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【第56回】スカパー!HDの2番組同時録画に対応するHDD内蔵チューナー「TZ-WR320P」に迫る2010年 12月 17日 (金曜日)スカパーJSATは今冬、HDD録画機能内蔵のスカパー!HDチューナー「TZ-WR320P」のレンタルと販売を開始した。320GBのHDDを搭載するこのチューナーは、なんと同社のチューナー初となる2番組同時録画を実現している。パナソニックとの共同開発によるモデルなので、BDレコーダーのDIGAや、パナソニック製のチューナー製品でおなじみの番組表や番組検索の機能が利用できる。スカパーの“本気度”が伝わってくる注目製品だ。今回はこのチューナーが開発された経緯と、使い勝手などをスカパーの商品開発担当の方にインタビューし、詳細を探ってみた。
TZ-WR320Pは一般の電気店での販売はなく、スカパー!ダイレクトSHOPからの購入になる。販売価格は32,800円(税込)。新規加入の場合に限り期間限定でのキャッシュバックなどもあるので、興味のある方は早めにお問い合わせいただきたい。ちなみにレンタルの場合は月額945円(税込)で利用できる。 − まずは「TZ-WR320P」が開発された背景をお聞かせください。 相良氏:スカパー!HDでは2010年12月に新たに4つのハイビジョン放送チャンネルがスタートしました。現在は合計85チャンネル以上のチャンネルでハイビジョン放送がお楽しみいただけます。おかげさまで、ハイビジョン放送のチャンネル数が増えるほどに、受信契約数も増えています。ただ、契約者数が増えるほどに、これまでに発売してきた専用チューナーの機能・操作性について、サービスセンターにより多くの要望や意見を頂くようになりました。皆様からいただいた声を、現時点で可能な限り詰め込んだ製品が新製品「TZ-WR320P」です。 − 販売とレンタルの両サービスをスタートされて、手応えはいかがですか。 相良氏:本機単体で「視る・録る」がカンタンに楽しめると、多くの方々から好評をいただいています。操作性の向上に対する評価が高まるであろうことはある程度期待していたのですが、意外だったのは操作性に加えて「画質がよくなった」という評価を多くいただいたことです。このあたりには、今回の製品を共同開発したパナソニックの画づくりのノウハウが活きているのだと思います。 − 確かに従来のスカパー!HDチューナーと比較してみると、映像の発色がとても良いと感じます。操作性についてはどのように練り上げてこられたのでしょうか。 相良氏:番組表の操作性が格段に向上しました。検索機能の使い勝手も向上しています。 このあと相良氏から番組表の改善点についてうかがった内容をまとめてお伝えしようと思うが、その前に、いかに「TZ-WR320P」がスカパー!HDユーザーにとって福音をもたらす製品であるか、ポイントを整理しておきたい。これまでの連載記事の中で、既存のスカパー!HDチューナーについては使い勝手を紹介してきた(関連記事)。従来の専用チューナーでは番組表の表示、検索機能、外部機器への録画機能などが、とても使いづらかった。録画好きの筆者ですら、定期予約を設定したあとは、個別の番組録画をあまり行わなくなっていた。理由は多々あるが、それらはチューナーの操作性の悪さに起因するものだった。 しかし「TZ-WR320P」では、これまでのチューナーと比較して格段に快適な操作感が得られる。まず番組表だが、レイアウトはパナソニックのBDレコーダー“DIGA”シリーズの番組表のデザインを踏襲している。DIGAでは番組表の側面に表示される広告スペースも、TZ-WR320Pではスカパー!HDのオススメ番組を表示するスペースになっており、ユーザーの使い勝手を高めている。このお知らせスペースには、その日に放送される番組の見どころや、放送時間の変更などの視聴情報が表示される。 番組表の表示チャンネル数は、「3〜19チャンネル」まで変更できる。50V型を超えるテレビなら19チャンネル表示しても使えそうだが、相良氏によれば「7か9チャンネル表示が最も使いやすく、標準的な使い方なのでは」という。
