2007年冬シーズンに、各メーカーから発売されている薄型テレビの「買いのポイント」を全3回に渡ってチェックしてきた。最終回となる今回も、パイオニアの“KURO”シリーズを始めとする高画質モデルや、様々なユーザーニーズに応えるバリエーション展開を実現したシャープの“AQUOS”シリーズなど、見所たくさんの注目モデルをご紹介していこう。
■最高のホームシアター画質を手に入れるならパイオニアの“KURO”シリーズ
ホームシアターのディスプレイとして、ベストチョイスの呼び声が高いパイオニアの“KUROシリーズ”。「高純度クリスタル層」を改良し、新材料の電子発生源を配置した新たなセル構造を採用することにより、プラズマ方式には欠かせない、黒表示時の種火の存在をまったく感じさせない沈みきった黒色を表現できる。20,000対1という暗所コントラストを実現し、漆黒の闇をディスプレイ上に再現する。明るいリビングでも美しいが、このKUROシリーズの真価が発揮されるのは、室内を暗くして楽しむ映画などのコンテンツ。暗いシーンの多い映画やライブ映像など、いままで見えなかった暗部のディテールが確認できる。黒が引き締まったことで、鮮やかな色が引き立ち、立体感の表現も素晴らしい。ホームシアターの中枢に収まるべく登場してきたディスプレイと言えるだろう。
製品選びは解像度で別れる。フルHD対応のモデルは60型の「PDP-6010HD」、50型の「PDP-5010HD」の2機種。「PDP-508HX」、「PDP-428HX」は1,365×768ドットのハイビジョン対応パネルを搭載している。
音にもこだわっており、歪みを抑えた新開発の長円型のスピーカーユニットを搭載。それだけでなくスピーカー自体もキャビネット部の剛性を高めることで、迫力のあるサウンドを実現した。
もし購入予算があるならば「PDP-6010HD」を選ぶのがベストだ。現時点でもっとも高画質なホームシアターの映像環境を構築できると言えるだろう。事実店頭では指名買いの多い製品といわれている。とはいえ、やはり予算は気になるところという方々には、インチサイズを50型に変更して、「PDP-5010HD」と「PDP-508HX」から選ぶという選択肢もあるが、ではそれぞれにはどのような魅力があるのだろうか。互いの価格差は16万円と開きがある。画質についてはPDP-5010HDの方が確かに解像感は高いが、PDP-508HXでも十分に美しい映像が楽しめる。解像感にとことんこだわるなら予算を都合してでもPDP-5010HDを、感性に訴える映像を手軽に楽しみたいならばPDP-508HXを選ぶといいだろう。PDP-428HXについても様々なプラズマテレビの中で、色の深みでは群を抜いている。ホームシアターユースということを考えるなら、この先KUROシリーズには「アクトビラビデオ・フル」への対応もぜひ実現して欲しい。
■様々なユーザーニーズに応えるラインナップで存在感を示すシャープ“AQUOS”シリーズ
シャープの“AQUOS”はとにかくラインアップが豊富だ。店頭でのAQUOSの強さには揺るぎないものがある。量販店の店員に話を伺うと「液晶=AQUOS」だと思っている年配の顧客層が多く、店頭で説明して初めて他のメーカーからも液晶テレビが売られていることを知る方も少なくないという。
そんな知名度抜群のAQUOSシリーズだが、高画質モデルの“Rシリーズ”と、こちらをベースに映像をチューンアップしてTHX認証を取得し、映画鑑賞時の画質向上を図った“Tシリーズ”がハイエンドモデルとして君臨する。スタンダードモデルの“Gシリーズ”は倍速フルHD機能を搭載。そのほかにも、カラバリが選べるデザインモデルの“Dシリーズ”、パソコン用モニターとしての機能を優先させた“Pシリーズ”が揃う。
リビングのスタンダードテレビとして選ぶならGシリーズ、またはDシリーズがオススメだ。ただ階調性など画作りや動画再生のクオリティにこだわるなら、様々な高画質技術や倍速駆動パネルを搭載したRシリーズやTシリーズを選ぶべきだろう。これまでAQUOSの発色には、深みが足りないという印象を受けることがあったが、Rシリーズ、Tシリーズにそんな不安はまったく感じられない。お茶の間テレビではなく、ホームシアターの中心に据えるならRもしくはTシリーズだ。
Rシリーズは65型の「LC-65RX1W」を筆頭に、57型/52型/46型/42型と続く。さらにTシリーズのラインナップは「LV-65TH1」と「LV-52TH1」の2機種だ。THX対応モデルはどちらも受注生産だが、究極のホームシアターで映画を存分に楽しみたいのであれば注目の製品だ。
AQUOSシリーズはHDMIでつないだレコーダーやホームシアターシステムをテレビのリモコンで操作できる“AQUOSファミリンク”に対応している。ショップではAQUOSのテレビといっしょにAQUOSブランドのHDD&DVDレコーダーやBDレコーダーが売れるという。ほとんど指名買いというから恐れ入る。ブランド力で選ぶなならAQUOSだ。
■新開発「倍速GENESSA」の効果による高画質が楽しめるビクター“EXE”シリーズ
堅実なテレビづくりをしているのが日本ビクターの“EXE”シリーズだ。他社に先がけ、液晶の動画ブレを克服した120倍速駆動を搭載し、その技術をさらに磨いている。フラッグシップモデルはフルハイビジョン倍速ドライバーや10bitフルハイビジョン倍速ISPパネルを搭載する“LH805シリーズ”だ。映像エンジンにも倍速駆動技術が注ぎ込まれた「倍速GENESSA」を搭載する。
