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【第20回】最新BDレコーダーは“てんやわんや”!悩みどころがいっぱいの機種選びを一発指南<BD比較・前編>2007年 10月 9日 (火曜日)ようやくBDレコーダーの最新機種が出そろった。それぞれのスペックについては既報の通りなのでチェックしていただきたい。
各社とも10万円台から選べるエントリーモデルを用意し、ようやくハイビジョン番組のディスク保存も身近になってきたようだ。「今年のボーナスでは、ぜひBDを購入しよう!」と算段をはじめる読者も多いことだろう。しかし、各社とも目玉機能を搭載してきており、製品選びには迷いそうだ。そこで日頃からレコーダー約10機に追われるようにして生活している筆者の主観で、今回はバイヤーズガイドをお届けしたい。 先日行われたCEATEC JAPAN 2007で明らかになった各社の新BDレコーダーのスペックや機能を比較し、いつもながら妄想やボヤキが入れつつ製品選びを考えてみよう。そして後半は肝になるスペックを横比較して、機種ごとのプロフィールを掘り下げて紹介する。 ここまで書くとHD DVDを発売する東芝のファンから怒られそうだが、既報の通りHD DVD陣営も魅力的な低価格を準備している。なかにはエントリーモデルもあり、スペックもかなり期待できそうだ。ただし今回のCEATECでは参考出品とのことで、スペックの全貌が明らかになっていない。このあたりの詳細がわかりしだい、筆者なりの「BD VS HD DVD 対決 2007冬(仮称)」でもやろうかとも思っている。(が、どうなることやら)。 ■シャープ/ソニー/パナソニックの最新BDレコーダーを「3つ巴対決」 今回のCEATECに並んだ最新のBDレコーダーは、シャープ、ソニー、パナソニックの3社。このほかにも三菱電機などが試作機を展示していたが、商品化を実現したのは先の3社のみだ。 今回のラインアップで注目すべき大きなポイントは「MPEG4 AVC/H.264(以下H.264方式)」への対応だ。従来のレコーダーはMPEG2での録画にしか対応していなかったが、ソニーとパナソニックは、画質劣化を抑えながら長時間録画を可能にするH.264方式の録画機能を備えてきた。画質優先ならデジタル放送を無劣化で記録できる従来のMPEG2の方が有利だが、H.264方式を使えば、フルHDの解像度は維持しながら最高で4倍の録画が可能だ。例えば最高画質で残したいお気に入りの映画はMPEG2(DRモード)で録画し、バラエティや情報番組はH.264方式で録画、といった使い分けが可能になった。 確かに従来機でもDVD画質で録画することで同様の使い分けはできたが、H.264方式はフルHD、もしくはHD画質を維持するので、DVD画質で記録するの比べて圧倒的に高精細だ。筆者もCEATEC会場やそのほかで、H.264方式で記録したソニー、パナソニックの画質をチェックしたが、画質を下げてもいわゆるハイビジョンの精細感は残っている。(余談だがあるメーカーのH.264長時間モードは、初期のBDレコーダー画質よりも優れているという印象さえ受けた) しかし問題点もある。現時点でははっきりしないのだが、H.264方式の記録についてソニーとパナソニックの2社で、記録するビットレートに違いがあり、互換性に対するアナウンスが行われていないのだ。このあたりについては後述することにして、まずは各社それぞれのプロフィールを簡単に紹介しよう。 ■シャープはHDD一体型とBD単体機を発表 シャープはラインアップ自体に特徴がある。BDレコーダーとして全部で4機種が揃ったが、そのうちHDD搭載機は2機種、あとの2機種はBD単体レコーダーになっている。あえて機能を絞ったBD単体機を投入することで、「VHSビデオの代替えとして使えるハイビジョンレコーダー」というメッセージがこもっている。
HDD搭載のフラッグシップモデル「BD-HDW20」には1TBのHDDが搭載される。「BD-AV1」、「BD-AV10」はHDD無しの単体機。「HDDとBDという2種類の録画先があるとユーザーが迷う」ということで、あえてHDDを削除している。どちらもBD-REへの録画にしか対応しておらず、BD-AV1にいたってはBD-REの1層メディアのみへの対応と徹底している。 ■「シンプル・イズ・イージー」というBD単体機の決断 AQUOSブルーレイの特徴を挙げるなら「シンプル・イズ・イージー」と言える。機能を絞ることで操作の選択肢を極力減らし、結果として初心者でも迷わないレコーダーになっている。多機能なデジタルレコーダーに対して、苦手意識を持つユーザーは少なくない。「HDDってなに?」といったユーザーに「いままではVHSビデオに録画していましたが、これからはBDディスクに録画してください」というメッセージとともに製品をアピールする。それがBD単体機の「BD-AV1」、「BD-AV10」だ。HDDを外すことでメディアシフトをよりわかりやすくしている。
