いよいよ2007年冬のボーナス商戦がスタートした。AV機器売り場でいま最もホットなのは薄型テレビだろう。昨年の冬に比べて価格は落ち着いてきており、液晶、プラズマともに値ごろ感の高い製品が増えてきた。2005年の夏の北京五輪を考えると、製品の大量投入は来春以降と予測することもできるが、価格や在庫を考えると、この冬に落ち着いてじっくりと製品選びをするのも一考だ。店頭に行けば目移りは必須。今回は各メーカーから発売されている薄型テレビについて、筆者なりに「買いのポイント」をピックアップして行きたいと思う。
■2007年「冬」〜薄型テレビのトレンドとは?
この冬モデルのトレンドを絞ると下記の5つのポイントになる。
(1)倍速駆動:倍速駆動とは1秒間に60コマで表示しているテレビの映像を、倍の120コマとして表示することで残像を軽減する、液晶テレビの動画表示を向上させるための機能だ。各社で呼び名が少し異なるので注意したい。従来の液晶では高速で左右にスクロールする文字がぼやけて読みづらかったが、倍速対応の製品は輪郭がシャープになり、映像の視認性が高くなる。一般にスポーツ中継など、動きの激しいシーンで効果があると言われるが、筆者が視聴したところでは画面全体の引き締め効果があった。フルHD対応パネルだけでなく、倍速駆動の機能を搭載した製品では、よりシャープな映像を楽しむことができる。
(2)フルHD対応機の増加:これまでフルHDパネル搭載の製品といえば、各社のハイエンドモデルが主流だったが、この冬モデルからスタンダードクラスでもフルHD対応の製品が増えてきた。液晶テレビは37型からフルHDパネル搭載機が選べる。プラズマは40型前後でのフルHDパネルの製造が難しかったが、パナソニックからは42V型でフルHDパネルを搭載した「TH-42PZ750SK」もラインアップされ、注目を集めている。これらの製品の登場で、高解像度の薄型テレビの選択肢が広がっている。
(3)ネットワーク機能:テレビを使ってインターネットなどが楽しめる、ネットワーク機能を備えた製品が増えてきた。そのなかでもアクトビラが提供する「アクトビラビデオ」と「アクトビラビデオ・フル」は注目したいサービスだ。アクトビラの詳細については
既報を参照にしていただくとして、対応するテレビにネット回線を接続するだけで、ハイビジョン画質で映画や音楽が楽しめる。コンテンツの利用は有料だが、国内ではまだHD画質のレンタルサービスが普及していないことを考えると、そのサービス内容はかなり魅力的だ。残念ながら、本レポートの執筆時点ではアクトビラビデオ・フルに対応する製品はパナソニックの“PZ750SKシリーズ”と、ソニー“BRAVIAシリーズ”のネットワークTVボックス「ブラビアユニット」を搭載した環境のみとまだ限られているが、今後対応機が増えることを期待したい。ちなみに筆者の独自取材によると、東芝のREGZA Z3500シリーズはファームウエアのバージョンアップでアクトビラビデオ・フルへの対応を検討中であると聞く。バージョンアップは来年に持ち越したとしても、選択の基準に加えても良さそうだ。
(4)録画機能:東芝の“REGZAシリーズ”と日立の“Woooシリーズ”には、テレビ単体での録画機能を搭載するモデルがある。専用レコーダーなしで番組録画が楽しめ、かなり重宝する機能だ。“REGZA Z3500シリーズ”は、本体内にHDDを内蔵してはいないが、価格のこなれたパソコン用のUSB HDDを本体に接続するだけで、録画機能が追加されるという画期的な製品だ。日立の“Wooo”は“XR01シリーズ”、“HR01シリーズ”、“HV01シリーズ”が本体にHDDを内蔵するほか、着脱式のHDD「iVDR-S」への録画にも対応している。また最新の“UTシリーズ”はチューナー部のWoooステーションにiVポケットを搭載し、「iVDR-S」への録画が可能だ。“REGZAシリーズ”は著作権保護の観点から録画を行ったテレビのみで視聴が可能だが、“Woooシリーズ”が採用するiVDR-Sは、他の対応機でも再生できる点が特徴だ。
(5)カラバリ&デザイン:カラーバリエーションが増えたことも、今シーズンの薄型テレビの特徴である。これまで薄型テレビのカラーバリエーションといえばブラックかシルバーぐらいだったが、ホワイトやレッドなどが選べる製品も増えてきた。シャープの“AQUOS”Dシリーズはブラックのほかに、ホワイト、レッドがラインアップされている。またソニーの“BRAVIA”X5000シリーズは、なんと6色のカラーバリエーションを揃えている。狭額縁デザインの製品も増えており、三菱電機の“REALシリーズ”や東芝の“REGZA”RF350シリーズは本体のフレームを30mm以下に抑え、スタイリッシュなデザインを実現しただけでなく、部屋のコーナーに設置する場合、同じ設置スペースでもワン・クラス上のサイズが置けるようになることも特徴だ。
薄型テレビのさらなる“薄型化”もトレンドになりつつある。最薄部が約3mmというソニーの有機ELディスプレイ「XEL-1」の登場に触発されたのか、液晶テレビの薄型化が始まっている。いち早くトレンドを作っているのが日立の“UTシリーズ”だ。パネル部の奥行きが約35mmと薄く、チューナー部をセパレート化することで壁掛け設置も実現しやすくなっている。それだけでなくオプションのワイヤレスユニットを使うことでチューナー部とパネル部のワイヤレス化に成功。レイアウトフリーな設置を実現した。さらにシャープは50V型で20mmという薄型の試作モデルを発表しており、2008年以降の発売が期待されている。