LH805シリーズの特徴は滑らかな階調表現による美しく自然な表示だ。倍速駆動技術の積み重ねの効果もあり、スポーツ中継からバラエティーまでかっちりとした画作りをする。この冬モデルの中でも高画質といわれる東芝のREGZA Z3500シリーズと真っ向勝負のできる数少ない製品だ。
下位モデルの“LH800シリーズ”は発色こそ良いものの、倍速駆動パネルを備えない分、動きの激しい映像での輪郭は甘い。ただし解像度が1,366×768ドットのエントリーモデルの“LC205シリーズ”には倍速駆動パネルが搭載されており、機能面での逆転現象がおきている。どちらを選ぶかはお好みでよいだろうが、印象が良いのはLC205シリーズだった。EXEシリーズは郊外店などで展示されないこともあるが、ダークホース的な機種なので、ぜひ一度チェックすることをオススメする。
■デザイン性の高いパネルもインパクトの強い三菱“REAL”シリーズ
三菱電機のREALシリーズのフラッグシップは“MZWシリーズ”。これに続くのが“MZシリーズ”、“MXWシリーズ”、“MXシリーズ”の各ラインナップだ。MZWシリーズには艶やかな光沢処理パネルが搭載されており、好みが別れるところだ。テレビを見る場合、照明などの外光が写り込む光沢処理は嫌われる傾向にある。そのためブラウン管テレビや、ガラスパネルを使うプラズマテレビでは、一般ではパネル部に外光の映り込みを抑えるために「アンチグレア(つや消し)」処理を行っている。
しかし、一方で店頭に並んだ時には艶やかなパネルが注目を集め、その高級感は人気が高いことも事実だ。そのためREALはあえて光沢処理のパネルを採用したのだろう。筆者は光沢パネルが苦手だが、このあたりは好みなので、購入検討時に判断していただきたい。
デザイン面では狭額縁のフレームを採用し、省スペースでの設置を実現。デザイン性も優れている。MZWシリーズには倍速機能があり、動きの激しい映像でもブレを抑えて表示する。本体にはDIATONE製のスピーカーを内蔵し、本体のスピーカーだけで5.1chサラウンドを実現した点は好感が持てる。映像だけでなくサウンドもチェックして選びたい。
MZシリーズは倍速機能を搭載しないスタンダードモデル。MZWシリーズと同じくサラウンド技術を搭載するのは見逃せない。MXWシリーズは1,366×768ドットの解像度ながら倍速表示を可能にしたエントリーモデル。MXシリーズはプライベートルームでの利用を中心としたエントリーモデルだ。
■薄型テレビの最新トレンドをいち早く捕まえよう
以上、全3回に渡って今冬の薄型テレビの“買いのポイント”について駆け足でチェックしてきたが、この中で印象に残った製品を振り返ってみようと思う。筆者にとって最も気になるモデルは東芝の“REGZA Z3500シリーズ”だ。高画質モデルながら、パソコン用のUSB HDDを接続するだけで録画機能が使え、その手軽さは録画好きの筆者にとって特筆に値する。リモコンでのスキップ、スキップバックなどの操作はレコーダーなみか、それ以上の俊敏性を備えている。
日立の“Wooo UTシリーズ”も魅力的だ。AVマニアの多くの方は、テレビ下のAVラックにぎっしりとレコーダーやプレーヤーを設置していることだろう。これまではテレビの周囲を囲むように、録画機器などを配置するのが常だった。しかしWooo UTシリーズが採用したワイヤレス転送により、その不自由なレイアウトともサヨナラできそうだ。またテレビのパネル自体を軽量化することで、テレビを気軽に動かせるようになった「レイアウトフリー」のコンセプトもうれしい。たとえば、現在テレビラックがベランダへの出口となるガラス窓を塞いでいるような間取りの部屋でAVライフを送っている方はいないだろうか。このWooo UTシリーズならば、テレビまわりのAV機器を壁側にまとめておいて、テレビは通常テーブルスタンドやフロアスタンドに設置し、窓側にレイアウトしておきながら、ベランダに出る時にはひょいと持ち上げて通路を確保することもできる。実に日本の住宅事情にあっている製品ではないだろうか。本機はさらに録画機能まで備えていることも見逃せない。来年以降は、他社からも同様なコンセプトの製品が登場してくるだろうから、一早くトレンドを抑えるならUTシリーズが良いと思う。
プラズマの画質が大きく向上したのも見逃せない。パナソニックPZ750SKシリーズの42インチモデルの画質はかなり衝撃的だった。重厚なプラズマらしい色乗りの良い映像を、比較的手頃な価格で手に入れられるようになったのは歓迎すべきだ。さらにアクトビラビデオ・フルに対応しているのもありがたい。
パイオニアのKUROシリーズも忘れてはいけない。吸い込まれるような漆黒を初めて薄型テレビの民生機で表現した記念すべき機種と言えるだろう。ややハイエンド寄りの価格だが、ホームシアターの本格派には大きな満足をもたらしてくれる画質を備えている。
さて、来年は北京五輪に向けて、年明け早々に新機種の発表があるかもしれないが、この冬の注目モデルを買うのか、或いは来春発売の新機種を待つのか、それとも来春の新機種の登場で値下がりするお買い得モデルを狙うのか?今から悩みどころだ。
−次号の掲載は12月25日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−