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【第21回】これは迷う、新型BDレコーダーのスペックを徹底チェック!キーワードは“割り切り”<BD比較・後編>2007年 10月 16日 (火曜日)前回のレポートに引き続き、今週も2007年秋冬のBDレコーダーの買い方指南をお節介ながらさせていただこうと思う。
■HDD容量とH.264対応 まず筆者がチェックしたのは“録画時間”だ。既にHDD&DVDレコーダー、BDレコーダー、HD DVDレコーダーを使い「ハイビジョンレコーデング」に精を出している筆者だが、とにかくHDDの容量が足りなくて困っている。ハイビジョン番組の容量はDVDの5倍と言えば、いかにデータが大きいかおわかりいただけるだろう。 日頃ハイビジョン録画を楽しんでいる方なら理解していただけると思うが、BSデジタル放送に掘り出し物の番組がごっそりと見つかるのだ。とくにハイビジョン画質の高精細をウリにした紀行番組の数々は、まるで見知らぬ町を家にいながらに散歩しているようで、一度見ると録画せずにはいられなくなる。他にライブ、映画など、BSデジタルには、HD画質の市販タイトルが不足している現時点において、貴重なソースがたくさんある。それから情報番組も…、とまぁ、お気に入りの番組を挙げればキリがないわけだ。それだけ、ハイビジョン録画は誰しもがハマる要素がたくさんある。 こんな風にヘビーなハイビジョン録画をしているので、5台使っているハイビジョンレコーダーのHDDはいつもパンク寸前。せっせと光ディスクメディアに保存している。それでも、録画したところで見る時間が追いつかないので、“積ん読”ならぬ“積ん録”の日々なのだ。 そんな筆者にとって福音とも言えるのがMPEG4 AVC/H.264(以下H.264)方式の録画機能だ。H.264はいわばVHSビデオの3倍、5倍モード録画のようなもの。アナログのVHSは長時間モードにすると目に見えて画質が劣化した、このH.264は画質劣化が少ないのが大きなポイントだ。とはいえそのままの画質で録画するDRモードに比べれば録画時間に応じて画質は劣化する。目安としてはH.264の最低画質でもDVD画質に落とすよりは解像感が残っている、そんな感じだ。とにかく、画質よりも内容を優先する情報番組などの録画には使える画質だと筆者は感じている。 07年主力BDレコーダーのHDD容量比較表
▲予算があれば1TBモデルを買うのがいいのだが、相場は約30万円とかなり高い。1TBの場合500GBのHDDを2個搭載することが多いのだが、まだ500GBのHDDの価格は高価なので、お高くなってしまう。長時間録画をするならH.264への対応は重要。画質劣化を抑えて長時間録画ができるので、録画好きには“マスト”の機能だ。 07年秋冬のBDレコーダーではソニーとパナソニックがH.264記録に対応してきた。ではソニーとパナソニックでどちらを選ぶかというと、両者の記録解像度に注目したい。パナソニックは1920×1080ドットで記録するのに対して、ソニーは1440×1080ドットにとどまっている。実際の画質については実機での比較を待つしかないが、地上デジタル放送の解像度が1440×1080ドットで固定だということを考えると、大差は無いように思われる。 HDD容量を見ると1TBのHDDを搭載するのはシャープの「BD-HDW20」とパナソニックの「DMR-BW900」の2機種。市場実売価格を見るとどちらも約30万円前後が予想される。同じHDD容量でもDMR-BW900は最大160時間ものハイビジョン解像度を維持した録画が可能。長時間録画で選ぶならDMR-BW900になる。 3社の録画時間を比較できるのが500GBを搭載するシャープの「BD-HDW15」、ソニーの「BDZ-X90」、パナソニックの「DMR-BW800」の3機種。DRモードでの録画時間に大差はないが、H.264に対応するBDZ-X90とDMR-BW900では違いが出ている。その違いを下表にまとめたので参考にしていただきたい。 H.264での録画モードとHDDへの録画時間比較表
▲同じHDD容量でもソニーの方が長時間録画が可能なのはSD画質での記録モードを備えているからだ。ソニーとパナソニックの録画時間を比較するならソニーのLSRとパナソニックのHEモードを比べるとわかりやすい。ちなみにビットレートが高いほど、動きのある映像や細密な映像でノイズが発生しづらくなる。H.264での録画時間を比較するとパナソニックDMR-BW800の方がハイビジョンでの長時間録画に長けている。 ■対応BDメディア ハイビジョン番組を記録するBDメディアには書き換えのできない追記型のBD-Rと書き換えが可能なBD-REの2種類がある。さらにそれぞれには25GBの単層タイプと50GBの2層タイプがある。ソニーとパナソニックはどちらにも対応するが、シャープのBD単体レコーダーは追記型BD-Rには対応しない。これはHDDを搭載しない、単体機の場合、録画ミスなどを考えると書換え型のBD-REのみに対応していた方がトラブルは少ないからだろう。シャープはこのBD単体機をVHSビデオデッキの買い換え需要をターゲットとした戦略モデルに位置づけているので、この仕様は納得できる内容だ。 対応BDメディア表
