いよいよ、本格的なレコーダーテレビ時代がやってきた。ついに三菱電機からHDD&BD搭載の薄型テレビREAL BHRシリーズが登場したのだ。現在のレコーダーテレビの最新状況と照らし合わせながら、今年最も注目すべきレコーダーテレビの実力を分析する。
レコーダーテレビとは録画機能を備えたテレビのことで、テレビ+レコーダーという組み合わせよりもカンタンに操作できるのが特徴だ。
レコーダーテレビはこれまで、HDDを搭載する東芝の“REGZA”シリーズ、日立の“Wooo”シリーズ、パナソニックの“VIERA”シリーズと、BDレコーダーのみを備えるシャープの“AQUOS”シリーズが発売されている。筆者は各社の製品を操作してきたが、やはり録画時間を考えると使いやすいのはHDD搭載の3社だ。シャープのAQUOSは25GBと50GBのBD-REにしか記録できないので、多くの番組を録画したり、家族で使うのには向かない。しかしHDD搭載機なら長時間録画が可能なので、もっとも使いやすい。しかし、HDDに記録した番組を長期保存するための方式は各社ごとに違いがあった。長期保存とは、ハイビジョン画質のまま外部記録メディアへ保存することを意味する。各社の違いを下記にまとめた。
■東芝“REGZA”シリーズ ZX/ZH/Z8000シリーズ、R8000シリーズ
◆注意点:HDDに録画した番組は著作権保護機能によりテレビ本体を買替えると視聴できない。
◆BDへの記録:REGZAとのダビング機能を備えたRD-X8などHDD&DVDレコーダーと、i.Link搭載のパナソニックBDレコーダー“DIGA”を接続することでBD化に対応(ZX/ZH/Z8000シリーズのみ)。詳細は
過去記事を参照していただきたい。
■日立“Wooo”シリーズ UT800シリーズなどiVポケット搭載機
◆メリット:着脱式のポータブルHDD「iVDR」に対応。iVDRに記録した番組はテレビを買い替えても視聴できる。
◆注意点:「iVDR」の価格がBDメディア等に比べて割高。
◆BDへの記録:i.Link端子を搭載する“Wooo”シリーズの9000(HRタイプ)/10000(XR/HRタイプ)/01(XR/HRタイプ)、HR100CS/8000(HRタイプ)の各モデルと、日立のBDレコーダー「DV-BH250」をi.Linkでつなぎ、「WoooでLink」の機能によりテレビのHDDからBDへのムーブ保存が可能。
■パナソニック“VIERA”シリーズ Rシリーズ、PZR900シリーズ
◆メリット:テレビから同社のBDレコーダー“DIGA”(対応機のみ)に直接ダビングが可能。
◆注意点:テレビ本体のHDD容量が限られるので、東芝、日立に比べると単体での録画ライブラリー作成に制限がある。
◆BDへの記録:対応する同社のDIGAシリーズを接続することでカンタンにVIERAからDIGAに録画番組をダビングできる。
テレビ単体で長時間録画をするならREGZAとWoooが選択肢になる。中でも安価なパソコン用の外付けUSB HDDやネットワークHDDに番組が保存できるREGZAの使い勝手は抜きんでている。HDDを内蔵する“ZHシリーズ”を選べば、録画番組を内蔵HDDと外付けHDDに振り分けて録画したり、相互で自在にダビングが可能だ。例えば外付けHDDを家族の人数分用意して、「お父さん用」、「子供用」など振り分けて保存できる。ただし著作権保護機能により、テレビを買替えたらHDDに記録した番組は再生できない。
レコーダー搭載テレビとしてバランスが良いのはパナソニックのVIERAシリーズだ。HDDの増設はできないが、別途同社のBDレコーダーDIGAを購入することで、レコーダーテレビに録画した内容をカンタンにBDレコーダーに転送し、BD記録ができる。VIERAシリーズを購入するならダビングに対応するDIGAとセットで購入するのがおすすめだ。
これまで、レコーダーテレビは「HDD搭載」、「BD搭載」のどちらかしか選べず、常に長短を考えながら機種比較をしなければならなかった。それは各社が「レコーダーテレビに録画した番組は見たら消すもの、保存したいなら別途レコーダーを買ってほしい」という概念を押しつけていたように思う。
