前回の
レポートに引き続き、今回も東芝の“録画もできるテレビ”REGZAを取り上げ、その再生機能を中心にお伝えしよう。録画機能付テレビはその便利な使い勝手ゆえに、録画する機会も増える。その操作がとてもカンタンなので、僕だけでなく家族が毎日の録画争いに参加してきたこともかなり影響している。
録画番組が増えると重宝するのが録画番組の仕分け機能だ。REGZAのH3000シリーズは録画した番組を「曜日別」、「ジャンル別」、「連ドラグループ別」で仕分けして表示するので、録画番組が増えても必要なタイトルを見つけやすい。とくに「連ドラグループ別」表示にすれば、同じタイトルのドラマをまとめて表示するので連続視聴が快適だった。
意外と気付かれないポイントだが、操作感の善し悪しを左右するのが録画番組の「消去操作」だ。録画番組が増えると、ほぼ同じ数の番組を消去しなければならない。この機能の使い勝手についてはそれなりに難しさもあり、例えば消去の操作手順を簡単にしすぎると誤消去につながり、せっかく録画した貴重な番組を見ずに消すことになる。これは即クレームにつながるので設計者が慎重になり、誤消去を防ぐために何度もメニュー構造を深くしたり、何度も確認のダイアログが開くようなメニュー構造になってしまう。そうなると、結果誤消去は減るが操作性は悪くなる。
REGZAの場合はどうだろうか?結果から言えば録画、再生の操作に比べれば平均的な仕上がりだ。番組消去は「HDDメニュー」から番組の削除画面を呼び出し、そこから選択して消去する。これでもいいのだが、できればリモコンに「消去」ボタンを追加し、再生中の番組を消去できるようになればもっと快適に操作できただろう。
気軽に録画できる本機は、面白いのかそうでないのかわからない番組を“お試し”で録画する機会が増える。タイトルを見て「面白そうだな、どんな番組だろう?」と、音楽CDなどの“ジャケ買い”ならぬ“タイトル録り”が増えるのだ。これが結構はずれることが多い。とくに最近のアニメはタイトルから内容の想像がつかないので、録画したものの内容が想像と違うことはざらだ。そんな番組を録画したときは再生中に「消去ボタン」で削除できたらどんなに快適だろうと思う。単純にこの操作だけだと誤消去もしやすくなるので、それならば消去ボタンをツーボタン式にするとか、設定で視聴中の消去の「有効・無効」を切替えられる等にすれば、メーカー(とくに設計者)に押しつけられるクレームは回避できるだろう。
録画機能付テレビではカジュアルな番組を録画、レコーダーでは誤消去が許されないライブラリー用の番組を録画と、使い分けられる文化がメーカー、ユーザーともに浸透すれば、消去操作の重みも自ずと変わってくるのではないだろうか。無い物ねだりの愚痴になってしまったが、録画が楽しい機種ほど、消去も快適であって欲しいと筆者は願っている。
「消去してもHDD容量が足りない!」となったら、奥の手も備えている。それがeSATA対応のHDDを外付けする「HDDプラス」機能だ。対応する外付HDDはREGZA専用のものではなく、様々なPC等でも使える汎用タイプの製品なので、入手しやすく価格がこなれているのが魅力だ。ただしどんなものでもオススメできるわけではなく、東芝での検証が済んでいる製品が推奨されている。断続的なアクセスが多いPCで使うよりも、連続してデータを読み書きする録画用途の方がHDDには負荷がかかるので、実際に購入するならばメーカー検証済みの製品を選ぶべきだろう。
外付HDDに対応している、と聞くと「安いHDDを使って録画番組のライブラリーを作ろう!うっしっし…」と考える録画好きの方もいるだろう。筆者もそう考えた一人だが、いくつか知っておくべきことがある。
まずHDDプラスでは外付HDDへの直接録画はできない。内蔵HDDに録画した番組をムーブして保存するための用途だ。ただし外付HDDに録画した番組をREGZAから操作して直接再生することは可能だ。
本体に接続できるHDDは1台のみだが、最大4台までのHDDを本体に登録し、交換して使用できる。HDDは登録したREGZAでしか使用できないので、本体を買い変えたら録画したコンテンツは失われてしまうことになる。これは著作権保護に対応する苦肉の策の結果なので、ガマンするしかないようだ。このあたりは対応する機器間での互換性が保証されている日立のHDD内蔵テレビ“Woooシリーズ”が採用する、iVDRの使い勝手が一歩勝っている。ただしHDDの価格を比べれば一長一短の感が残るのは否めない。
それらの条件を汲んで使えば「HDDプラス」は便利な機能だ。通常は内蔵する300GBのHDDで事足りるはずだが、たとえば「お父さんが長時間の映画をフルHDで録画するのを楽しみにしているが、忙しくて見るヒマがない」と言った場合、他の家族にとってみれば、高画質・長時間のコンテンツはHDDの容量を食う邪魔者でしかない。そういった場合はHDDプラスでお父さん専用の外付HDDを用意し、録画する端から外付けHDDにムーブしていけば問題は解決しそうだ。録画ファンは「HDD増設」と聞くと、ついハードな使い方を想定してしまうが、HDDプラスのコンセプトは少し違う。まずは内蔵HDDて使ってみて、それでも容量を足りないと感じたときに手軽にHDDを増設する、そんなカジュアルな機能だと感じた。
HDDプラスの操作性には若干のもどかしさを感じた。HDDの切り替えは「HDDメニュー」で録画リストを表示して、そこで「ジャンル切替え」を使って、HDDの切替えを行う。これがわかりづらい。一度覚えればなんと言うことはないのだが、筆者は頭を抱えた末にサポートに電話をしたぐらいだ。外付けHDDへの切り替えは入力切替えに割り振った方が自然だったような気がする。
内蔵HDDから外付けHDD間のムーブで、タイトルの一括選択ができないのも気になった。ムーブするタイトルごとに選択して作業するので操作性はいまひとつだ。消去画面のようにチェックボックスによる複数選択に対応すべきだっただろう。さらに使い勝手をよくするなら連ドラで区分けしたタイトルごとに一括して転送できるようにすれば使い勝手は向上するはずだ。
REGZA H3000シリーズを使って感じたのは録画機能付きテレビの将来性だ。そのメリットについては前回のレポートでも熱く語りすぎてしまったが、筆者としてそこに強く次世代AV機器の有り様を感じたのだ。次回は日立製作所の“Woooシリーズ”と東芝の“REGZAシリーズ”との機能を徹底比較することで、録画機能付きテレビの将来、さらには「ケースイ的録画論」について語ろうと思う。各機種の購入を予定されている方はぜひご参考にして欲しい。
−次号の掲載は7月10日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−