各社から秋冬商戦に向けた薄型テレビが続々と登場している。今回はプラズマテレビでトップシェアを誇るパナソニックの最新薄型テレビ“VIERAシリーズ”の実力を探るべくインタビューを行った。お話を伺ったのは松下電器産業(株)パナソニックマーケティング本部 商品企画グループ テレビチーム 大井直子氏、並びに同社パナソニックマーケティング本部 コミュニケーショングループ 広報チーム 山口耕平氏のお二人だ。
━━まずは今秋に発売された新製品PZ750SKシリーズを含めた“VIERAシリーズ”のラインアップを教えてください。
山口氏:VIERAシリーズと言えば高画質ということで多くのユーザーの皆様にご好評をいただいております。この秋冬モデルはいままで以上に美しい映像に加え、大画面&フルHDのラインナップを強化した点が特徴です。いままでは37V型、42V型でも大画面と言われていましたが、市場調査をすると「それでは小さい」という声が聞こえてきます。これを受けて、今年の冬商戦以降は50V型、65V型の売れ行きが好調になると見込んで強化しました。
山口氏:現行の薄型テレビ“VIERA”のラインナップにはいくつかの主軸になるシリーズがあります。今春発売した“PZ700シリーズ”がスタンダードモデルとしてラインアップを支えます。さらにPZ700シリーズの上位モデルとして、9月に発売した最新の“PZ750SKシリーズ”が加わりました。このシリーズは画質を向上させ、便利な機能をふんだんに盛り込んだ、プラズマテレビのフラッグシップモデルです。一方でこの冬商戦以降は、高級機だけでなくお手頃な価格の機種でも大画面モデルが求められるようになると予想しています。そういったニーズに応えるべく、エントリーモデルの“PZ70シリーズ”を用意しました。PZ70には42V型と50V型があります。さらにプラズマテレビだけでなく液晶テレビにも力を入れました。TH-37LZ75はVIERAシリーズの37型液晶として初めてフルHD表示に対応しました。VIERAならプラズマから液晶まで、フルHD対応モデルを含む幅広いラインナップから製品を選ぶことができます。
━━新しく加わったプラズマテレビ“PZ750SKシリーズ”、“PZ70シリーズ”の特徴を教えてください。
大井氏:どちらのシリーズも最新のプラズマパネルを搭載しています。解像度は1920×1080ドットのフルHD表示なので、デジタルハイビジョン放送の繊細で美しい映像をありのままに映し出します。「新リアルブラック駆動方式」により、10,000対1の高コントラストを実現しました。VIERAはコントラストが4,000対1だった従来の製品でも「黒に深みがある」と定評をいただいておりましてたが、新しいパネルの搭載により、明るい映像はより明るく、黒はずっしりと落ち着いた黒を表現できるようになりました。このコントラスト性能と最大16ビットの映像処理によって、奥行き感や立体感のある表示が可能になりました。ハイビジョン画質の紀行物などは、まるでその場所にいるかのようにリアリティのある表示が楽しめるほどです。また環境性能が優れている点もVIERAの自慢です。2006年からプラズマディスプレイパネルの完全無鉛化に成功しました。これにより製造時はもちろんのこと、廃棄後の鉛汚染の問題も回避しています。さらにPZ750SK、PZ70が使用するパネルは10万時間の超寿命なので、末永く使っていただくことができると考えています。
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VIERA PZ750SKシリーズのラインアップ。65V型「TH-65PZ750SK」(左上)、58V型「TH-58PZ750SK」(右上)、50V型「TH-P50Z750SK」(左下)、42V型「TH-42PZ750SK」(右下) |
━━機能面での特徴を教えてください。
大井氏:PZ750SKシリーズには2種類のネットワーク機能が搭載されています。一つはインターネットを使ったビデオ・オン・デマンドサービスの「アクトビラ ビデオ・フル」にいち早く対応しました。もう一つはドアホンの映像をテレビに表示する「どこでもドアホン」機能です。「アクトビラ ビデオ・フル」は、テレビ専用のインターネットサービスである“アクトビラ”を使ったHD画質の映像配信サービスです。有料と無料のコンテンツがありますが、テレビの画面操作だけで映画やライブなど好きなときに好きなだけ楽しめます。高圧縮技術MPEG-AVC/H.264を使っていますので、50V型を超える大画面で見ても美しいハイビジョン映像が楽しめます。
大井氏:「どこでもドアホン」は別売のどこでもドアホンユニットの「VL-SW150K」を使うことで来客をテレビ画面に表示して確認できます。VL-SW150Kはワイヤレス対応なので、玄関からテレビまでの距離が100mを超える場合は利用しづらくなります。その場合は電力線を使ってLAN機能が活用いただけるよう、PLC対応のドアホン用アダプターパック「VL-SP880」も用意しています。このドアホン対応によりVIERAはAV以外の用途にも踏み込んで、ホームネットワークをより広範に、便利に使えるよう進化しました。
山口氏:今回投入された新機種はすべてフルHD対応になっています。現行のVIERAシリーズは今まで以上に大画面&フルHDでのラインアップが充実しています。フラグシップモデルのPZ750SKシリーズのみに搭載した新機能もありますが、対応するレコーダーやオーディオ機器とHDMIケーブルで接続して操作できる“VIERA Link”の機能は15V型から103V型まで揃う、すべてのVIERAシリーズに対応しています。同じくデジカメ写真の表示に便利なSDカードスロットも全ラインアップ対応としました。基本となる機能は全機種で対応するというわかりやすさもVIERAシリーズの魅力だと思っています。
今回の取材で筆者もう一つ注目したことは、PZ750SKシリーズの画質の良さだ。今までプラズマテレビの画質といえばコントラストの不足から映像の輪郭や発色など、“独特”な雰囲気を放っていた。これは好みなので善し悪しを問うものではないが、筆者は苦手だと感じていた。しかしPZ750SKシリーズは色に深みがあり、画面の明暗表現も実に自然だ。発色だけを挙げるなら、間違いなくこの冬のトップクラスの実力と言えるだろう。
機能面では「アクトビラ ビデオ・フル」に期待できそうだ。アクトビラについては前回お話ししたとおり、設置・設定が簡単であり、他のサービスのようにセットトップボックスも不要。そのアクトビラでハイビジョン画質の映像が見られるというなら、期待してしまう。
もう一つの機能「どこでもドアホン」もユニークだ。正直、取材中は「AV機器の説明なのにドアホン?」と、少々面食らったが、実際に家庭に入って便利な機能なのだと感じた。例えばテレビに熱中しているときに、“ピンポン”と来客があったとしよう。それが友人や宅配便なら、問題ないが、厄介なのが勧誘などのセールスだ。この機能を使えば画面を見て見知らぬセールだと判明すれば無視すればいい。小さなことかもしれないが、テレビを軸に新しい生活の提案を実現できるあたりは松下電器ならではと感じた。余談だがこのどこでもドアホンには、来客者の画像を100枚まで蓄積する機能や女性の声を男性のように発するボイスチェンジ機能まで備えている。何かと物騒な昨今なので、注目できる機能であると感じた。
次回はハイビジョン動画配信サービスのアクトビラ ビデオ・フルの実力迫ってみよう。
−次号の掲載は10月9日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−