この単体機については、ついにアナログチューナーを外す割り切りようだ。確かに地デジ受信エリアに入ると、地上アナログ放送は見なくなるので、この選択はアリだろう。 この単体機の仕様は、一案ではあるとは思うが、AV機器を積極的に使いこなすPhile-webの読者の心には響くかはビミョウだ。むしろデジタルレコーダーの使い勝手の良さはHDDの長時間録画にあり、数時間程度しか録画できないディスクメディアをあえて主にするコンセプトに、筆者は共感できない。 ただしBD単体機を全否定するわけではない。以前、本コラムでも書いたが、BDもしくはHD DVD単体機の存在理由を確立させるなら、録画の主となる「HDD付テレビ」とのコンビネーションが欠かせないというのが筆者の持論だ。そういった意味では「BD-AV1」、「BD-AV10」ともにi.Link(TS)ダビングに対応しているのは見逃せない。筆者の勝手な妄想だが、将来HDD付きAQUOS(テレビ)が発売されていたとき、BD単体機は真価を発揮するかもしれない。 ■録画ファンならばやはりHDD一体型を選びたい 録画好きなら、やはりHDDを搭載する「BD-HDW15」、もしくは「BD-HDW20」の2機種の存在が気になるだろう。しかし、ライバルのソニー、パナソニックがいち早くH.264を採用するなか、シャープはこの方式を見送った。シャープといえば常にハイビジョン録画をリードしてきており、世界初のハイビジョンレコーダーや同じくHDD付きBDレコーダーなどを次々と世に送ってきた。
ハイビジョン放送は高画質な半面、記録にはDVDの約5倍に相当するデータ容量が必要だ。アナログレコーダーのスタンダード機が250GBのHDDを搭載していたことを考えると、ハイビジョンを快適に録画するには最低でも1TBは欲しい。しかし1TBのHDDを搭載するレコーダーとなると懐に厳しい。H.264を使えば、無劣化ではないものの、従来の録画方式よりも倍以上の録画が可能になる。 脱線したが、ハイビジョン録画に長けたシャープがH.264方式への対応を進めていないとは考えにくい。今回のAQUOSブルーレイは「先進の機能よりも使いやすさを優先した」ということだろう。基本機能は手堅く進化させたと言える。特に画質まわりには気を配っている。まず、BDソフトの映像を余すことなく再現する「アクオス画像エンジン」を搭載。録画機としてだけでなく再生機としても高画質化を図った。ユニークなのはHDMI信号波形を最適化し、エラー発生を極力抑えた「コモンモードフィルター」だ。HDMI接続での画質向上に一役買う。 ■シャープのBDレコーダーは液晶テレビ“AQUOS”とのリンクがカギ AQUOSブルーレイシリーズの一番の特徴は、やはり液晶テレビで圧倒的なシェアを持つ「液晶テレビAQUOS」との連携機能だ。「ファミリンク」は対応するテレビとHDMIケーブルで接続することで、テレビとレコーダーを意識させない操作が可能だ。さらに使い勝手をよくするために、レコーダー、テレビともに1台のリモコンで操作できる「ファミリモコン」が付属。画質では「IP変換LSI」チップを搭載することで、液晶テレビAQUOSの倍速高画質パネルに合わせて1080pでの自然な画質を再現する。AQUOSブルーレイシリーズは液晶テレビAQUOSと接続することで、真価を発揮するようだ。いま使っているテレビがAQUOSブルーレイの機能に対応するなら真っ先に選択肢に加えるべきだろう。ただし、ハイビジョン画質での長時間録画録画に魅力を感じるなら、ソニー、パナソニックで選ぶことになる。 ■ソニーの録画機はBDへの全力投球を宣言 ソニーの「BDZシリーズ」のラインナップは4機種。この秋冬モデル以降、ソニーはHDD&DVDレコーダーの開発を終了し、全てBDレコーダーでラインナップを固めた。BDZシリーズの特徴は新機能のH.264方式の録画を軸に、「用途提案をするラインアップ」をしていること。 従来のデジタルレコーダーといえば、テレビ録画が主であり、その他の「プレーヤー」、「ムービー編集・保存」などの機能は予備的な機能に思えた。