■高画質がポイントの“VIERA”PZ750SKシリーズ − 「アクトビラビデオ・フル」対応も見逃せない
次に各メーカーごとに薄型テレビ最新モデルの特徴を見て行こう。画質で大きな進化を遂げたのがパナソニックの“VIERA”シリーズだ。同社は前モデルの“PZ700シリーズ”で世界初となる42V型のフルHDパネルを搭載するプラズマテレビを実現したが、最新モデルの「TH-42PZ750SK」ではさらに高画質な映像を実現している。42V型のプラズマテレビとしても、ユーザーフレンドリーな価格帯を実現している点も大きな魅力だ。
「TH-42PZ750SK」だけでなく、この秋冬の“VIERA”シリーズは「高画質」が大きなポイントだ。秋冬からフラッグシップモデルの“PZ750SKシリーズ”と普及モデルの“PZ70シリーズ”が加わっているが、どちらも新開発のプラズマパネルを搭載している。“VIERA”シリーズの商品企画を担当する松下電器産業(株)パナソニックマーケティング本部 商品企画グループ テレビチーム 大井直子氏にお話を伺ったところ「どちらのシリーズも解像度は1920×1080画素のフルHD表示に対応しました。さらに“新リアルブラック駆動方式”により、10,000対1の高コントラストを実現したことで、階調性に優れ、より深みのある発色を実現しました。この新しいパネルの搭載により、最新機種では明るい映像をより明るく、黒はずっしりと落ち着いた黒を表現できるようになりました」とのことだった。従来の“VIERA”ではコントラストが4,000対1だったが、それに比べても大幅にコントラスト性能が高められている。コントラストの表現力が高ければ、同時に色の表現に幅ができ、発色の表現も豊かになる。“VIERA”シリーズに限らず、薄型テレビの画質はフルHDと倍速駆動だけでなく、コントラスト性能にも目を向けて機種選びを心がけたい。
“VIERA”シリーズの中で選ぶならば、筆者としてはやはりハイエンドモデルの“PZ750SKシリーズ”がオススメだ。理由は前述した「アクトビラビデオ・フル」への対応がこのシリーズに限られるからだ。アクトビラの動画配信は日々増え続けており、タイトル数は年内に700本を超えると言われている。映画やドキュメンタリーなどのコンテンツがHD画質で視聴できるのは実に魅力的だ。今後もさらに注目コンテンツが増えそうなので、ここは少し予算を足して“PZ750SKシリーズ”を選びたいところだ。
■独創性豊かな画質・機能・デザインを持つ東芝“REGZA”シリーズ
何事にも録画機能にこだわる筆者が、いま一番に注目しているのは東芝の“REGZAシリーズ”だ。液晶テレビにUSB HDDを接続するだけでハイビジョン番組録画が可能ということだけでも驚きだ。レコーダーを何台持っていても、ハイビジョン画質での録画となると、いくら大容量HDDのレコーダーでももの足りない。しかしREGZAの“Z3500シリーズ”は「USB HDD」「LAN HDD」や、同社のレコーダー“VARDIA”シリーズとの録画連携機能という、3系統への録画機能をテレビ1台でコントロールしながら利用できる。もちろんHDD系へは1度に1番組しか録画できないが、録画後はLAN HDDとUSB HDD間で録画番組をムーブして保存できるのだ。またUSB HDD、LAN HDDは最大8台まで登録でき、それぞれを交換することで複数のHDDに録画番組を保存することもできる。現在USB HDDは格安店なら500GBの製品が1万7000円程度の予算で手に入ることを考えると、かなり高度な録画機能をハイCPで実現することができる。
“REGZA”シリーズの商品企画を担当する(株)東芝の本村裕史氏は「Z3500シリーズの前モデル、Z2000シリーズでは、外付けHDDはパソコン用の録画機能が好評でした。ただ価格の高いネットワーク対応のHDDにしか接続ができなかったので、お客様からは不便だというご指摘の声もありました。これを受けて、新たに価格の安いUSB接続のHDDにも対応しました」と語る。HDDへの録画機能については、その操作性も改善されており、リモコンには録画番組をダイレクトに「再生」、「早送り」できるよう、専用のボタンも備わっている。これだけ豊富な録画機能を備えながら、テレビとしての画質は群を抜いている点も見逃せない。
“REGZA”はHDDを内蔵するH3000シリーズも選ぶことができるが、本シリーズは内蔵HDDだけでなく、eSATA接続タイプのHDDも増設できる点がポイントだ。デザインにこだわった“REGZA”RF350シリーズの存在もユニークだ。こちらは狭額縁タイプの液晶パネルを採用したスタイリッシュモデルであり、本村氏によれば「インテリアのセレクトショップにも置いてもらえるるような、デザイン性に優れたテレビをつくりたかった」のだという。カラーバリエーションも4色を揃えるなど、テレビ売り場でもちょっと目を惹く存在になっている。画質などの基本機能が高まり、テレビとしてのスペックが一段落し始めたことで、次の段階である「録画機能」と「デザイン」という選択肢を増やしているのが“REGZA”シリーズだ。
−次号の掲載は12月11日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−