テレビを使ったインターネットのポータルサイト「アクトビラ」が、ちょっとテレビを面白くしてくれそうな予感を漂わせている。本コラムでは以前、インターネットの光回線を使ったサービス「4th MEDIA(フォースメディア)」を取り上げ、テレビとネットとの共存の在り方を模索し、検証してきた。詳細については前回のコラムをご覧いただきたい。対する新サービスの「アクトビラ」のシステムについても、筆者はそのコンテンツともに大きな将来性を感じている。
今回はアクトビラがはじめた動画配信サービス「アクトビラ ビデオ」と「アクトビラ ビデオ フル」をチェックしてみようと思う。
「アクトビラ ビデオ」とはSD画質の動画配信サービスだ。再生時はフル画面表示ではなく、画面の周囲に黒枠がついたような表示になる。一方の「アクトビラ ビデオ フル」はハイビジョンムービーなどで使われるMPEG4 AVC/H.264方式の動画配信だ。こちらはフル画面でハイビジョン映像が楽しめる。どちらも再生するために薄型テレビなど、対応機器が必要だ。薄型テレビについては2007年冬モデルから対応機が増える見込みだが、今回は「アクトビラ ビデオ フル」のサービスに対応した、パナソニックのプラズマテレビ“VIERA PZ750SK”シリーズによる視聴レポートをお送りしたい。
コンテンツはメニューから選ぶことができる。テストを行った当時はサービスが始まった直後ということもあり、コンテンツの数が多くはなかったが、今後楽しめるコンテンツも充実するものと期待される。早速その画質をチェックした。
HD画質のジェームス・ブラントのスタジオライブを視聴した。「アクトビラ ビデオ フル」の最大転送速度は8Mbpsなのだが、それでもハイビジョンコンテンツとして遜色のない映像が楽しめる。この映像自体が滲むようなライティングになっており、若干ノイズが発生するシーンもあるが、映像の密度はデジタル放送のSD画質よりは上と感じた。他にもHD画質のドキュメント映像なども再生したが、配信とは思えない美しさを備えたクオリティだった。今回テストを行った65V型の大画面テレビでも、気になるほど破綻は見られなかったので、これが42V型クラスなら、わずかなノイズも気にならない画質で楽しめるはずだ。
「アクトビラ ビデオ フル」がスゴイのは光接続でなくADSLでもこの画質が楽しめるということ。ただ「アクトビラ ビデオ フル」の再生にはMPEG4 AVC/H.264のデコード機能の搭載が必要となるため、今のところは上位機種からの対応になることが残念だ。本来この手のサービスは寝室や書斎など、パーソナルユースのテレビでも気軽に使える方が便利だと感じている。
一方、SD画質の「アクトビラ ビデオ」には既にアニメやドラマなど多くのコンテンツが揃っている。ただ全画面表示に対応していないので、再生時は映像の周囲に黒枠が表示されてしまう。できれば全画面表示に対応していないことを逆手にとって、レトロなテレビをデザインした“スキン”などを開発してはどうかと、お節介ながら提案したい。昭和30年代のテレビ、40年代のテレビと、10年刻みでテレビのスキンを用意して、その年代にあった懐かしのコンテンツが再生できればハマりそうだ。
アクトビラの動画配信は無料と有料のコンテンツがある。有料コンテンツでも配信料は100円からとお手頃な価格に抑えられそうだ。いままで有料の動画配信は「貸し出し、返却の手間がいらないからレンタルビデオより高くして良いだろう」という考え方による価格設定が多かったように思う。でもそのサービスモデルでは失敗するのではないかと筆者は考えている。レンタルビデオはまとめ借りをすれば割引サービスを受けられる店舗も多い。車で1時間も走らないとレンタルビデオ店が見つからないような海外に比べて、日本では駅前や繁華街には複数のレンタル店が軒を連ねているのも珍しくない。そうなると動画配信とレンタル料を比べて、少しでも動画配信の値段が高ければレンタル店に足を運ぶのではないだろうか?
アクトビラの成功のカギは良質なコンテンツを手頃な価格で提供し、動画配信の手軽さを普及させることだろう。また一度購入したコンテンツを、期限切れ後に再度購入した場合、格安の課金で視聴できるようにすれば、利用者は増えるのではないだろうか。今後の「アクトビラ ビデオ フル」のコンテンツが充実することにも期待したい。
−次号の掲載は11月13日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−