しかし、新しいBDZシリーズは機能に特徴を持たせ、4機種を3つの用途提案でアピールする。フラッグシップモデルの「BDZ-X90」は「シアターを堪能する“X”」と銘打ち、ホームシアターの中核となる、高画質BDビデオプレーヤーとしての機能を搭載。 「番組を楽しむ“T”」と呼ばれているのが「BDZ-T70/T50」の2機種。テレビをカジュアルに録画するのに向くいわばスタンダードモデルだ。 ユニークなのが「思い出を残す“L”」と銘打つ「BDZ-L70」だ。この製品はテレビ録画もちろん、最近人気を伸ばしているAVCHD方式のハイビジョンムービーとの接続を強化した機種。HDV方式対応のハイビジョンムービーにも対応する。 ちなみに全機種とも同社の薄型テレビ「BRAVIA(X7000/5050/5000シリーズ、W5000シリーズ、V5000/3000シリーズ)」とHDMIケーブルで接続することで、テレビ側からレコーダーを操作する「ブラビアリンク」に対応する。
最上位モデルでも約20万円と、ライバルの松下電器産業の新ディーガと比べても全体的に価格を抑えているのが印象的。ディーガは従来のHDD&DVDレコーダーでも新型機を発表し、エントリー層を支えているが、ソニーはBDレコーダーに1本化したので、エントリー機の価格を低く設定している。 ■フラグシップならではの貫禄を纏った「BDZ-X90」 まずは500GBのHDDを搭載し録画機としても頂点を極める「BDZ-X90」から解説しよう。再生能力は同社の薄型テレビ「BRAVIA」の上位モデルが搭載する映像処理回路「DRC-MFv.2.5」を搭載。これによりすべてのハイビジョン映像を1080/60pのプログレッシブハイビジョン映像として出力する。さらにハイビジョン映像を独自のアルゴリズムで処理し、質感と解像感を高めるDRC(デジタル・リアリティ・クリエーション)処理を施す。これらの処理により、録画した映像を更に美しく表示できる。 階調表現を向上させる「Deep Color出力」にも対応した。Deep Color出力とは、8bit(256階調)の映像信号で不足する情報を、12bit(4,096階調相当)の映像信号に変換することで補う機能。例えば画面の中で平坦な領域を検出し、そこへフィルターをかけることで、映像にメリハリをつける。画面の立体感が増すだけでなく、暗いシーンの多い映画などでも見やすく表示する。 これらの機能については、まだ試作中のため検証はできていないが、期待できる技術だと感じている。ただしこれらの画像処理は、その効果のさじ加減が重要になる。効き過ぎれば嫌みな映像になり、物足りなければ、搭載した意味がない。ぜひ量産機の実力を見て判断したいと考えている。 筆者はCEATECの会場で、BDZシリーズの商品企画を担当する永井氏と、後述するLシリーズの商品企画本間氏の両名にお話を伺った。立ち話だったが、貴重な話を伺えたのでご披露しよう。 ■音響設計はAVアンプ「TA-DA5300ES」のチームとのコラボで実現した 永井氏によるとBDZ-X90の音響設計にはかなり苦労されたらしい。というのも本機は「リニアPCM 8ch(7.1ch)サラウンド」や「ドルビーTrueHD」、「DTS-HD マスターオーディオ」、「DTS-HD ハイレゾリューションオーディオ」、「ドルビーデジタルプラス」にも対応している。これらの新規格のオーディオデータをよりよく再生するために、同社のAVアンプ「TA-DA5300ES」とのマッチングをかなり行ったという。もちろんオーディオ側のアドバイザーは以前インタビューにご登場いただいた(関連記事)、同社のオーディオ事業本部 ホームオーディオ事業部 設計1部 主幹技師の金井隆氏だ。 音質についての妥協を許さない金井氏からのオーダーは厳しく、設計段階でかなりのパーツを変更することになったという。いくつかのパーツはAVアンプのESシリーズ用に開発したものも含まれているというから、かなり“ソニーユナイテッド”な話だ。 それらの苦労によりHDMI回路専用音質コンデンサー採用によるロスレス(可逆型)オーディオに対応。HDMI回路には専用の大容量コンデンサーを採用することで、HDMI接続時の低ジッタの音声伝送を実現したという。そのほかに“足”は無反発ゴム採用の「偏心インシュレーター」、共振を抑える「sfヒートシンク」を搭載。電源ケーブルは電力特性の高い「OFC電源ケーブル」を採用する。