三菱電機のBDレコーダー“REAL(リアル)ブルーレイ”のニューモデル「DVR-BZ130」が登場した。本機は「DVR-BZ100/110」の後継機で、搭載するHDD容量は320GB。地上/BS/110度CSデジタルチューナーは2基備えている。スペックの詳細については
既報をご覧いただきたい。
DVR-BZ130は「ツーステップで録画・再生」を可能にしたシンプルリモコンが一番のウリだ。リモコンの操作感は後述するが、初心者にとっては確かに使いやすくまとめられているものの、レコーダー上級者にはややツライ操作感と感じた。
筆者がより注目したポイントは、HDD/BDメディアにフルHD画質で長時間録画できるAF/AN/AEモード(MPEG-4 AVC/H.264 High Profile)の記録方式が変更されたことだ。従来のREALブルーレイでは、AF/AN/AEモードで記録すると、パナソニック製のBDレコーダーでは再生できたが、ソニー製のBDレコーダーでは再生ができなかった。DVR-BZ130からはその互換性が改善され、ソニー製のBDレコーダーでも記録したBDを再生できるようになっている点が魅力だ。
はじめに本体外観から見てゆこう。筐体は従来機より大幅にスリム化されており、高さは58ミリしかない。これならAVラックのちょっとした隙間にも設置できそうだ。フロントパネルにはUSB端子とSDカードスロットがあり、AVCHD方式で撮影した動画を取り込んでBDやDVDへ簡単に記録できる。
それではツーステップでの録画・再生を可能にしたという、リモコンの操作感をチェックしてみよう。実はDVR-BZ130のソフトウエア・インターフェースには従来機と大きな違いはない。リモコンの設計を変更することで、操作性に違いを持たせている。
リモコンには十時操作ボタンを挟んで「予約するボタン(番組表)」ボタンと「見る」ボタンが象徴的に配置されている。ボタン数はかなり削られており、放送波の切り替えは「CS」をフタの中に入れ、「地上デジタル」と「BSデジタル」のみを表面に出した。ほかにもレコーダーの操作で頻繁につかう、「レコーダーのチャンネル切り替え」、「ドライブ切替え(HDD、DVD・BDを切替えるボタン)」、「メニュー」、「サブメニュー」などのボタン類は全てフタの中に配置されている。
番組予約は「予約する」ボタンを押すと電子番組表が表示され、録画したい番組を選ぶだけで予約が完了してしまう。レコーダーに詳しくない人なら「あらカンタン!」で、済むだろうが、Phile-webの読者や筆者など、レコーダーを使い込んでいるユーザーにとっては、違和感を感じる操作のショートカットかもしれない。
通常、録画したい番組を選んだら、次にその番組を毎回録画するのか、単発なのか選択しなければならない。さらに画質だ。高画質で残したい番組なら「DR」を、ドラマやアニメを1枚のBDやDVDにまとめて保存したいならMPEG-4 AVCで録画するなど、あらかじめ保存するメディアのことも考えて録画モードを選びたい。しかし本機はそういった細かな操作がワンステップでは行えない。もし毎週録画にしたいなら、一度予約を終了させて、リモコンのフタを開け、「スタートメニュー」から「予約一覧」を表示させ、さらに個別の予約を選択して、録画の詳細を変更し直さなければならない。筆者は録画内容の7割以上が毎週予約なので、この一連の流れは受け付けなかった。
本機には「おすすめ自動録画」機能があり、一度録画して視聴した番組は自動的に次回以降も録画する「安心」モードがあるので、毎週予約をしなくても次回以降の番組を録画できる“可能性”はある。ただし任意の予約が「安心」予約と重なってしまうと、「安心」の番組は録画されない。確実に録画するにはやはり毎週予約は欠かせないのだ。
「見る」際の操作も違和感が残る。リモコンに大きく配置された「見る」ボタンを押すとHDDに録画された、録画リストが表示される。ではDVDやBDはどうやって再生するかというと、小さな「ディスクを見る」ボタンを押してリストを表示させる。ドライブ切替えボタンをフタの中に入れたからこのような操作性になったのだろうが、むしろこの方が迷わないだろうかと感じた。
本機には従来機から引き継いだ便利な再生機能がある。番組とCMを自動分割する「オートカットi」は、設定により、録画番組の本編だけ、CMだけを連続で再生できる。再生時にはこの「オートカットi」の使用について選択できる。さらに「見どころ再生」機能を使えば、スポーツ番組と音楽番組で見どころをハイライト再生できる。「見どころ再生(スポーツ)」は、歓声などを解析し名場面をピックアップ。「見どころ再生(音楽)」は音楽番組で司会部分を飛ばして、楽曲の演奏部分のみを連続再生できる。「オートカットi」と「見どころ再生」で作成したハイライトシーンはそのまま光ディスクにダビングもできる。
