これまで本連載では日立の“Wooo HRシリーズ”、東芝の“REGZA H3000シリーズ”を取り上げ、全5回に渡って録画機能付きテレビの使用感をお伝えしてきた。筆者はこれらの録画機能付きテレビをじっくり使ってみたことで、“テレビで録画できる快適さ”に目覚めてしまった。今夏、我が家に薄型テレビを購入するならこのどちらかではないかと考えるぐらいだ。今回は「録画機能付きTV研究」の締めくくりとして、この2シリーズの録画機能を総括しつつ、録画機全体の将来について考察してみようと思う。
“Wooo HRシリーズ”、“REGZA H3000シリーズ”ともに、録画機能付きテレビとして外部ストレージを増設できる機能が新しい。両者は対応するHDDの方式に違いがあり、“Wooo HRシリーズ”はカートリッジ式のHDD iVDR-Sに対応し、REGZAはe-SATA方式の汎用HDDに接続できる。デジタル放送の番組を録画するには、アナログ放送に比べて約5倍の容量が必要になることを考えれば、HDDの容量はいくらあっても足りないぐらいだ。ユーザーの録画頻度に合わせて増設できるのは素直にありがたいと感じる。
ただし両者はその採用するHDD方式によって使い勝手が大きく異なることになる。まずは下表をご覧いただきたい。
| 本体内蔵HDD容量 | 外付HDDの容量 | 外付HDDの参考価格 | 録画を行った機器以外での再生 |
Wooo HRシリーズ | 250GB | 160GB/80GB | MAXELL 「M-VDRS160G.TV」 (160GB) ¥OPEN(予想実売価格35,000円前後) | 可 ※将来対応機器が発売された場合 |
REGZA H3000シリーズ | 300GB | 250GB〜750GB ※メーカーの接続確認済み機器について | I-O DATA 「RHD-UX320」(320GB) ¥24,360(税込) | 不可 |
内蔵するHDD容量や対応するHDDの容量ではREGZAが有利だ。増設HDDの容量もREGZAの方がより多い製品を選べる。ただし、HDDは登録したREGZAでしか使用できないので、本体を買い変えたら録画したコンテンツは失われてしまうことになる。あくまでもテレビ側の録画機能は一時保存という考えであり、ライブラリーのようには使えない。
一方、“Wooo HRシリーズ”が搭載するiVDR-Sへの録画機能は、同じHDDでも著作権保護機能に対応するので、テレビを買い換えても使える。iVDR-Sが割高なのさえ目をつむれば、ライブラリーとしても活用できる。ただ、HDDというメディアは構造的に衝撃に弱い点も指摘されている。iVDR-Sは衝撃吸収機能を備えているが、それでも強い衝撃が加わればディスクが壊れる可能性もゼロとは言えない。どちらも一長一短であり、選択するのは実に悩ましい。「見たら消す派」のユーザーであればどちらでもいいが、ライブラリーにこだわるなら“Wooo HRシリーズ”を選択したい。
両シリーズはどちらも内蔵HDDに録画した番組の再生は快適であり、甲乙つけがたい。しかし、外付けのストレージへ番組を保存した場合は、かなり違いが出てくる。“Wooo HRシリーズ”は、内蔵HDDとiVDR-Sのどちらにも直接録画が可能。再生はリスト上で、記録メディアを簡単に切換えられるので、内蔵・iVDR-Sのどちらも同じように使用できる。
一方、“REGZA H3000シリーズ”は外部接続したHDDへの直接録画ができない。あくまでも内蔵HDDが“主”であり、外付けHDDはバックアップ用の手段といった思想だ。再生リストから外部HDDへの切換えも一手間かかる。何より、内蔵HDDから外付けHDDへ複数の番組を同時に移動できないことにもどかしさを感じた。
前述したように録画機能付きテレビには一長一短がある。それを解決する方法の一つが、BDやHD DVDなど次世代ディスクへのムーブ機能だ。現時点ではどちらの製品も対応しておらず、今後の対応についても今のところアナウンスされていないので、ここからは筆者の要望だと考えていただきたい。
