30回を越えるオーディオ講座ですが、いよいよ最終テーマの「放送&録音編」です。今回は「エアチェックの醍醐味」と題して、FMやPCM放送、さらにインターネット環境での録音についてやさしく解説しましょう。
エアチェックのエア(air)とは、電波や放送のこと。空を飛んでいる放送電波をアンテナでキャッチしてその音楽を聴いたり、また録音して自分だけのライブラリーにする行為をエアチェックというのです。その魅力は何といってもCDやアナログレコードなど手持ちのメディアよりも、はるかに膨大な音楽ソースが手に入ること。それぞれの特徴を表にまとめてみました。以前はアナログのFM放送のみでしたが、現在ではソースもぐんと広がって、デジタル放送のCS-PCM放送(ミュージックバード)やインターネットラジオもエアチェックのソース仲間といってよいでしょう。
■FM放送のエアチェック
まずFM放送です。60〜70年代はエアチェックの全盛期。FM番組誌などで放送日を調べては、テープデッキを回したものですよね。地上波のアナログ放送にはFMとAMがあるのですが、そもそも音声信号を電波にのせる方式(変調といいます)が違い、周波数もFMの方が76〜96MHzと高くなっています。そのために一般的なAMラジオ放送(535〜1605kHz)より格段に音質のよいステレオの音声を送ることができるわけです。FMとはFrequency Modulation(周波数変調)の略。もともと音楽放送用に始まったFMなので当然といえば当然ですが、混信がなく周波数レンジが広いこと。なおかつ歪みやノイズも少ないきれいなサウンドが特徴ですね。
ではFM放送の受信に必要なものとは何でしょうか。ずばり、電波をとらえるFM専用のアンテナとFMチューナーです。FMアンテナは地上波のテレビ用とは違い、専用のものを用意しましょう。無数にとびかっている電波の中から、76〜96MHzというFM帯域をキャッチするものです。アンテナには指向性といって電波を捕らえやすい向きがあるので(地域によって違います)、業者などに頼むとよいでしょう。
チューナーは受信機です。FM/AM兼用タイプが多いのですが、チューナーの背面をみるとFMアンテナ入力というのがありますね。そこに屋外のFMアンテナから同軸ケーブルで引いてきた信号をつなぐわけです。近ごろは地域のFM局など沢山あるので、ダイヤルをお目当ての局の周波数にセットすると、きれいな音楽が流れてきますね。この作業を同調をとるといいます。チューナーから先はCDプレーヤーなどと同じように、アンプのライン入力につなぎましょう。
さらにテープデッキへの録音です。以前だと、一般のエアチェッカーはカセットデッキ。マニアになるとオープンリール(手でリールをかかるタイプの大型のデッキ)を愛用したものです。録るのはアナログ音声なので、MDやHDDレコーダーなどデジタル録音機の場合は、アナログ端子を使って信号のやりとりをすればよいのです。
アナログ録音時の注意としては、メーターの触れに気をつけましょう。レベルを上げ過ぎるとータが振り切れたりして音が歪むことになりますし、逆に小さ過ぎてはノイズが気になりますね。ほどよいレベルがよいのです。
■有料PCM衛星デジタルラジオ/ミュージックバードを楽しもう
放送でデジタル音声というと、CS-PCM放送の「
ミュージックバード(MUSIC BIRD)」がお馴染みですね。通信衛星のJCSAT−2Aを用いた有料放送で、CDを越える48kHz/16ビット(Bモード)の超高音質な音楽が、空から降ってくるのです。音にこだわるエアチェッカーなら、これをキャッチして楽しまない手はありません。
宇宙に浮かぶ衛星からの、GHz帯域の電波を使うPCM音楽放送の受信に必要なものは、ミュージックバード専用のパラボラアンテナと専用のチューナー。これは10メートルのケーブルも付属してレンタルしてもらえるので安心です(購入もOK)。
但し有料放送なので、初期費用として入会金が1,200円、機器のレンタル費が月々840円、また番組の聴取料金として2,100円/月がかかります。入会の申し込みや資料請求は
こちらから可能です。
番組の内容ですが、非圧縮でCDを越える音質のBモード(48kHz/16ビット=1536kBps)とその半分のレートで圧縮されたAモードとがあります。Bモード放送は7chと8ch。7chの「THE KLASSIC」はザルツブルク音楽祭や海外ライブを含むわが国有数のクラシック専門チャンネルです。また8chの「THE JAZZ」は魅力いっぱいのジャズ総合チャンネル。話題の高音質盤や都内でのライブなどもオンエアされますよ。
契約はほとんどがレンタルプランだそうで、月々3,000円弱でBモードの2番組と、ロックやJポップスなど何でもアリのAモード放送(9〜12ch×2)とあわせて10番組をたっぷりと楽しめるから安いものです。アンテナの設置は自分で行いますが、電話でのガイドもしてくれるので思ったよりも簡単。これは衛星が見通せる位置。つまり「南々東」を目安として、午前10〜11時に太陽が見通せるベランダなどに、仰角45度にてパラボラをセットすればよいのです。チューナー出力としてはアナログのL/Rのほか、光デジタル端子も装備。デジタル音声のままHDDレコーダーなどに取り込むことだってOKなのです。
■インターネットラジオなどデジタルファイル音楽を楽しもう
もうひとつはインターネットを活用した「インターネットラジオ」です。これはインターネットを通じて従来のラジオ番組のような音声番組を配信するもの。世界に張り巡らされたインターネット回線を介して、国内外の番組を楽しもうという新しい潮流です。従来の放送によるエアチェックとは全くイメージが違いますね。海外の番組も聴取できるので、たとえば海外で行われている演奏会の生放送なども楽しむことができるんです。これは嬉しいポイントですね。
インターネットラジオの配信方式はダウンロード方式とストリーミング方式が主流。楽しみ方のひとつめは、インターネットにつながったPCを使う方法。PCで配信サイトにアクセスし、そこで番組のファイルを入手します。ダウンロードした番組は、RealPlayerやQuicktime、Windows Media Playerなどを使って聴くことができますし、iPodなどに入れて持ち歩くこともできますよ。
もうひとつは、ネットワークに対応するコンポを使う方法。パイオニアのPDX-Z10や、ソニーの“ネットジューク”NAS-M75HD、ポーカロラインが取り扱うTangentのQUATTRO MK IIなどがありますよ。これらは、本体をネットワークに接続すれば、直接番組を受信してくれます。ソニーの“ネットジューク”では、受信した番組を内蔵のHDDに保存することもできるので便利ですね。
そのほか、パイオニアやヤマハ、デノンなどから発売されているインターネットラジオ対応AVアンプをネットにつなげば、普段ピュアオーディオを楽しんでいるスピーカーでインターネットラジオが楽しめますよ。
次回は「生録の楽しみ」にスポットを当てて、よい音で録音するポイントなどを解説します。
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