これまで本コラムでは東芝の薄型テレビREGZAを使った動画配信などのサービスを検証してきた。
その中で薄型テレビを使って動画配信を楽しむにはLANケーブルを追加しなければならなくなって困った、という話をしたかと思う。その時のテストに限らず、ゲーム機、デジタルレコーダー、テレビにオーディオと、我々を取り囲むエンターテインメント機器はネット接続を前提としたサービスが盛り込まれることが多くなってきた。僕の家のLAN用ハブは24ポートを使っているが、これでようやく事足りているくらいのネットワーク機器が我が家を占領している。このようにLANケーブルが敷き詰められたような環境を少しでも改善できればと考え、今回はPLCアダプターによる、電力線を使ったインターネット接続を実験してみることにした。
PLCとは高速電力線通信(Power Line Communications)のことで、大まかに言えばLANケーブルやワイヤレスでやりとりするインターネット通信を、屋内の電力線を使って電送しようというシステムだ。一般的な使用例としては下表のようなイメージだ。
PLCアダプターは、乱暴な言い方をすれば親機と子機を使ってインターネットの情報を電気信号に混ぜ込み、パソコンやルーターの近くで再度互いを分離させる機能を持つ機器だ。LAN環境を構築しなくても、屋内ならば配電線を使ったインターネットを利用できるのもメリットだ。I・OデータのPLCアダプターの場合、価格はオープンだが同社直販サイトでは、スターターパックが21,000円(税込)、子機単体が13,650円(税込)で販売されている。同様にホームネットワークが構築できる機器としては、ワイヤレスなら親機となるアクセスポイントは8,000円程度、子機も10,000円程度で購入できる。今のところ価格面ではワイヤレス関連機器の方が求めやすくなっている。
ではPLCならではの魅力とは何だろうか。それは将来性にあると僕は考えている。いずれPLCの子機がすべてのネットワーク対応のAV機器にビルドインされたとすれば、今までどおり壁コンセントにACコードを差し込むだけでネットワーク環境を使ったサービスが利用可能になる。ワイヤレス機器のような複雑な接続設定が要らないので、誰もがカンタンにAV機器のネットワーク機能を利用できるようになるかもしれない。
とはいえ、電力線を使うのだから接続に関する決まり事や制約も多い。PLC対応の機器は必ず壁にあるコンセントに直接挿し込まないと通信速度が落ちてしまう。雷サージ、ノイズフィルター付き電源タップ、無停電装置(UPS)などに接続して使用することもできない。PLCアダプターを接続したコンセントに掃除機、ドライヤー、電気ドリル、無線機器、調光機能付ランプなどを接続すると、それらの機器が発するノイズにより通信速度が落ちることもあるという。
これらの注意点を頭に入れて設定をしてみよう。先ずは家の中に、PLCアダプターが直接挿し込めるフリーの壁コンセントを探してみる。これがなかなか難しかったのだが、ようやく一口だけ見つかった。ここに親機を接続して、初期化などの準備を行った。次は親機に接続するLANケーブルを用意する。ルーターとPLCアダプターをLANケーブルで接続して、親機の準備は完了だ。次に子機の設定を始める。親機と同じコンセントに子機を差し込みセットアップボタンを交互に押して親機と子機を認識させる。
PLCアダプターの設定は親機と子機をコンセントに差し込み、それぞれにLANケーブルを繋ぐだけなので簡単…、なのだが、我が家のように全てのコンセントがタコ足配線になっているような家では、推奨されている環境を探すだけでも一苦労だった。さらにコンセントに多くの機器を接続している場合では、通信速度が落ちるという噂もある。実際の通信速度の実験結果については次回ご報告しよう。
−次号の掲載は3月6日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−