ソニーのBDレコーダーは、「BDZ-X100/X95/L95/L55/T75/T55」の世代から映像回路を一新し、高画質回路“CREAS(クリアス)”を搭載した。さらに旗艦モデルのXシリーズには解像感と、スッキリとしたデジタル表示を実現した新開発LSIの「DRC-MFv3」を乗せている。昨年末はソニーのBDレコーダーのテレビCMが繰り返し放映され「ソニーのブルーレイにつなぐと、どのハイビジョンテレビもキレイになるって、どういうこと?」…という、某タレントによるキャッチコピーも話題をさらった。これらの高画質回路を介することで、BDやHDDに録画した画像だけでなく、ハイビジョン放送も美しく表示でき、一般的なテレビが搭載する映像回路よりもソニーのBDレコーダーを通して見た方が映像の方が美しく楽しめるのだという。
テレビにも映像回路は搭載されているが、その能力は製品のグレードによって違いがあるのはご存じのとおりだろう。薄型テレビの画像の善し悪しは、表示パネル(液晶、プラズマなど)と映像回路で決まる。映像回路は“画作り”を担当する部分で、この性能が劣ると不自然な発色をしたり、ノイズの多い表示をしてしまう。料理に例えるな表示パネルは素材であり、映像回路は料理人・シェフと言えるだろう。いくらパネルの性能がよくても、それを料理する映像回路がお粗末では、素材を台無しにしかねない。一方、パネルの性能がそこそこでも、映像回路が弱点をカバーすれば、キレイに表示できる。
今回はソニーBDレコーダーの高画質モデルBDZ-X95を、他社製の液晶テレビに接続して画質に違いが出るかを検証してみた。テストに使ったのは某社より2008年春・夏モデルとして発売された40インチ台の液晶テレビだ。
テストの前にソニーのBDレコーダーが搭載する映像回路について少し説明をしておこう。まず高画質回路“CREAS”だが、資料によると「デジタルの再現性とアナログの連続性を融合させた回路」とある。デジタル映像は解像感を残しつつ、ブロックノイズなど特有のデジタル特有のノイズを軽減させ、アナログのような自然な表示を可能にしている。
フラグシップのXシリーズが搭載する「DRC-MFv3」は、同社のテレビにも一部搭載されている映像回路で、インターレースからプログレッシブ映像に変換するIP変換時に発生するチラツキや、斜めの輪郭に発生するジャギーを軽減する効果がある。その他に水しぶきや紙吹雪などの映像で発生するMPEGノイズも軽減するため、実際の映像はかなり見やすくなる。CREASで立体感や自然な表示をし、DRC-MFv3では、ノイズを取り除き画面をスッキリと表示させている。
テストは某社の液晶とソニーの“BRAVIA X1”の40型「KDL-40X1」を用意し、BDZ-X95を接続してテストした。まず、某社液晶テレビでのテスト結果だが、この機種は当ブランドの高画質モデルではあるが、人物の顔にできるシャドウなど、ノイズが発生することがある。まず、地上デジタル放送で国会中継を表示させて画質を比較した。
テレビの設定は入力も含め、スタンダードにしている。比較ポイントは肌色、スーツの質感など。明らかに違いを感じるのが立体感だ。テレビ自体の映像回路よりも、BDZ-X95を経由して表示された映像の方はメリハリがあり解像感が高いように感じる。麻生総理を含む、多くの議員が着ているダークスーツだが、その質感もBDZ-X95のほうがよく表現できていた。テレビ自体の回路による映像はのっぺりとした印象があり、BDZ-X95の映像と比べると軽くぼけたような印象を受けた。
テレビの映像のみをチェックしていると気づかないものだが、こうして比較して見るとBDZ-X95の回路を通した映像の美しさがわかった。これがもし購入後、数年経過したテレビで見た場合であればどれぐらい効果を感じられることだろう。簡単なテストだったが、画質に不満を感じるテレビなら、BDZ-X95を接続して見た方がキレイに映るだろうと実感できた。
同じDRC-MFv3を搭載するソニーの「KDL-40X1」にBDZ-X95を接続して映像をチェックした。こちらはもともとテレビ自体の画作りの能力が高いためか、某社のモデルで見た時ほどハッキリとした変化はみられなかったが、おそらく“BRAVIA”でも旧モデルとの接続時であれば、違った結果が得られたかもしれない。
最近はHDMIリンク機能を活用するために、テレビと同じメーカーのレコーダーを購入する人が増えていると聞く。しかし、殊にその画づくりについてはテレビ、レコーダーともにそれぞれの傾向をよく知った上で、ユーザーの好みに合ったモデルを比較して選んでほしいものだ。いま使っているテレビを活かしつつ、シアター環境の画質をグレードアップしたいなら、レコーダーは画質にこだわったモデルを購入するといいだろう。
(鈴木桂水)