先日、大手量販店のカリスマ店員や媒体の編集長、編集者、著名評論家という、そうそうたる面々が名を連ねる某新聞のランキング記事に参加した。そこにに混じって、なぜか筆者も投票に加わることになった。「玉石混淆」なら「石」、「清濁併せ呑む」なら「濁」のパート担当なんじゃないか?などと思いつつ、恐れ多くもその企画に参加した次第だ。
結果の詳細については、残念ながらここではお話しできないが、機能的に遊びの少ない、いわば“コモディティ”的な製品がトップテンの大半を占めていることに驚いた。筆者はデジタルレコーダーを「機能優先」で選んでいる。画質はもちろん大切だが、やはり“録り逃し防止”機能など、日常の便利さこそ注目すべきで、そういった機能に優れる製品こそ、ベストな録画機と考えているのだが…、最終ランキングと編集部に提出したランキングを見比べると、世の中のスタンダードに迎合できない筆者の好みが浮き彫りになり、ちょっと凹んでしまった。
このランキングの対象となる製品については「ランキングが掲載される新聞の発売時に、店頭に並んでいる製品であること」という条件が設けられている。そのため、いまのところ今夏モデルの中で筆者が本命と考えている3台のうち2台が漏れてしまった。
ランキングに登場してきた1台はパナソニックの“DIGA”「DMR-BR500」だ。シングルチューナーなので、2番組同時録画はできないが、激安店ではすでに7万円台半ばの値がついている。裏番組録画ができず、検索機能に制限があるなど気になる部分もあるが、BDレコーダーがこの価格で手に入るというのは確かに驚きだ。ボーナス商戦を前に、まだ値段が変わる可能性もあるが、現時点ですでに最も“お得”なBDレコーダーのひとつと言ってもいいだろう。DMR-BR500のHDD容量は250GBなのだが、番組の録り逃し防止を万全にするなら、ツインチューナーを搭載する上位モデルDMR-BW800を購入するよりもDMR-BR500を2台購入した方が、実は使い勝手はずっといい。勘のいい読者の方ならすでに気づいているだろうが、現在発売中のレコーダーはツインチューナーで録り逃し防止機能を搭載していても、アナログの同スペックレコーダーに比べて録り逃しは発生しやすい。
その理由について少し触れよう。MPEG4-AVC対応機のように「レコーダー1」、「レコーダー2」を選択して番組予約をする製品は、テレビ番組の改変期などにスケジュール変更が多発した際、発生する“玉突き変更”に対応できないからだ。これはソニー、パナソニック、加えて今回のテーマである三菱電機の新モデルなど、番組追跡機能を備える機種といえども同じだと筆者は考えている。“玉突き変更”などの録り逃し防止機能と、2番組同時録画の仕組みについては、機会があればまた説明しようと思う。結果だけ言えば、録り逃し防止機能や自動録画機能を存分に楽しみたいなら、現時点では発売されていない“2番組同時・MPEG-4 AVC録画”が可能な製品の登場を待たなければならないのだ。
話を本題に戻そう。今回は製品発売のタイミングに間に合わなかったということでランキングに掲載されなかったと思われる2機種は、ソニーの「BDZ-A70」と三菱電機の「DVR-BZ200」だ。この2機種がランキングに入っていれば、よりバラエティ感のある結果になっただろうと思う。
ソニーのBDZ-A70についてはすでに
前回のコラムで触れたので詳細はこちらを参考にしていただきたい。今夏モデルで筆者が「買い」のモデルとして推す1機種だ。筆者はこの製品の魅力は「おでかけ転送」の便利さ、という部分に集約されていると思っている。
そしてもう一台が三菱電機のDVR-BZ200だ。正確には容量違いのDVR-BZ100もあるので2機種ということになる。今回は本機について、筆者なりに「買い」と分析するポイントをお伝えしたい。製品の基本機能などについては
Phile-webニュースでご確認頂きたい。
これまでBDレコーダーを選ぼうとしたら、番組の自動録画や録画番組の持ち出し機能を備えるソニーのBDZシリーズか、ソニーのようにキャッチーな機能は省かれているが、ハイビジョン番組をBDだけでなく従来のDVDにも記録できるパナソニックのDIGAシリーズが選択肢のメインストリームになっていた。シャープのBDレコーダーについては、次期モデルでのMPEG4-AVC録画の対応を期待したいところだ。
今回新たにBDレコーダー市場に参入した三菱電機のDVR-BZシリーズは、ソニーとパナソニックの製品からそれぞれの“いいとこ取り”をしてきたモデルと捉えられる。本シリーズはソニーのような自動録画機能を備えつつ、DIGAシリーズと同じく、DVDにハイビジョンが書き込めるAVCREC機能を備えている。これまで「自動録画や任意のキーワードを使った番組検索ができて、DVDにもハイビジョン録画ができる製品が欲しいのだけど…」と、各社のカタログを見比べてため息をついていた方々には福音ともいえる製品だろう。後出しジャンケンをするならこれぐらいの作戦は必要だろうと筆者も思う。
そのスペックにおいては、ソニーやパナソニックの製品を超えている部分とそうでもない部分もあるので、一度詳細を確認しておこう。
まずDVDへのハイビジョン録画機能はパナソニック製品とも互換性のあるAVCRECに対応している。スペックや商品説明を聞く限り、パナソニックの仕様と同等だ。録画時間は下表の通りで、DVD-Rの片面1層に最長で1時間40分のハイビジョン録画が可能。パナソニックとの大きな違いはDVD-RAMへのAVCREC記録に対応していないところだ。ただしAVCREC記録したファイナライズ済みのDVD-RAMの再生は可能だ。
