2007年1月にMacworld Expoの基調講演で発表された「Apple TV」。米Apple CEOのスティーブ・ジョブス氏の説明から、「テレビに接続してMacintoshやWindowsパソコンに保存した音楽や動画を、テレビで楽しむための端末」なのだという事はわかっていたが、それだけならDLNA対応機など、他にいくらでも類似する商品は世の中にあるはずだ。今回、Apple TVの実機を触ることができたので、概要を伝えつつ、この商品がリビングに入ってきたら何が変わるのか?探ってみることにする。
40GBのHDDを内蔵 テレビとつないで楽しむ据え置き型iPod
まず結論から言うならApple TVは「テレビに接続して使う据え置き型のiPod」だ。パソコンに保存した音楽や動画を、AppleTV本体に内蔵する40GBのHDDへ転送して、大画面テレビなどに接続して楽しめる。「え、それだけ?」と思われるかもしれないが、残念ながらiPodを超える目新しい機能は今のところ備わっていない。しかし、操作画面にMacintosh風のインターフェースを採用するなど、テレビにつなげるだけでリビングの雰囲気を変えてしまうほどの存在感がある製品になっている。
Apple TVを使用するには、最新版のiTunesをインストールしたMacintoshもしくはWindowsパソコンが必要だ。セットアップは簡単で、iTunesをインストールしたパソコンと同じネットワーク上にApple TVを設置するだけで準備は完了。後は最新版のiTunesをインストールしたパソコンを起動し、Apple TVからパソコンを認識させる。接続を完了するには、Apple TVが表示する5桁のパスコードをパソコンに入力すれば使用できる。
Apple TVにはあらかじめWi-Fi対応のワイヤレスLAN機能が内蔵されているので、ワイヤレス環境の整った場所ならケーブル無しでパソコンと接続できる。パソコンは書斎にあっても、Apple TVはリビングのテレビに接続して使うことができる。
対応するワイヤレスの規格は802.11n/802.11gとなっているので、これに同じく対応するアクセスポイントやワイヤレス対応のルーターが必要になる。LAN端子も備えるので有線での接続も可能だ。
前述したようにApple TVには40GBのHDDが内蔵されている。接続が済んだら、Apple TVへiTunesに保存した音楽や動画、写真を転送してテレビ画面を使って楽しめる。このあたりの使い勝手はiPodと同じと言えるだろう。その他にネットワーク上にある5台のパソコンと接続して、パソコン上の対応ファイルをストリーミングで再生できる。ストリーミングを使えば家中のパソコンの対応データがテレビで楽しめることになる。
アップルならではの快適なユーザーインターフェース
本体はいたってシンプルで操作ボタンどころか、電源ボタンすら無い。操作はすべて「Apple Remote」コントローラーを使う。操作画面はiMacでも採用される操作インターフェースのFront Rowに似ており、タイトルを選択するごとにCDや写真などのアイコンが立体的に表示され、直感的に操作できる。このあたりのユーザーインタフェイスの優秀さは、さすがアップルと唸らされる部分だ。
Musicを選ぶと音楽を再生しながら、ジャケットのアートワークとタイトル、アーティスト名が表示される。ジャケットのアートワークには若干のパースが掛かっており、スタイリッシュな画面を演出している。
一定時間の間に操作を行わないと、自動的にスクリーンセーバーが起動する。あらかじめ指定したデジカメ写真などを奥行きのある表示で再生し、あたかもテレビを立体的なギャラリーのようにする。動作の広報によると、Apple TVに初めて接した人の多くが感動する機能という事だった。
映像出力は1080i/720p対応だが、画質はソースの状態に左右される
テレビに接続するのだから、やはり動画再生の能力が気になる。Apple TVが対応する映像出力の解像度は1080i/720pの他に576p、480pにも対応する。本体にはテレビ接続用にHDMI端子のほか、アナログのRGBコンポーネント端子も用意する。本体が小さいと言うこともあるのだろうか、D端子やS端子などのアナログ端子は省かれている。
デモでは1080i/720pで作成された高画質のトレーラーを40インチクラスの薄型テレビで再生したが、DVD並の高画質で再生できていた。ただしビデオキャストなどの映像では細かなノイズが発生して見苦しくなることもあったので、画質についてはソースの状態に左右される。
国内未対応の機能も将来的な搭載に期待したい
今回は駆け足で紹介したApple TVだが、アメリカではiTunes Storeで多くのテレビ番組が既に販売されている。日本でも放送されている「LOST」や「プリズンブレイク」などの人気作品は、アメリカでは放送の翌日にはダウンロードでき、「昨夜のLOSTを見逃した!」といった場合でも、数ドルで購入してiPodやApple TVで楽しめる。アメリカ同様の使い方ができれば一層魅力的な商品になっただろうが、残念ながら日本ではテレビ番組の販売は今のところ行われていない。同社の広報によると「今後の対応を検討中である」との事なので期待したいところだ。ちなみに現在でも、アメリカのテレビドラマのトレーラーは日本国内でも楽しめる。
AppleTVの仕様について、もう一つ気になった点は、いわゆる第5世代のiPodではゲームをダウンロードして楽しめるのだがApple TVでは今回対応していないことだ。デジカメ写真のスライドショーや、トレーラー映像などの動画再生はソニーの“PS3”や任天堂の“Wii”でも利用できることを考えると、Apple TVも簡単ではあるがゲーム機能にも対応してほしかった。
幾つか気になった部分もあるが、本体のデザインや機能など、かなり物欲をそそる製品だ。とくにいつもiPodを持ち歩いているようなユーザーなら、きっと上手にリビングで使いこなせることだろう。