いよいよ年の瀬も迫り、読者のみなさんも大忙しのことだろう。年末年始と言えばテレビの特番ラッシュ。筆者は
自身のブログを使って、テレビの放送時間の変更を伝えるコンテンツなどを発信しているのだが、毎年この時期にはうんざりするほどの放送時間変更や特番があって弱っている。(※年末年始も休まず更新するのでぜひアクセスしてください!)
特番といえば長時間のバラエティ番組が多く、その割に内容は希薄で、見ていると疲れてしまうような番組も多い。これらの番組を効率よく視聴するためにはデジタルレコーダーの活用が欠かせない。それでも年が明ける頃には、お屠蘇気分の番組を見ているとなんとなくテレビから離れたくなるのだが…。
そんな時に使えそうなのがソニーのネットワークTVボックス「BRX-NT1」だ。これはアクトビラ、ギャオなど、ネットワークを使って映像配信をするVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスがテレビで楽しめるようになるネットワーク端末だ。VODと言えばサービスごとに専用の端末を用意するか、パソコンで視聴するしかなかったが、BRX-NT1があれば複数のサービスが本機1台で楽しめる。コンテンツは映画、アニメ、音楽などジャンルも豊富。有料の番組がほとんどだが、映画ならビデオレンタル程度の金額で楽しめる。
BRX-NT1は同社の薄型テレビ“BRAVIAシリーズ”のオプション的な位置づけで発売されたが、専用機器ではなく、他社のテレビにも接続できる。ただし対応するBRAVIAに接続すれば、テレビのリモコンでBRX-NT1をコントロールできるというメリットがある。せっかくなのでBRAVIAと接続してテストをしようと思ったのだが、製品が借りられなかったので、手持ちのシャープ製マルチメディアモニター「IT-23HP1(23型)」を使ってテストした。余談だが、筆者はこのBRX-NT1を自腹購入している。
開梱して驚いたのが、接続端子のシンプルさだ。そもそもBRX-NT1は「BRAVIAリンク」で操作するように設計されており、テレビとHDMIで接続するのが基本だ。そのため本体にはHDMI出力×1、D4端子×1、音声出力×1しかない。コンポジット(RCAピン)端子はないので、D端子を備えないアナログテレビには接続できないのだ。アナログ端子を備えると、コピーガードキャンセラーなどを接続することでコンテンツの複製が可能になるなことを回避するための設計かもしれない。今回使用するIT-23HP1にはD端子があるので、こちらを使ってBRX-NT1と接続した。
ネット接続ではスイッチングハブとの相性が悪く、失敗。仕方がないのでブロードバンドルーターに直接差し込むことで認識した。ちなみにテストは光回線の環境下で行っている。ネットが認識できれば、あとは自動的に設定は完了する。
インターフェースはソニーお得意のXMB(クロスメディアバー)を採用。造りのシッカリしたリモコンで操作する。メニューは接続の反応はいまひとつで、ボタンを押してからふた呼吸ぐらいのタイムラグは覚悟した方がいいだろう。設定が終われば、利用したいサービスへの加入手続きを行った後にVODを楽しめる。
まずはアクトビラから視聴してみよう。BRX-NT1を購入したのは他でもない、このアクトビラを利用したかったからだ。すでに本コラムの
過去記事でもご紹介したが、アクトビラのビデオ配信は「アクトビラビデオ」とHD画質の「アクトビラビデオ・フル」に対応している。とくにHD画質で映画やライブを楽しめる「アクトビラビデオ・フル」は魅力的なのだが、現時点では対応する製品が少ない。しかし、このBRX-NT1があれば、テレビの機能に頼らずに「アクトビラビデオ・フル」が楽しめるのだ。
中でも見たかったのが1月上旬まで期間限定で無料配信されている洋楽のライブ映像。「T-REX」や「ディープパープル」、「クィーン」などの貴重なライブを、ハイビジョン画質のクオリティで、しかも無料で何度も視聴することができる。
気になる画質だが、HD配信の「Queen & Paul Rodgers/Return of the Champions」を、42型のフルHD液晶で再生し、評価した。画質はネット配信ということを考えれば期待以上のものだ。もちろんBDソフトやデジタル放送に比べると、照明のグラデーションや明滅の表現、会場の観客を画面いっぱいに表示するようなシーンでは、ノイズが発生するが、これはデジタル放送でも同じように発生するはずだ。DVDビデオの画質とまではいかないまでもデジタル放送とは、いい勝負ができる。もちろんDVDよりも解像感があって美しい映像だ。
アクトビラビデオ・フルのHDコンテンツが増えている点も見逃せない。レンタル店がHDコンテンツの供給に対応しきれていない現状を考えると、比較的新しいコンテンツを気軽にHD画質で楽しめるのは魅力的だ。蛇足ながら“貸し出し中”のストレスが無いことも付け加えておこう。
BRX-NT1は処理速度の限界なのか、操作感はもっさりだ。ただ、現時点でここまでのVODサービスに1台で対応する端末はなく、その存在価値は大きい。筆者のようにネット通販を利用すれば2万円ちょっとで入手できることを考えると、デジタルガジェットとしてはお買い得だと感じた。
BRX-NT1はいままでパソコンなど、パーソナルユースが中心だったVODサービスを、お茶の間に招き入れた画期的な製品だと感じる。まだヨチヨチ歩きの感もあるが、今後新しいエンタテインメントとして成長すれば、より豊かなAVライフが送れることだろう。じっくり使ってみようと思っている。
−次号の掲載は1月15日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−