今回はソニーの薄型テレビ“BRAVIA”シリーズの「KDL-26J3000」を使い、最近の薄型テレビに搭載されている付加機能をチェックしている。すでにDTCP-IP規格対応のDLNA機能「ルームリンク」を使って、別室に設置した2台のレコーダーをLANで接続し、ハイビジョン番組を再生した。テスト中にポカをやらかしたのは悔やまれるが、離れた部屋に設置したレコーダーの番組をテレビのリモコン一つで再生できるのは改めて快適だと感じた。今回は「KDL-26J3000」が備えるあと2つのネット機能を取り上げよう。
まずはテレビと同時にネットを“ながら視聴”できるソニーの独自機能「アプリキャスト」から見ていこう。画面の右側にコンテンツである“アプリ”を表示し、十時キーで選択してさまざまな情報にアクセスできる。利用できるのは下記のコンテンツだ。
◆Yahoo!トピックス
Yahoo!JAPNのトップページで表示されるニュースコーナー「トピックス」を表示。気になる見出しを選択することでより詳しい情報を表示でき、さらにフルブラウザにもアクセスできる。
◆Excite Bit コネタ
Exciteが提供するちょっと気になるニュースを紹介するアプリ。Yahoo!トピックスと同じく、詳しい情報からフルブラウザによるウェブサイトへのアクセスが可能。
◆ウェザーニュース 天気予報
設定した都市の天気を表示する。
◆PostPet占い 未来行路
PostPetのキャラクターがその日の運勢を占う。フルブラウザ表示ではPostPetのサイトを表示する。
◆So-net Photo ナイス!
So-net Photoが運営するフォトシェアリングサイトの人気写真をセレクトして紹介。選択することでブラウザが開き大きなサイズで表示できる。
◆So-net Photo チョイス
So-net Photoで公開されている写真をキーワードで探して表示。気になる観光地の風景やペットなどの写真を探して表示すると楽しい。
◆So-net Photo フレンド
友達や家族が公開しているSo-net Photoの写真を表示。
◆Yahoo!画像検索
ニュースなどで話題のキーワードをピックアップして、それに関連する画像を表示する。
◆楽天市場 サーチ
楽天市場で販売している商品を登録したキーワードで検索し、トップテンをピックアップして表示する。購入する場合は画面上に表示されるQRコードを使い、携帯電話でショッピングする。
◆Yahoo!オークション
Yahoo!オークションの人気アイテムランキングを表示。そのほかにユーザーがキーワードを設定した出品物をピックアップして表示できる。楽天市場 サーチと同じくQRコードでの落札にも対応。
このようにアプリキャストには、2007年9月10日現在で10件のアプリが用意されており、今後もさらに増える予定だ。使い心地については、選択から表示まで3秒程度なのでストレスはない。アプリ自体がテレビ用に軽く作られているので、情報が多いパソコン用のWebページよりもキビキビと操作できるようだ。
内容についてはどうだろう。ソニーが「この機能でテレビとネットのながら視聴を実現させた」と説明するように、確かに小窓でネットの情報がチェックできるのは便利だ。ニュースやコネタなどはNTTドコモのi.ch(アイチャンネル)のようで、「テレビを見ながら最新の情報をチェックし続けたい」という人に向いている。
驚くほど充実しているのがフォトシェアリングサービスSo-net Photoへの対応だ。当初「知らない人が撮影した写真なんて見るのかなぁ?」と、あまり重要視していなかったのだが、アップされている写真はどれも素晴らしくつい見入ってしまう。この機能よりもアマチュアカメラマンの質の高さに驚いてしまったぐらいだ。
ただしSo-net Photoフレンドを利用して、自分の写真を表示させるにはSo-net会員の無料枠を利用するか、有料のフォトストレージサービスへの加入が必要だ。有料のサービスは1GBから5GBまでのコースがあり、月額315円〜1,050円で利用できる。この有料コースでないと画像ごとの公開、非公開が選べないので、家族で写真を共有するなら有料コースへの加入がマストになるだろう。