専門チャンネルのデパートと言えるスカパー!HDの番組を録画する際、欠かせない機能が「チャンネル別番組表表示」だが、TZ-WR320Pではこれに対応した点も注目だ。スカパー!HDのチャンネルは、たとえば自然・ドキュメントのファン向けにナショナルジオグラフィックチャンネルがあったり、放送局ごとに特化した内容の番組を放送している。ある個別のチャンネルしか録画しないという人もいると思う。そんなユーザーにとって、チャンネル別表示ができれば、同一局の放送1週間分を1画面で表示するので、そこから好みの番組を手軽に選んで録画指定ができる。この機能は一般のBDレコーダーでも搭載しているモデルは多くあるが、放送局ごとのキャラが立っているスカパー!HDだからこそ重宝する機能だ。
本機では「シリーズ予約機能」が充実したのも見逃せない。毎週・毎日予約のほかに、番組名で探して録画予約できる「探して毎回予約」機能が追加された。スカパー!HDのチャンネルには、連ドラなのに微妙に放送時間を変更して放送する局もある。これまでの曜日指定予約だと、不意の時間変更に対応できず、冒頭や後半が切れているという悲劇に見舞われた。「探して毎回予約」は時間変更も追従しながら同一番組を探し出して自動録画するので、悲劇が起こる確率は激減しそうだ。ただ再放送も探し当てて録画してしまうので、そういった場合は「曜日選択」を合わせて設定することで、ムダ録りを減らす工夫もされている。ちなみに「探して毎回予約」は1日・7番組まで録画する設定となっている。
録画ファンにとって気になるのが「最大予約件数」だが、TZ-WR320Pは最大で64件の予約設定ができる。そのうち32件が「探して毎回予約」に振り分けられている。この件数が多いか少ないかは人それぞれだと思うが、2番組同時録画対応と考えると、筆者はかなり少ないと感じている。筆者のように何でも録り散らかすユーザーや、本機1台を家族数人で共有するなら、最低でも2倍、できれば3倍の予約件数は確保したいところだ。ぜひ次期モデルでは件数を増やしてもらいたい。 − 録画予約機能の周辺はかなり使いやすくなっていますね。2番組同時録画も重宝しそうです。 相良氏:そうですね。私自身もかなり録画好きな方ですので、本機が搭載するEPGを操作しているだけでも楽しくなります。以前はスカパー!の番組はこれだけ再放送があるのだから、2番組同時録画を使う機会がそんなにあるのだろうかと思っていたのですが、使い込むほどに録画したい番組が増えていくので、今や2番組同時録画は無くてはならない機能だと感じています。
− 同じ時間帯に“3つめ”の録画予約を入れようとした場合はどうなりますか。 相良氏:「予約重複確認」のメニュー画面が表示されますので、リストの中から任意の1番組を選んで削除いただくことになります。ただし重複管理を行わなかった場合は、重複時に自動的に一番古い予約が削除対象となります。
− 3番組目が重なったときは、例えば同じタイトルの番組が検索できて、他の放送日の再放送が探せるといいですね。 相良氏:そうですね。今後の課題として検討してみたいと思います。 − でも本機の場合、スカパー!HDを1契約で2番組同時に録画できるのでオトクですよね。だんだん欲が出てくると、さらにもう1契約追加して、4番組同時録画がしたくなりますね。 相良氏:そのような方たちのために、スカパー!HDは1世帯で複数契約いただくと「複数台割引」が利用できます。まず2つめの契約以降の場合、加入料金2,940円と月額410円の基本料金が無料になります。さらに同一サービス内の同一商品(同じチャンネルパック)を契約すれば、2契約目以降の視聴料は半額になります。家族でチャンネル争いが激しくなったら、ぜひ追加契約を検討してみてください。 録画機能について、筆者が驚いたのは「TZ-WR320P」の内蔵HDDに録画した番組は、外部にムーブできないという仕様。内蔵HDDに好きなだけ録画して、必要な番組を選んでBDレコーダーなどにつないでムーブするという使い方を想定していた。それではスカパー!HDの番組をBDディスクに保存したい場合はどのように行えば良いのかといえば、ホームネットワーク上にLANで接続したBDレコーダーに直接録画することになる。この辺りの録画方法については過去記事で一部関連する使い勝手を報告しているので参考にして欲しい。 本体内蔵のHDD容量が320GBという点については少なく感じるかもしれない。確かに頻繁に録画するユーザーであれば不足に感じるだろうが、一方ではムーブができないので、内蔵HDDについては一時保管するキャッシュ的な使い方がメインになると考えれば、適当なサイズであるとも言える。LAN経由で複数のLAN HDDやBDレコーダーを接続できるので、録画好きであればメインストレージはむしろ外部接続機器になるはずだ。