このリモコンを使っていて困るのがレコーダー表示時のチャンネル切り替えだ。テレビ用のチャンネルは表面にあるのだが、レコーダーのチャンネルはフタの中だ。レコーダー表示時にチャンネルを切替えたくなったら、毎回フタをあけて、レコーダーのチャンネル操作する。もしアナログテレビにBDレコーダーを接続してテレビチューナーとしても使いたいと考えているなら、不便な仕様だろう。
できればリモコンの十時操作ボタンがメニュー表示以外の時は空いているのだから、ここにレコーダーのチャンネルを割り振ってもよかったのではないだろうか。インターフェースの玄関とも言える「メニューボタン(スタートボタン)」もフタの中だ。このボタンこそ何をさておいても表面に配置すべきではないかと感じた。本機の場合スタートボタンが重要で、ディスクメディアのファイナライズ操作は、スタートボタンから選ぶ必要がある。また前述した予約確認にも使用する。その他に録画番組の視聴に欠かせないスキップとスキップバックボタンもフタの中だ。代わりにトレイの開閉ボタンが表面部に配置されていることも不便に感じた。
これまで筆者が使ってきたレコーダーの中では、使いづらいと感じてしまったリモコンだが、これはレコーダーを使いこなしている立場の意見だ。とにかく録画して、見て、消して、という流れがリモコンの表面のボタンで簡潔に操作できるので、AV機器の操作が苦手な人でも取っつきやすい仕様であることは確かだろう。しかしこれまでにも、リモコンボタンの数を減らして、簡単操作を謳い、結局使いづらくなってしまったレコーダーもあった。いまではリモコンのボタン配置を各社ともに見直し、操作性は改善されている。三菱電機の技術者もその点は承知でこのリモコンを設計したいのではないかと、筆者は想像している。ただ、せっかく苦労して開発されたリモコンだが、そこまで敷居を下げないとレコーダーは使わないというユーザーがいるなら、リモコン操作を変更しただけで、録画機を使うようになるだろうか?筆者は使わないと思う。以前から主張しているが、レコーダーなどのAV機器の操作が苦手な人は、そもそもテレビの「入力切替え」に抵抗があると思われる。もしAV機器の操作が苦手な消費者にテレビ録画の楽しさ、素晴らしさを広めたいのであれば、レコーダーの操作を簡略化するよりも、録画機能を備えるレコーダーテレビを開発すべきだと考える。
あまり知られていないが、REALブルーレイにはユーザーの視聴動向を解析して番組録画をする「おすすめ自動録画」機能が備わっている。自動録画機能と言えばソニーの「x-おまかせ・まる録」が知られているが、REALブルーレイのそれはかなりユニークだ。従来機から搭載されている機能だが、筆者が日々重宝している機能なので、この機会に紹介したいと思う。
x-おまかせ・まる録は入力したキーワードに対して、関連する番組を自動録画する。REALブルーレイの「おすすめ自動録画」はキーワードの入力はできないが、ユーザーの録画・視聴操作を独自で判断し、ユーザーが好みそうな番組を録画する。
「x-おまかせ・まる録」と「おすすめ自動録画」を使い比べると、前者は検索エンジンのようにキーワードに引っかかった番組しか録画しないが、後者はまるで予想もつかない番組を録画するので楽しい。
さらに「おすすめ自動録画」には「安心」と「発掘」がある。「安心」は録画した番組を再生すると、同一曜日の次回放送を予約しなくても録画する。「単発で録画して面白かったが、次回予約を忘れてしまった」そんなときに重宝する機能だ。
「発掘」は録画・視聴した番組の内容や出演者を解析し、関連した番組を見つけて録画する。筆者はこの「発掘」機能に助けられている。先日ミュージシャンの忌野清志郎氏やマイケル・ジャクソン氏が亡くなったが、これにともない追悼番組が放送された。いくつかはチェックして録画・視聴できたのだが、そのあと不意の追悼番組があり、これを見事に「発掘」して録画できた。ソニーの「x-おまかせ・まる録」だと、わざわざキーワードを入力しないと自動録画はされないが、REALなら意識せずに面白そうな番組を見つけてくれる。ただし残念ながらキーワードによる自動録画はできないので、ソニーの「x-おまかせ・まる録」搭載機をいっしょに使うこと、見逃しが激減する。
DVR-BZ130はリモコンの操作に違和感が残ったが、CMを自動的にスキップする「オートカットi」や「おすすめ自動録画」など、録画生活を豊かにする機能が豊富に揃っている。画質も安定しているので、メインマシンとしても十分に活躍してくれるだろう。また、今回の製品はデジタルビデオレコーダーを苦手とするユーザー向けの製品だが、同社では年末に向けてマニアライクなモデルも含めたラインナップの拡充を予定しているとのことなので、その仕上がりにも期待したい。
(レポート/鈴木桂水)