■三菱電機DVR-BZシリーズのAVCREC記録時(AF/AN/AEモード)における録画時間
録画モード | HDD | BD-RE/BD-R | DVD |
500GB | 250GB | 50GB | 25GB | DVD-R DL(片面2層) | DVD-RW | DVD-R |
AFモード | 約80時間 | 約40時間 | 約8時間 | 約4時間 | 約1時間20分 | 約42分 | 約42分 |
ANモード | 約126時間 | 約62時間 | 約12時間 | 約6時間 | 約2時間 | 約1時間5分 | 約1時間5分 |
AEモード | 約189時間 | 約93時間 | 約18時間 | 約9時間 | 約3時間 | 約1時間40分 | 約1時間40分 |
録画予約ではソニーのような自動録画機能を搭載している。「おすすめ自動録画」はユーザーの録画再生の履歴から、その好みを類推して番組を自動録画する機能だ。例えば録画番組を再生すればお好みポイントは+1になり、ディスクに記録すればさらにお好みポイントはプラスされる。しかし録画しても見ないで放置しておくと、その番組や関連するキーワードに対するお好みポイントは加算されないというもの。
この自動録画は「安心型」と「発展型」そして「安心型+発展型」のどれかに設定できる。「安心型」はユーザーが録画予約する可能性があるが、予約がされていない番組を自動録画する機能。例えば連ドラの初回を見ているが、2回目の予約がなければ録画するという堅実な自動録画だ。発展型は野球などを録画していれば、関連するジャンル、たとえばスポーツ全般に対して自動録画を行う。自動録画したあと、その番組を見なければお好みポイントはマイナスになり、だんだんと録画しなくなると他の番組を録画するようになる。どちらも使うほどにユーザーの好みを“汲む”ようになるのだ。
自動録画というと勝手に録画しすぎてHDDの容量がなくなり、目的の番組が録画できなかった、というトラブルが心配されるが、自動録画については1日に録画する番組を1/2/4番組と指定できるのが便利だ。
三菱のレコーダーについて、筆者が残念に思うのはソニーのようにキーワードによる自動録画に対応しなかったことだ。同社の担当者によると「ユーザーに自動録画の操作を意識させないように」との説明だった。それはそれで“あり”だと思うが、自動録画上級者のために、オプションでキーワード予約にも対応して欲しかったと思う。
またこれは試作時点での話だったが、録画した番組を再生しないで放置しておくと、お好みポイントがマイナスになる。筆者はニュースやバラエティなど速報性やカジュアルに楽しみたい番組から視聴しては消去し、楽しみにしている番組は時間のある時にゆっくり見ようと考え、結果放置してしまうことが多い。いわば、ラーメンのチャーシューを最後にとっておくタイプなのだ。しかし本機のお好みポイントの考え方だと、この人は興味がないから再生を後回しにしている、と考えるので誤差が生じるようだ。このあたりは今後テスト機が届いた際にしっかり使ってみてご報告したい。
再生機能も充実しており便利だ。着目すべきは本編からCMだけをカットして再生できる「オートカットi」だろう。よくこの手の機能は2番組当時録画をすると片方の番組でしか機能しないが、本機は2番組同時録画時でも利用できる。食事をしながらでもバンバンCM抜きで録画番組を楽しめるのは快適だろう。
以前、某サイトでテストしたスポーツ番組のハイライト再生も健在。オリンピックのマラソンやサッカーなど見どころをサクッと見たい時に重宝する。さらに新しく音楽番組から演奏部分だけをピックアップして再生する「楽曲再生」も備えた。ミュージックステーションなどの音楽番組をトークヌキで楽しみたい人には喜ばれる機能だ。さらに音楽部分だけ自動的に抜き出して、BDやDVDに記録できると言うからスゴイ。実際に使うとどれぐらいの精度で再生するのか、テストできるのを楽しみにしている。
またユニークなのが「DIATONEサラウンドヘッドホン機能」だ。通常のヘッドホンを本体に差し込むだけで、サラウンド再生が楽しめる。主に深夜に映画などを鑑賞するという方には、予算をかけずに迫力のあるサウンド環境が手にはいるので重宝する機能だろう。ちなみに本機は24P出力に対応しているので、市販のBDソフトの再生は、24P入力に対応するテレビとHDMIで接続することにより、映画本来の質感で楽しむことができる。
操作面では液晶ディスプレイを搭載したタッチパネル採用の「液晶グット楽リモコン」が付属する。レコーダーの操作に慣れた上級者は通常リモコンが使いやすいが、液晶グット楽リモコンはまるで対話をするように操作できて、じつに簡単。レコーダーを初めて使う人にオススメしたい。
録画マニアとしは、「これで他製品とのダビングに対応するi.Linkダビングに対応していれば…」と思うのだがD-VHSビデオで辛酸を舐めたメーカーだけに、あえて手を出さなかったのでは?と筆者は読んでいる。ぜひ他機種とのダビングはLANを使うなどして検討していただきたい。
そのほかにも、赤外線を使ったスカパー!チューナーとの連動機能や、AVCHD対応のハイビジョンムービーとの連携、初心者向けの丁寧なヘルプ機能など、新機能が盛りだくさん。テレビや音楽プレーヤーよりも、一足早くデジタルバブルが弾け、開発中止や撤退が報じられるレコーダー市場にあって、三菱電機のDVR-BZシリーズは久々にメーカーの意欲を感じる楽しい製品だと感じた。いまかからレビューするのが楽しみで仕方がない。
−次号の掲載は5月13日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−