筆者が使って、これはちょっと便利だと感じたのが楽天とヤフオクの情報をアプリで表示する機能だ。アプリキャストには支払い機能が無いので、直接オークションの落札や商品の購入はできない。必ず携帯電話のお世話になるのだが、情報のチェックだけと割り切れば使い道はありそうだ。キーワード設定すれば、「SACDの出物をテレビを見ながらヤフオクで探す」ということも簡単にできる。今後、入札中のオークション情報を表示できるようになれば、さらに利用範囲は広がるはずだ。
続いて「アクトビラ」を紹介しよう。アクトビラはパナソニック、シャープ、ソニー、東芝、日立製作所などのテレビメーカーが出資して運営するテレビ専用のポータルサイト。アクトビラのコンテンツは家電向けの著作権保護技術“Marlin(マーリン)”が採用されており、再生機能を持ったテレビでしか表示できない。コンテンツはポータルからの提供のみになるので、アダルト情報や暴力などを含むコンテンツを規制できるメリットがある。リビングのテレビで利用することを考えれば当然の配慮だろう。
一般にテレビでネット視聴を行う場合は別置きのセット・トップ・ボックス(STB)などを使うが、それだと操作に複数のリモコンが必要になり、操作は煩雑になる。その点、アクトビラはテレビに内蔵されているので、余分なSTBの接続は不要。テレビのリモコンだけで操作できるというメリットがある。
現在、アクトビラには静止画と文字情報のみの「アクトビラ・ベーシック」とSD画質での動画配信が可能な「アクトビラ・ビデオ」、HD画質での動画配信が可能な「アクトビラ・ビデオ・フル」がある。残念ながら本機は動画配信に対応していないので静止画とテキストの「アクトビラ・ベーシック」しか利用できない。
「テレビでネット!」的なサービスにはさんざん「???」という気持ちにさせられてきたので、アクトビラにも懐疑的な気持ちがあった。さらに本機が対応するアクトビラは静止画のみなので、あまり期待していなかった。しかし、実際に接続してみると、コンテンツが充実していて驚かされた。
筆者の得意なグルメ情報からをチェックすると、地方のタウン誌編集者によるご当地グルメの紹介が充実。おもわず「知らなかった!」とメモをとってしまった。そのほかに味の素が提供するレシピなども充実する。
いろいろとチェックしてみると株情報や読み物として女優の蒼井優さんが書き下ろすブログなど、専用コンテンツが揃っている。テレビ番組の見どころはちゃんと写真付きで表示される。一般的な特番の紹介が多いが、更新頻度は高いのでテレビ番組との出会いの一助になっている。表示の切り替えに数秒待たされるのが気になるが、これでさらにコンテンツが充実すれば利用者は増えそうだ。
アプリキャストとアクトビラだが、どちらもインターネットを使っているが、それぞれに別のアプローチをしているのが面白い。既存のインターネットとテレビの同時表示に重きを置くアプリキャストは、確かにながら視聴をするのには向いている。だだ、肝心のテレビ画面が小さくなるのがいただけない。できればテレビをフル画面表示してのオンスクリーン表示が理想だろう。もう一つはコンテンツの問題だ。現時点では専用のサービスよりも、インターネット情報の2次利用が主になっている。パソコンと同じ情報をテレビの画面で見るだろうか?筆者はアプリキャストでしか利用できないキラーコンテンツが必要だと感じている。加えて、決済機能やオークションなどのサイトIDの管理が充実すれば将来への展望が開けるだろう。
アクトビラはやはり動画対応が魅力的だ。動画機能は本体の能力に依存する部分もあるので、本機では利用できない。アクトビラの動画コンテンツについては次号で詳しくお伝えするので、いましばらくお待ちいただきたい。アクトビラの強みはオリジナルコンテンツへの投資ができつつあること。基本画面でもかなり頑張っているのが伝わった。ここで手綱をゆるめることなく、蓄積できるコンテンツを充実させれば静止画とはいえ、テレビの付加機能として定着できるはずだ。ただしアクトビラ本来の魅力は動画再生に対応した「アクトビラ・ビデオ」以上でないと味わえない。よりテレビで楽しみたいなら「アクトビラ・ビデオ」以上の機能に対応する製品を選ぶことをオススメする。
「KDL-26J3000」はこれらのネット機能が手軽に楽しめた。画質については発色が淡いのが気になったが、12万円台という実売価格を考えると相応と言えるだろう。寝室や書斎などでネット機能を使った便利な機能をフル活用したい製品だと感じた。
−次号の掲載は9月25日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−