こだわりを感じるのは、内蔵するHDDから発生される内部振動により、音への悪影響を抑えるために純銅板を使って防振処理まで行ったことだ。 録画機能は後述する「BDZ-T70」と共通するが、HDDの容量は500GBと、DR録画でも使える容量を搭載している。録画番組をSCEのゲーム機PSPに転送できる「おでかけ・おかえり転送機能」はラインアップ中「BDZ-X90」のみの採用になっている。録画・再生ともに非常にマニア心をくすぐる仕様になっているのが「BDZ-X90」だ。 ■エントリーモデルの“Tシリーズ”はここで選べ カジュアルなAVファンにアピールするのが「BDZ-T70」と「BDZ-T50」の2機種「Tシリーズ」だ。両機ともに価格はオープンだが、店頭販売価格については従来のBDレコーダーと比較すると、かなり値ごろ感のあるプライスでスタートしそうだ。ことAV好きともなれば、やはりこだわりの詰まった「BDZ-X90」に熱視線を送りたくなるが、約20万円というスタート価格を考えると手を出しづらい。また「BDZ-X90」のスペックをフルに出しきるとすれば、やはり相応の再生環境は必要だろう。そう考えると、リビングでのテレビ録画が主なら、Tシリーズで手を打つことになりそうだ。 では、「BDZ-T70」と「BDZ-T50」ではどちらを選ぶべきか?これはもう筆者としては「BDZ-T70」しかあり得ないというのが感想だ。今回のBDレコーダー徹底比較の、後半の「スペック比較編」でじっくり絞るつもりだが、やく2万の価格差でデジタルチューナーの数とHDD容量に違いが出ている。ハイビジョン録画の楽しさにはまると、シングルチューナーでは絶対に足りない。とくに年末年始の特番シーズンともなれば、映画、ライブ中継など、ライブラリー必須のコンテンツが目白押しになる。そんなときにデジタルチューナー1系統では、いくつかの番組を泣く泣くあきらめることになる。2万円という予算は貴重だが、使い勝手を考えればがんばって捻出すべきだろう。これはソニー機に限らず、レコーダーすべてに言えることだ。 では「BDZ-T50はそんなにダメか?」と聞かれれば筆者は「絶対ダメ!」とは言い切れない。というのもこれだけコストパフォーマンスを高めているところからうかがうと、店頭に出てしばらくすれば“お求めやすい値段”になるのではないかと踏んでいる。この冬商戦から北京五輪にかけては、次世代レコーダーの熾烈な陣取り合戦が始まる。そう考えると「BDZ-T50」は、部品コストの安い250GBのHDDなどを採用することで、価格路線を上手く立ち回ろういうことだろう。「BDZ-T50」をアニメ“機動戦士ガンダム”に登場するモビルスーツに例えるなら「ザク」であり、「ジム」であるということだ。ただ、H.264での武装をしていることもあり、価格が10万円を切った時点で、マニアとしても“2台目のサブ機”としての魅力が出る。もしかすると前線では一暴れしそうなので、その価格動向からは目が離せない。 ■デジタルムービーのヘビーユーザーにお勧めしたい“Lシリーズ” 「思い出を残す」BDZ-L70はムービーとの連携機能に長けた機種。本体には「ワンタッチダビングボタン」を備え、ハイビジョンハンディカムやデジタルスチルカメラで撮影した動画や写真を簡単に本体のHDDに取り込めるのが特徴だ。商品規格を担当した本間氏によると、「AVCHD方式を採用するメモリースティックハイビジョンムービーの「HDR-CX7」やHDDタイプの「HDR-SR7」などに人気がありますが、パソコンを使わずに簡単にディスク保存できるように開発しました」とのこと。 ハイビジョンムービーにはテープ方式のHDVの他にAVCHD方式を採用するHDDムービー、メモリームービー、DVDムービーがある。そのうちDVDタイプはPS3などの再生機があれば、そのまま利用できるが、HDDタイプとメモリータイプは本体を使って直接再生するか、もしくはパソコンか対応するレコーダーでディスクに記録しないと再生できない。ハイビジョンムービーは録画時間を考えるとHDDもしくはメモリータイプが主流になりつつあり、それらで撮影した動画を簡単にBDに保存できるようにしたのが「BDZ-L70」だ。 基本スペックはルームリンクが省かれた以外は、「BDZ-T70」に準じている。予想実売価格が18万円前後という点からも、ベースのスペックを「BDZ-T50」と同等にした方がコンセプトは明確になったかと思うが、ハイビジョンハンディカムユーザーでパソコンを使ったディスク作成にうんざりしているなら、注目していただきたい製品だ。 ■H.264対応も実現、バランスの良いラインナップを揃えたパナソニック 本年秋冬モデルのBDレコーダーとして、最も最近発表されたのがパナソニックのブルーレイディーガシリーズだ。CEATEC JAPAN 2007の目玉として場内で話題を振りまいた。新ブルーレイディーガシリーズの特徴はH.264方式での録画に加え、さらにこの方式を使ったDVD-R、DVD-RAMへの1920×1080のフルハイビジョン記録を実現したことだ。片面DVD-Rに最高画質で42分、長時間モードで1時間40分のハイビジョン映像を記録できる。同じモードでBDメディアに記録した場合は4時間から9時間の録画が可能。 今回は全機種にツインチューナーを搭載するなど、バランスのよいスペックに仕上がっている。大量に録画するなら1TBのHDDを搭載するDMR-BW900を選ぶしかないだろう。
この秋冬モデルとしてH.264記録に対応したのはこの新ディーガとソニーのレコーダーのみで、完全にガチンコ対決になりそうだ。ただ両者のH.264の仕様には大きな違いがあり、選択には悩むことになりそうだ。というのもソニーのH.264記録は、解像度が1,440×1,080ドットにとどまっており、DVD記録にも対応しない。両者の違いについては後半のレポートで考察する。 新ディーガのラインアップは「DMR-BW900/BW800/BW700」の3種類。ソニーのように細かく機能を分けるのではなく、HDD容量以外の基本機能は横並びになっている。横並びと言ってしまうと、いかにも頼りない気がするが、実は上位モデルとの差が拮抗しているという、うれしい内容になっている。例えばソニーでは最上位モデルしか搭載しない「DeepColor出力」が全機種に搭載され、BDビデオ再生時の立体感やグラデーション表現を豊かにしている。全機種がデジタルチューナーを2系統備えているのも見逃せない。 ■最上位機「DMR-BW900」のスペックは、やはり録画ファン垂涎の内容 映画らしい表現を実現する1080/24p出力対応は「DMR-BW900」と「DMR-BW800」の2機種が対応。この2機種のみDV入力/TS入出力兼用のi.Link端子を2系統備えている(DMR-BW700はTS入出力のみ1系統)。また最上位モデルの「DMR-BW900」のみ、ピュアオーディオ用コンデンサや、銅フレームオペアンプを内蔵し、OFC電源ケーブルが付属する。 HDDの容量でラインアップに大きな差をつけているのも特徴的だ。最上位モデルの「DMR-BW900」にはなんと1TBのHDDを搭載し、地上デジタル放送をハイビジョン画質のまま127時間も記録できる。H.264方式を使えば381時間もの録画が可能だ。約30万円からのスタートだが、録画好き垂涎の内容になっている。 HDMIを使ったリンク機能は“VIERA Link Ver.2”に対応。同社の薄型テレビ「VIERA(PZ750、PZ700、PZ70、PX70、LZ75、LX75、LX70、LD70)」と接続することでテレビ側からの操作から約3秒で録画をスタートできる。AVCHD方式で記録したSDムービー作成機能も全機種が対応。 発売当初の予想実売価格は23万円前後という「DMR-BW800」は、コストパフォーマンスに優れるハイスタンダード機。普及価格帯を10万円台半ばと考えるなら、やや値は張る印象を受けるが、スペックは充実している。内蔵する500GBのHDDを使って存分にテレビ録画を楽しめそうだ。
ラインアップとしては末席に甘んじたが、機能が充実するスタンダードモデルなのが「DMR-BW700」だ。発売当初の予想実売価格は18万円前後。HDDの容量こそ250GBとややコンパクトだが、H.264で録画すれば最長で93時間のハイビジョン録画が可能なのは見逃せない。「録画はたまにしかしない」という人から、「高画質保存よりも、とにかく録画を手軽に楽しみたい」といった人にオススメできる。 以上、シャープ、ソニー、松下電器産業が発売する2007年秋冬のBDレコーダーのラインナップをざっと紹介した。コメントの内容にはかなり筆者の主観が入っているが、バイヤーズガイドとして役立てていただければ幸いだ。次回は各製品の主要スペックを更に掘り下げて、徹底比較を行うつもりだ。乞うご期待! −次号の掲載は10月23日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!− |
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