▲単層BD-Rの価格はこなれてきており、1,000円を大きく切るショップも増えた。2層やBD-REは価格が高く、日常的に使うには手を出しづらい。 ■ダビング機能 これは本体内でのダビングではなく、他の機器と録画番組をやりとりする機能を比較した。TS対応のi.Linkムーブ機能を搭載することによって、i.Link端子を搭載するレコーダーに録画した映像を、BDレコーダーに「ムーブ(移動)」して、BDに保存することができる。例えばパナソニックの“DIGA”シリーズや、シャープの“AQUOSブルーレイ”シリーズはTS対応のi.Link端子を搭載しているので、BDドライブを搭載しないハイビジョン対応HDD&DVDレコーダーに録画したハイビジョン番組を、無劣化でBDレコーダーにムーブしてアーカイブできる。機器間の対応には違いがあるので確認が必要だが、もし手持ちのハイビジョンレコーダーがi.Link(TS)出力に対応していれば、ハイビジョン番組をBDに残すチャンスが増える。これについては以前このコラムでテストしたことがあるので、興味のある方は参照していただきたい(関連レポート)。 「ダビング10」はこれまで「コピー9」とも呼ばれていた、デジタル放送の録画コンテンツを光メディアなどに保存する際のルールだ(関連記事)。現在はその技術仕様が策定されている最中であるが、いざ「ダビング10」がスタートした際に、機器をバージョンアップすることで対応できるかという比較だ。三角の印は「メーカとして前向きに検討中」という回答があったモデルに表示した。ただし、今日時点で「ダビング10」の仕様がすべて確定した訳ではないので、実際の対応については確約ではないことをお断りしておきたい。もし「ダビング10」に完全対応した製品を手に入れたいのであれば、そのスタートを待って、正式な対応をアナウンスする製品のリリースを待ったほうが良い。(…いつになるかわからないが) シャープのBD単体レコーダーが非対応なのは、ダビング10の対応がHDD搭載機のみに限られるためだ。BDに直接書き込んだ場合はムーブもしくはムーブ禁止になる。 ダビング機能の比較表
▲ダビング10への対応は各社横並び。使い勝手に影響する部分なので一日も早く決定して欲しいものだ。 各モデルのスペックをチェックしてきた。全体を見渡すと発売当初に比べ、BDレコーダーは格段に使いやすくなってきている印象を受けた。その上で、H.264の互換性については実機での検証を行うまで不安が残る結果となった。これについては実機を入手次第、検証を行う予定だ。 全体を見渡して気になる点がある。直接BDへの記録とは関係ないが、パナソニックが採用したH.264のDVD記録という技術が、筆者の中でどうもビミョウな評価になっている。方式の名称は「AVC REC」と言い、東芝次世代レコーダーが採用を予定している「HD Rec」と同じように、DVDメディアへのハイビジョン録画を実現した。ただしそれぞれに互換性はない(HD Recの関連記事)。 録画好きからすればBDよりも遙かに価格の安いDVDメディア(ただしDVD-Rは割高なCPRM対応メディアになるが)へ、ハイビジョン画質での記録ができるのだから大歓迎だ。しかし、現時点で他社の製品との再生互換性についてのアナウンスがないのが気になる。一方のHD Recに関してはDVDフォーラムの規格なので、現時点で対応機はないが将来は対応する機器が増える可能性がある。 AVC RECだが、さすがに今後発売されるパナソニック製のレコーダーやプレーヤーでの再生には対応するだろうと筆者は考えるので、今後パナソニック製の機器で揃えると腹をくくれば安心して使えそうだ。しかし、同じBD陣営のシャープやソニー、またそれ以外のメーカーがDVDへのH.264記録に対してどう反応するのかを見極めない限りは、少し手が出しづらいと筆者は考えている。 このほかにも対応メディアでも気になることがある。記録膜に有機色素を使うことでメディアの生産コストを下られるメリットがあると話題を呼ぶ「有機BD-R」について、各社がどう対応するかも気になる。このあたりの対応を見ていると、BDレコーダーなどのハイビジョン録画機は、まだまだこれからの“可能性を秘めている”製品だと感じる。それを待つか、買うか、という部分はこの秋冬モデルを選ぶ上での重要なファクターだ。 今回のレビューのタイトルを“キーワードは割り切り”としたのは他でもない。この「BDレコーダーの将来ってどうなるんだろう?」という期待と不安の入り交じった“モヤモヤ”とどう決別するか?というところに割り切りが必要だと感じている。 筆者としては「待つなら買い」だと思っている。BDレコーダーは現時点でハイビジョン番組を録画する手段の一つだ。前述したように先が見えない部分があるが「ディスクにハイビジョン番組を録画できる」ということは揺るぎない事実だ。ハイビジョン番組には映画やライブなど、そのままの画質で残しておきたい番組が日々放送されている。これらを録り逃さないことを最優先するならば、やはり予算と用途に応じて、そろそろ一台を選んで手に入れてもいいだろう。 この秋冬モデルからBDレコーダーの価格がより身近なものになってきている。細かな規格を気にせずに購入する人も増えそうだが、機種ごとについての“できること、できないこと”はしっかりとチェックしておきたい。そんな気持ちを込めて“現時点での”ケースイ的BDベストバイを挙げてみた。 各社のラインナップと価格の比較表
