜ熱はでるのか。どう使いこなせばよいのだろうか。アンプのスペックや用語をもっと知りたい。次々に疑問が湧いてきますね。それを順序よく、わかりやすく解説していきましょう。
■アンプの基本の役目は「増幅器」
オーディオ機器でアンプが一番わかりづらいといいます。なるほどプレーヤー、デッキやスピーカーなどのメカと違って、電気は目で見ることができません。入口から入った電気がどうやって大きくなるのか……。そう、電気が大きくなることを増幅というのです。
アンプとはアンプリファイヤー(Amprifier)の略で、日本語では増幅器です。例えばCDプレーヤーからの信号とそのままスピーカーにつないでも、ウンともスンともいいませんね。プレーヤーの出力は数百ミリボルト。そんな小さいエネルギーではスピーカーを動かしたり鳴らしたりはできないのです。その間にあって、電気の働きで信号のエネルギーをうんと強くしてスピーカーに送り出す。それがアンプの基本機能というわけです。
アンプには、小さい信号を大きくする「増幅」のほかに、もうふたつ大事な役目があります。そう、上の表にまとめたように、「プログラムソースの選択」と、「音量の調節および各種のコントロール機能」。これがオーディオ製品としての、アンプの3つの役目なのです。
アンプにはCDプレーヤーやチューナー、デッキなどさまざまな機器がつながれますが、その中から好みの音楽ソースを選びだすことが必要でしょう。またボリュームがなければ音量の加減もできず、いつも一定の大きさでしか聞けないことになります。さらに低音や高音のバランスも変えて、好きな音で楽しみたい。そんな希望をかなえてくれるのがアンプなのです。
■増幅の仕組み
さて増幅作用をもう少し見てみましょう。上の図の、長方形に三角が入れ子になったようなマーク(シンボル)がアンプで、左から小さい信号が入り、右側から大きくなった出力信号が出ます。このとき、入力が5倍10倍になれば、それに比例して出力の方も5倍10倍と同じ波形のまま大きくなっていくのです。形が崩れては正しい増幅とはいえませんね。それが歪みというものです。
ちょっと待ってください。何もしないで、信号が成長でもするように大きくなる?ほっといたお金が増えている?そんなうまい話はありません。どこかでエネルギーの補強が必要なはずですね。そう、必要なエネルギーはAC電源からもらう。そのエネルギーの一部が増幅のために使われ、残りが熱となって失われるのです。アンプが熱くなるのはそのため。だからもらった電気エネギー以上の働きをすることはありません。これが基本的な増幅のメカニズムだと覚えましょう。
アンプはブラックボックスといわれるのですが、それは中で起きている仕組みがよくわからないからでしょう。トランジスタや真空管が入っていて、それらの増幅素子がアンプの機能を持つ、ということはおぼろげながら分かっていても、素子が1個ではアンプになりませんし、増幅回路という苦手な電子回路の話になっていくと、話がとても難しくなってしまいます。
では、たとえ話でアンプの仕組みを解説しましょう。
上の、増幅の原理図を見てください。電源は水を蓄えた貯水タンクにたとえられます。エネルギーのダムというわけです。水道はACコンセントで、蛇口から電気が次々に供給され、ダムの水位が減っても枯れてしまうとはありませんね。
さて、その貯水タンクから下のパイプを通って水が流れていくのですが、途中のバルブ(弁)がなければ水量は一定で、増えたり減ったりすることはありません。これは無信号で増幅をしていない状態です。そこにトランジスタという素子をもってきて、バルブの役割をさせたらどうでしょう。トランジスタは働きもので、音楽信号の大小によって、バルブを根気よくあけたりしめたりするのです。
ポップス音楽のようにリズムが一定で大きさがあまり変化しない曲であれば、バルブの開け閉めはラクですが、クラシックの管弦楽のように楽器の数が多くスコアも複雑で、ダイナミックレンジの広い演奏の場合は、とてつもなく大変な作業とわかるでしょう。その複雑な動きにバルブが追いついていかないと、音に遅れやズレが生じてしまう。これでは音楽になりませんね。ハイスピードで優秀な素子が好まれるのはそのためなのです。
このように音楽信号の大きさに比例して、トランジスタという弁を上下させ、電源から供給される電流を加減しながら、大きな信号を得るのが増幅なのです。電源なしに増幅は成り立ちませんね。アンプは電源だ!というマニアもいますが、まったくその通りなのです。
実際はコンセントの電気は100VのAC(交流)で、トランジスタのアンプ回路をはたらかせるにはDC(直流)に直さなくてはいけませんから、アンプ内部には電源トランスや整流回路というものが必要になるわけです。またひとくちにトランジスタといっても、前段では微小な信号を軽く増幅するだけでよいのですが、最終段でスピーカーを駆動するパワートランジスタは発熱も多く、その熱を逃がすためのヒートシンク(放熱板)なども欠かせませんね。
■アンプの内部構造
では今回の最後に、アンプの内部をご覧にいれましょう。
これは標準的なプリメインアンプで、天板を開けると電子パーツがぎっしり。見てすぐにわかるのが電源ブロックです。重量のある電源トランスとその周辺はダイオード、コンデンサなどの整流回路で構成。高級アンプではボディの大半を電源部が占めるというケースもありますね。羽のようなヒートシンクにはパワー素子が取りつけられているし、前段のプリアンプ部分を受け持つ基板なども見えるでしょう。こちらは小さなトランジスタやCR抵抗器やコンデンサーパーツが実装されていますね。
よくみると背面のスピーカー端子につながれているケーブルも確認できます。信号の流れも何となくわかって、「ああ、こうなっているんだ!」とアンプに親しみがもてたらしめたものです。
背面には電源ケーブルがついています。またフロントパネルをみると、主役のボリュームやソースセレクター、トーンコントロールなども仲良くならんでいますね。これらの機能や使いこなしについてや、背面にある端子の役目と使い方などは、また次回以降に解説していきましょう。
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