前回に引き続きRD-A301が搭載する「HDトランスコーダー」の実力をチェックしてみよう。前回はH.264方式のエンコードを使うことで、HD DVDやDVDにハイビジョン映像を長時間録画する方法とその画質を検証した。ハイビジョンの解像度を残しつつ、限られた容量の光メディアにデジタル放送を効率よく記録できる機能と評価した。
「HDトランスコーダー」が実現する機能として、もう一つユニークなものがある。それが「DVDへのハイビジョンTS録画」だ。これはDVDメディアをHD Recの規格となる「HDVR」形式でフォーマットすることにより、これまでできなかったDVDメディアへの「TS」画質での録画が可能になるというものだ。前回もお話ししたが、TSモードはデジタル放送の放送波をそのまま記録する方式なので、2時間のハイビジョン番組を録画するのに約25GBもの容量が必要になる。これでは4.7GBのDVD-Rに記録するにはあまりにも容量が少ないと考えられていた。しかし東芝は価格の安いDVD-Rに短時間でもTS録画をするというニーズもあるだろうと考え、この機能を追加した。以下がDVD-RへのTS録画可能時間だ。
DVDへのハイビジョンTS録画時間 | DVD-R(片面1層4.7GB) |
地上デジタル放送(17Mbps) | 約32分 |
BSデジタル放送(ハイビジョン24Mbps) | 約22分 |
4.7GBのDVD-RにTSモードで約22分から約32分の記録ができる。ただしHD Recに対応した機種でないと、ディスクに録画したコンテンツは再生できない。
このDVDへのTS記録だが、CPRMに対応するDVD-R DL、DVD-RAM、DVD-RWにも記録できるが、BSデジタルハイビジョンのようなビットレートの高い番組は再生できない場合があるので注意したい。安全を考えればCPRM対応のDVD-Rメデイア用の機能と考えたい。
操作は、まずDVD-RをHDVR形式でフォーマットして準備。あとは通常のダビング(ムーブ)のように編集ナビからタイトルを選んで操作すれば完了だ。
DVDへ約30分のTS記録が行えるこの機能だが、実際にはどんな使い道があるのだろう。筆者は5分程度のミニ番組や情報番組のワンコーナーをコレクションしている。DVDへのTS記録はそれらの番組を保存するのには最適ではないだろうか。
たとえばBSフジの5分間番組『美術館の風に吹かれて』や1日一首、著名な文化人が万葉集からお気に入りの一選を紹介するBS-hiの『日めくり万葉集』、貴重なSLのハイビジョン映像が楽しめる『SLミニ図鑑』などを録画してDVDに保存してはどうだろう。これらの番組はとても美しく、見流してしまうのは惜しい。1枚のディスクに集めれば、ちょっとした映像図鑑にできる。
地デジなら長寿ミニ番組のNHK『みんなのうた』や、フジテレビ『くいしん坊!万才』あたりがおすすめ。めざましテレビの『きょうのわんこ』を録画後編集してコレクションするのも良さそうだ。
これらのミニ番組を15GBのHD DVDに録画すると20〜30本程度記録できるが、それだとタイトル数が多くなりすぎて見たい作品を見つけづらい。DVDなら1枚のディスクに5本から6本程度の記録になるので、ラベルが書きやすく管理しやすい。なにより70円程度で買えるDVDなら、600円前後のHD DVDに比べて1GBあたりの単価が安いので気軽に使える。ハイビジョン画質を劣化させずに格安で保存できるDVDへのTS録画は、録画好きの心をくすぐる機能だと感じた。
−次号の掲載は1月29日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−