▲20万円を切った製品がボリュームゾーンになるだろう。しかしソニーBDZ-T70の安さは際だっている。 ■とにかく録画をするならパナソニック「DMR-BW800」、ソニー「BDZ-X90」
録画時間を考えればH.264対応機が選択肢になる。予算が許せば1TBのパナソニック「DMR-BW900」を選びたいが、さすがに約30万円という価格はツライ。約23万円という価格で500GBが手に入る「DMR-BW800」の方が現実的に感じる。高画質回路を満載するソニーの「BDZ-X90」と比較したが、やはりDVDへのハイビジョン録画という庶民的な機能に惹かれてしまった。互換性は気になるが、録画好きならバラエティや情報番組はDVDへ、ライブや映画など画質を優先するならBDに記録、そんな使い分けができるのが楽しいだろう。筆者のように録画しても見る時間がないくせに、“いつか見られる日を信じて”せっせとDVDやBDに記録する人にはメディアの出費がかさまないのがうれしい。 「BDZ-X90」はホームシアターでの視聴に適した高画質、高音質回路を搭載しながら市場実売価格が20万円を切ってきそうなところが魅力だ。「x-おまかせ・まる録」など自動録画や「おでかけ・スゴ録」など、録画好きユーザーの心に響く機能は使うほどに手放せなくなる。検索機能も充実しており、テレビ番組を深掘りして楽しみたい。例えばテレビ雑誌の「テレビブロス」を通勤電車でマジ読みするような人にはうってつけのレコーダーと言える。これでDVD記録に対応すれば無敵だっただろうが…、「今後ハイビジョン録画はBDに一本化」というユーザーには気にならないかもしれない。 ■予算優先お手軽録画ならソニー「BDZ-T70」とパナソニック「DMR-BW700」
これはソニーの「BDZ-T70」が有力。HDD容量は320GBと、ビミョウな容量で非圧縮のDR録画では不足ぎみだが、H.264録画をメインにするなら活躍する。なんと言ってもデジタルチューナーをダブルで搭載しつつ、市場実売価格が16万円を切るのはあっぱれ。「BDZ-X90」と同じ自動録画や検索機能も搭載する。個人的にガッカリしたのは録画番組をPSPに転送する「おでかけ・スゴ録」が省かれたこと。筆者はほとんどのドラマをこの機能で消化しているので、普及機で省かれたのは痛い。せっかく新型PSPが出て、これからだというのに、とても残念だ。まぁ、それは筆者のぼやきとして、値頃感の高さ機能ともに魅力的な製品だ。 そして予算を抑えてDVDへのハイビジョン記録をするなら「DMR-BW700」が選択肢だ。ただし「BDZ-T70」に比べて価格が高いわりに、HDD容量が250GBに抑えられていることをどう見るかが選択の分かれ目。たかが80GBと思う無かれ、H.264を使うとその差は何倍にも開くのだ。少しでもHDD上での録画時間を長くと考えるなら「BDZ-T70」を、DVDにガンガンハイビジョン番組を保存というなら「DMR-BW700」を選ぼう。 ■テレビとの連携で選ぶならシャープ「BD-HDW15」 今年のBDレコーダー新製品を投じてきた各社ともに、テレビとレコーダーとの連係機能を充実させている。その中で、一歩リードするのはシャープの“AQUOSブルーレイ”だ。残念ながら録画時間の長さと価格比を優先する筆者にとって、シャープがH.264への対応を見送ったのは残念でならないが、その分薄型テレビの“AQUOS”シリーズと画質をマッチングさせるなど、薄型テレビの王者らしい設計思想には感服してしまった。AQUOSユーザーなら価格とHDD容量のバランスがよい「BD-HDW15」を選択肢に加えるべきだろう。 以上が、CEATEC JAPAN 2007とそれと前後して筆者が行った取材によるバイヤーズガイドだ。今後、機会があるごとに実機の使い勝手についてチェックするつもりなので、購入へ踏み切るにはいましばらくお待ちいただきたい。まずは、今回の情報をベースにボーナス後の使い道を算段していただければ幸いだ。 −次号の掲載は10月30日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!− |
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