ソニーの携帯音楽プレーヤー“ウォークマン Aシリーズ”が動画対応になって生まれ変わった。従来のAシリーズと言えばHDDを内蔵した大容量タイプだったが、新Aシリーズは記録メディアをフラッシュメモリーに変更。スリムなコンパクトモデルになった。型番はNW-A800シリーズになり、ラインアップは8GB(予想実売価格33,000円前後)、4GB(予想実売価格27,000円前後)、2GB(予想実売価格21,000円前後)の3種類。
今回は次世代AVナビの番外編として、携帯用AV機器としての利用価値を高めた新ウォークマンの速攻チェックをフォトレポートとしてお伝えする。
■まずは新“ウォークマン Aシリーズ”のデザインを検証
一見するとアップルのiPod nanoに近いスタイルだが、MP3などの圧縮音楽ファイルを高音質で再生するDSEE(高音域補完)機能など“音”にもこだわりを見せている。ボタン類が大きく、操作しやすいのが特徴だ。わかりやすくてスタイリッシュという、ソニーの良い面が前面に出たデザインだ。とりわけ評価したいのが電源ボタン。以前からウォークマンシリーズは電源スイッチが分かりづらいと、感じていたのだが、本機からオプションボタンの長押しという表示が加わった。今までは僕の操作ミスもあり、電源を切り損なってバッテリー切れになってしまうこともたびたびあったのだが、本機ならばとっさに電源を落としたい時にも確実な操作ができる。
本体の重量は50グラムちょっとなのだが、本体がコンパクトにできているので、スペックほどの重さは感じない。厚みはスペック上ではホールドボタンの出っ張りを計測しているので9.1mmになっているが、本体自体は8.3mm程度になっている。きっとホールドスイッチをサイドに配置できなかった設計上の理由があるのだろう。流行のタイトフィットなスーツの内ポケットに入れてもシルエットを崩さない、スリムなデザインは大歓迎だ。
SシリーズとAシリーズの付属ヘッドホンを比較してみた。どちらも同社の高音質ヘッドホンEXシリーズで採用されている13.5mmのドライバーが使われている。Sシリーズはノイズキャンセリング用のマイクがついているので重くて大きい。一方新Aシリーズのヘッドホンは樹脂製で軽く、チープな印象を受けるが音質は上々。DESSなどの設定はこのヘッドホンに合わせて設定されているので、よほどのこだわりが無い限り交換しない方が良いように思える。耳への装着面を見るとAシリーズの方が音が抜ける構造になっていることが分かる。完全なカナル型に比べ耳への負担は少ないが、音漏れはするので注意したい。
■操作性を確認するため、とにかく使ってみた
音楽、動画、インターネットと多様なファイルに対応するAシリーズだが、高機能化に合わせて付属ソフトもバージョンアップした。使い勝手の印象を良くしたのが音楽用、動画用ソフトを簡単に切り替えられる「ウォークマンランチャー」だ。ソフトの切り替えだけでなくガイド的な機能も備えているので、初心者でも迷わすに必要なソフトを選べるのがありがたい。
音楽変換ソフトの「SonicStage CP」は基本的に従来通りの操作性だが、新たにジャストシステムと共同開発した「読み仮名変換モジュール」を搭載し、アーティスト名の並び替えをより正確に行えるように改善している。
2.0型の液晶ディスプレイを最大限に活用したジャケット表示や、8行の曲名表示にも対応する。携帯電話のアドレス帳のようにイニシャル、50音での検索が可能なので、操作性はすこぶる良くなっている。
■高性能&コンパクトの“ソニーらしさ”を実感 − 一方で「おでかけ・スゴ録」機能には対応して欲しかった
駆け足だが新“ウォークマンAシリーズ”の基本機能をチェックしてみた。動画対応の携帯音楽プレーヤーとしての完成度はかなり高いという印象を受けた。本来なら先行するアップルのiPod nanoが、あのサイズのまま動画対応になるはずだったのだろうが、2007年の春モデルとしての登場はなさそうだ。その隙を縫って、と言うわけではないだろうが、ソニーが遅れていたこの市場で、切り札となる商品を送り込んできた。“見事な本歌取り”と言うとソニーの技術陣から怒られそうだが、その実力はかなりのものと言えるだろう。
残念なのはせっかく同社の家電レコーダーが「おでかけ・スゴ録」機能をウリにしているのにもかかわらず、本機では対応していなかったことだ。僕自身、この機能をPSPで使って、ありがたさを実感しているだけに新ウォークマンが対応を見送ったことに疑問を覚えずにはいられない。と言うのも携帯用の動画ファイルの作成には、ほぼ実時間がかかるのだが、「おでかけ・スゴ録」を使えば、録画中に動画ファイルを作成するので、2時間の映画ですら数分で転送できるのだ。それに「Image Converter 3」ではデジタル放送の転送ができないという落とし穴もある。ぜひバージョンアップで対応していただきたい。ただ、動画配信については発売後にウォークマン専用のサイトが立ち上がるということなので、そちらの内容に期待したいと思う。
本機を使ってみて久々に“高性能&コンパクト”というソニーらしさを備えた製品だと感じだ。約8mmちょっとの薄い本体に、よくこれだけの機能を搭載したと感心することしかりだ。とくにヘッドホンとDESSによる音の良さは特筆ものだろう。もし音質優先で音楽プレーヤーを選ぼうと考えているなら、ぜひ本機を視聴してから機種選びをオススメする。