録画機能付きテレビが抱える唯一の問題は、安価な外部メディアへデジタル放送をそのままの画質で記録できないことにある。理想は“Wooo HRシリーズ”が採用するiVDR-Sが今後より安価になればいいように思えるが、現時点では再生環境の将来性が読めないので不安も残る。
もし両機種が外部接続したBlu-ray Discレコーダーなり、HD DVDレコーダーなりに対応したらどうだろうか。日頃は見たら消すような番組を、テレビ上の番組表で次々と録画し、必要な番組だけを外部の次世代DVDに保存するという使い方が考えられる。こらなら次世代DVDレコーダー側に大容量のHDDが搭載されていなくても、テレビ側のHDDを活用することで、レコーダー側のHDDの容量不足も解消できる。最近の次世代DVDレコーダーは2番組同時録画が可能なので、テレビの録画機能と使い分けることで3番組の同時録画も可能になる。録画機能付きテレビと次世代DVDレコーダーのカップリングは、録画初心者に優しく、重度の録画マニアも納得させるだけの実力を備えるはずだ。
上記の使い方を実現するのに、あと一歩のところで実に惜しいと感じる製品がある。それはシャープの録画もできるBDプレーヤー「BD-HP1」だ。本製品は本体にHDDとチューナー部を備えず、BDへの録画機能だけを備えている。録画方法は同社の薄型テレビ“AQUOSシリーズ”とi.Linkケーブルを使った「AQUOS ファミリンク」で接続し、テレビ側のチューナーを使って録画するというものだ。ただ、この組み合わせではテレビ、レコーダーともにHDDを備えていないので、BDディスクへの直接録画しか行えない。長時間録画もできないので、録画機能付きテレビのようなカジュアルな番組録画には向かない。もし“AQUOS”にHDDが搭載されていれば、もしくは“Wooo HRシリーズ”と“REGZA H3000シリーズ”にとって「BD-HP1」のような製品があれば、それぞれの弱点は改善される事だろう。
これからテレビ録画は「録画機能付テレビ」主導型に変更されるはずだ。最近行った大手量販店の店員への取材では、現在人気のあるHDD&DVDレコーダーは松下電器産業の“DIGAシリーズ”とシャープの“AQUOSレコーダー”であり、「どちらも同じメーカーの薄型テレビ一緒に購入する方がほとんどです」との声が帰ってくる。両機種ともHDMIケーブルを使うことで、“テレビ側のリモコンでレコーダーを操作できる”というのが、売りになっている。これはすでに多くのユーザーが“テレビで録画したがっている”ということを裏付けているのではないだろうか?録画機能付テレビは、これらのリンク式に比べて操作は遙かに簡単だ。
最後に録画機能付テレビの操作性を筆者なりに整理してみた。まず「なぜ簡単に操作できるのか」というと、これは「入力切替え」が無いからというのが筆者の感想だ。通常テレビにレコーダーを接続して使う場合には、テレビの入力切替えで表示を呼び出す必要がある。AV機器が苦手な人はこの段階できっと、「なぜテレビの表示を変えるのにチャンネルボタン以外の選択項目があるのだろう?」と考えてしまうはずだ。ここでレコーダーの表示にたどり着けない人は意外と多いように思う。
そこで筆者はテレビ操作を「レイヤー(層)」として考えることにした。テレビのチャンネル切替えやボリューム操作を第1階層の「ファーストレイヤー」とするなら、入力切替え後のビデオ操作は第2階層の「セカンドレイヤー」になる。そうなるとAV機器が苦手な人は、レコーダーをさらに使わなくなってしまう。
録画機能付きテレビは、番組予約から録画番組の再生まで「ファーストレイヤー」で辿り着いてしまう。これを筆者は「ファーストレイヤー・レコーディング」と呼んでいる。これをいち早く実現したのが今回レポートしてきた日立の“Woooシリーズ”と東芝の“REGZAシリーズ”だ。両シリーズともに今後の進化が楽しみなモデルでもあり、他社からも同様に録画機能を内蔵したテレビが続いて発売されるのではないかと筆者は踏んでいる。今後の期待としては、一日も早く次世代ディスクへの転送機能に対応した録画機能付きテレビが登場して欲しいと思っている。
−次号の掲載は7月24日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−