休日に旅行するなら相棒にしてみたい━━レビュー用にテストしてそう感じさせたのが、ソニーから発売されたコンパクトなハイビジョンムービー「HDR-TG1」だ。スペックについては
Phile-webのニュース記事を参照していただきたいと思うが、とにかくコンパクトな本体サイズに驚く。少し前のコンパクトデジカメ並みのサイズしかないのに、これでフルHD(1920×1080ドット)での動画撮影ができ、最大で400万画素相当の静止画撮影にも対応する。これ一台があれば、旅先の情景を動画と静止画でお土産にできる!と踏んだワケだ。
とはいえ、赤貧の筆者にのんびりとした休みがあるわけでもなく、今回は地方取材の仕事に本機を持参して、「さぞ旅行に持っていったら、こんなだろうなぁ」という試用レポートをお伝えしようと思う。さっそく、HDR-TG1をポケットに忍ばせ、今回の旅先(いや取材先)の新潟に向け出発した。
本体は軽量ながらも強度の高いチタン製。ブラウンを基調としたカラーは女性や年配層にもアピールする。外観は省スペース性を最優先したのだろう、筆者にはシンプルすぎて素っ気なく感じた。コンセプトモデルがそのまま発売されたような印象すら受ける。感性の問題だろうが、“モノ好き”の物欲をくすぐるフェロモンがもっと漂ってもよかったのではないだろうか?ただ、この方が素材感は引き立つのも事実で、長く使うならこのデザインの方がいいのかもしれない。
本体はとてもコンパクトだ。よくぞフルHDムービーをこのサイズに納めたと、技術陣の努力を評価したい。しかし、筆者としては重さが気になった。本機の撮影重量はズシリとしており300gある。ハイビジョンムービーとしてはとても軽いのだが、この手の商品には、シャツやジャケットのポケットに入れて持ち歩くイメージがある。商品のコンセプトからすれば当然、軽快に持ち運びたいものだが、実際にそれをしてみると、上着などトップスのシルエットは崩れる。筆者のようにグダグダになったジャケットやシャツを着ているなら気にならないだろうが、スマートな服装を心がけるなら、ポケットには入れずに、別売のケースを購入しベルトにつけるのがいいだろう。
新潟での取材中は、とにかく目についたものをパチパチと静止画で撮影。動画は車窓の風景を撮影した。ポケットから取り出せばすぐに撮影できる手軽さにありがたみを感じる。しかし、気がつくとバッテリーマークは「空」を表示している。さっき撮影したときには、「残り15分」と表示されていたのに…、結局実際に撮影した時間は30分ぐらいだろうか。
ホテルに戻り、マニュアルを開いて原因がわかった。本機は液晶を開いて約1秒で撮影が可能なクイックスタート機能を備えている。どうもこれがいけなかったようだ。クイックスタートに設定をすると、設定した時間分だけ電源が入ったままで待機する。液晶を使っていないので、撮影時ほどは電力を消費しないが、それでも電源を切っているよりはバッテリーを消耗する。クイックスタートに設定していても、本体の電源ボタンで強制的に電源を切れるが、つい忘れることもある。クイックスタートが無くても約5秒程度で撮影が可能なので、電源の持ちを優先した。
いきなりバッテリー残量が「空」になっていた理由は、待機時間中に残り15分のバッテリーを消費したためだった。撮影時間を少しでも伸ばすために、設定からクイックスタートをオフにして翌日の撮影に控えた。
以前の記事でもお話ししたが、ハイビジョンムービーの楽しさは「想い出に残る風景を、切り出して持ち帰られること」にあると筆者は感じている。ハイビジョン撮影した映像を大画面テレビで見ると、環境ビデオのように楽しめるのだ。せっかく撮影するならと絶景を探しがちだが、実は初めて訪れた町の交差点や市場などを淡々と撮るだけでも楽しい。
※キャプチャー画像は、すべてフルHDで撮影し、AVCHD画質のDVDに記録。それをソニーのBDレコーダーBDZ-X90動画で再生し、キャプチャーボードのPV4を使い動画のままキャプチャーを作成した。
いろいろあったが、HDR-TG1を持ち歩いた取材はとても楽しかった。いつもならデジカメで静止画を撮影するだけなのだのが、貴重な動画をお土産にできた。画質に関しては、本体サイズの大きな製品に比べ、CMOSセンサーのサイズが小さいので、解像感などがいまひとつだが、本体サイズを考えれば申し分のないレベルだろう。
バッテリーに関しても一工夫ほしかった。本体にすっぽりと収まる標準バッテリーはデザイン面から見ても必然だったと思う。ただ外部バッテリー接続用の端子を本体につけるべきだった。そうすればオプションで電池式のバッテリーケースや大容量バッテリーを接続できて、気兼ねなくハイビジョン撮影ができたと思う。
HDR-TG1の製品コンセプトはハイビジョンムービーの今後を巡って、多くの可能性を感じさせるものだった。興味のある方はぜひ店頭で手にとって、その小ささと高い質感を確かめてみて欲しい。
※お詫びと訂正:記事初出時に「本体に三脚用のネジ穴がない」と記載しましたが、正しくは本体に三脚取付用ネジ穴が設けられております。関係者ならびに読者の皆様にご迷惑おかけしましたことをお詫び申し上げます。
−次号の掲載は6月3日(火)を予定しています。どうぞお楽しみに!−