TZ-WR320Pでは外部接続機器への録画設定が、これまでのチューナーと比較して大幅に使いやすくなっている。なんとネットワーク経由で6台までの機器を録画先として登録でき、予約内容ごとに録画先の機器も振り分けられるのだ。これは従来のチューナーを使っていたユーザーにとって、驚くべき進化であると言えるだろう。過去記事でも指摘したのだが、従来のチューナーでは予約録画先として設定できるレコーダーは1台のみで、複数台を接続して録画先を切替えながら使おうとすると、チューナーに設定した予約データが消去されるという、ユーザーにとっては使いづらい仕様だったのだ。 − スカパー!HDの放送には3Dの番組もありますが、TZ-WR320Pでこれらの番組を録画して視聴することはできますか。 相良氏:本機を3D対応テレビに接続していただければ視聴できます。年末年始には各種パックに加入していれば無料で視聴できる3D番組が目白押しです。「3Dテレビを購入しても、再生するコンテンツがない」という声も多いようですが、スカパー!HDなら毎日3Dコンテンツを放送しているので、せっかくの3D再生機能が宝の持ち腐れにならないと思います。音楽ライブや競馬中継の3D放送などは、特に臨場感があってオススメです。
− 本機は購入した場合と、レンタルの場合では、どちらがお得なのでしょうか。 相良氏:その選択はご利用を検討されている皆様のご判断におまかせしたいと思います。でも、レンタルでお使いいただいた場合も、1年使ったあとに、満足いただけた場合は“買い取り”も可能です。あるいはチューナーはいつも最新機種を使いたいと考えるならば、レンタルという選択も良いかもしれません。 録画好きにとって年末年始は特番などの注目番組がラッシュする時期で、ウレシイやらツライやら、いつも大混乱の状態になるのではないだろうか?筆者も毎年この時期はいくつものレコーダーのリモコンを駆使して録画予約にいそしむ毎日だ。 ところが筆者にとって、以前に比べて地上波の番組はあまり魅力的でなくなってきている。以前には楽しみにしていた放送も終了したり、たとえば1988年頃から年末になると放送されていたフジテレビの「F1総集編」も、今年からは放送が無いようで、かなりガッカリだ。 その一方で充実しているのが、スカパー!HDとWOWOWデジタルの有料放送群だ。筆者はWOWOWデジタル専用にソニーのレコーダー“BDZシリーズ”を1台充てている。来年の年始にWOWOWで放送が予定されている「アバター」は、レコーダーの2番組録画機能を使って、BD保存用のDRモードとPSP動画用の2本を、日時指定予約を駆使して録画する予定だ。 スカパー!HDのコンテンツの充実ぶりはすごい。毎年、年末年始には話題のドラマの一挙放送があり、毎週予約している番組とぶつかって、ため息をつきながら録画を見送る事がしばしばあった。 とくに今年はFOXで12月31日から1月7日まで、なんと海外ドラマ「24」をシーズン1から7まで“168話”ぶっ通しで放送するという。そのほかにも、ヒーローズスーパードラマTVでは「HEROESファイナルシーズン」、ユニバーサルチャンネルでは「セックス・アンド・ザ・シティ 4〜6」、LaLa TVで「トゥルーブラッドシーズン1」、FOX CRIMEで「デクスター〜警察官は殺人鬼シーズン2」、AXNミステリーで「THE TUDORS〜背徳の王冠〜 シーズン1〜3」等々、話題の番組の一挙放送がある。もちろん他にもスペシャルな番組が目白押しで、来る年末年始の放送はうれしすぎて頭が痛くなるぐらいの充実ぶりだ。 これまでのスカパー!HDチューナーは使い勝手が満足できなかった。とくに番組検索機能が使いづらく、検索文字の誤変換が多く、キーワードのプリセットもできないのが困りものだった。それなのに、スカパー!HDのコンテンツがとても魅力的なので、しばらくは番組表を見ないようにガマンしようとすら思っていた。そこへTZ-WR320Pの登場だ。本機ならば年末年始の注目番組ラッシュも逃さず録画できそうだ。 最新のBDレコーダーのトレンドとなっている機能が、本機には当たり前のように搭載されているが、これらの機能をスカパー!HD録画で使えるということだけで、これほど録画生活が充実するとは思わなかった。日ごろ番組録画に血道を上げている“録画戦士”の方々には、いち早くチェックしてもらいたいモデルだ。 (レポート/鈴木桂水) ※記事初出時に「TZ-WR320P」の機器仕様、並びに「スカパー!HD」のサービスに関する記載の誤りがございました。読者のみなさま並びに関係者の皆様にお詫びして訂正いたします(12/18)。 |
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