録画機の主な用途は見たら消す「消費型」がほとんどだ。筆者はBDやDVDなどの光ディスクで保存しているのは、WOWOWやスカパー!などの有料放送のコンテンツで、地上波の番組はほとんど視聴後に消去している。しかし、ごく希にどうしても手元に残しておきたい番組が出てきてしまうものだ。そのため全ての録画機は手間や出費がかかっても、必要なコンテンツを長期保存できる「非常口」が必要だと思っている。
このような状況でついに登場したのが三菱電機のHDD&BD搭載レコーダーテレビ“REAL BHRシリーズ”「LCD-37BHR300」、「LCD-32BHR300」だ。まさに1台で録画から保存まで簡潔する“全部入り”のレコーダーテレビだ。詳細にスペックについては
こちらの記事を参考にしていただきたい。
本機の特徴をザックリと説明するなら、これまでのレコーダーテレビは“テレビに録画機能を付けた”というコンセプトだったが、REAL BHRシリーズでは“BDレコーダーにテレビを付けた”ということになる。
一瞬、「カレーライスとライスカレーのように結局同じでは?」と思われるだろうが、実はまったく違う。メーカーは一般的にテレビ部門とレコーダー部門は別の部署が設計している。これまでのテレビはテレビの開発チームが主導権をとっており、各社工夫はしているものの、録画機能はレコーダーに比べると機能が省かれる傾向にある。しかし、REAL BHRシリーズを開発した三菱電機はテレビとレコーダーを同一の部門で開発しているので、レコーダー機能ありきで製品開発ができた。そのため、同社のBDレコーダーの機能を全て搭載し、録画だけでなく、視聴・保存に便利な機能を満載している。
REAL BHRシリーズの録画機能は先日紹介したBDレコーダーのDVR-BZ130と同等の機能を備えている。デジタル放送の2番組同時録画が可能なほか、DVR-BZ130は搭載していなかった「アクトビラ ビデオ・ダウンロード」にも対応している。
DVR-BZ130と同等のレコーダー機能なので、ユーザーの好みを解析して録画を行う「おすすめ自動録画」や、録画番組の視聴時には「オートカットi」によるCMスキップ再生、スポーツや音楽番組のハイライトを効率よく視聴できる「見どころ再生」なども利用できる。
本体のHDD容量は320GBと少ないが、フルハイビジョン画質を維持しながら長時間録画が可能なAVCRECに対応するので、最長160時間録画できる。録画番組は、AVCRECで録画した番組なら片面DVDに最大2時間10分記録できる。ダビング時にはCMを自動的にカットしてダビングできるのもうれしい。
REAL BHRシリーズが市場にあたえるインパクトは大きい。多くの機能だけでなく、価格も挑戦的だ。実売予想価格は37型で25万円前後、32型は20万円前後だ。エコポイントも使えるし、店によっては1〜2万円は下がるだろう。例えば32型なら20万円を切る価格で手に入る。例えば32型ならシャープのBD付液晶テレビLC-32DX2とかなり近い価格帯だ。機能を考えればREAL BHRシリーズの魅力も高い。
REAL BHRシリーズの登場は、これからの薄型テレビ市場の区分けを明確にしたと筆者は感じている。すなわち「超高画質モデル」、「レコーダーテレビ」、「低価格モデル」の3ラインだ。
超高画質モデルはホームシアターでの使用を目的とした最高画質のフラグシップモデル。低価格帯のモデルは大手スーパーなどでも売られている外国製品が中心となり、そしてメインストリームはレコーダーテレビになるはずだ。
レコーダーテレビはとにかく操作がカンタンだ。2011年のアナログ停波で、AV機器の操作が苦手な人の家にも薄型テレビやBDレコーダーが入ってゆく時代が来ている。そんな中、どんなにAV機器の操作を苦手とする人でも、番組表を開いて録画したい番組を選ぶだけで録画できる。「入力切替え」の操作がわからないユーザーでも迷わずに録画・再生ができるレコーダーテレビの存在価値は大きい。
メリットは他にもある。それは「配線」だ。レコーダーテレビならアンテナ線1本と電源を繋ぐだけで、テレビとレコーダーの両方が利用可能になる。AV機器が苦手な人に、これほどの福音は無いだろう。
REAL BHRシリーズはさらにBDなどの光ディスクへの保存までも簡略化した。この操作感はラジカセに似ている。世の中でAV機器の操作は苦手という人でもラジカセなら操作できるはずだ。もしAV機器の操作が苦手な両親や友人に薄型テレビの購入相談を受けたなら、REAL BHRシリーズを紹介するといいだろう。退屈なデジタル機器が増えるなか、久々に物欲を刺激する製品が登場した。
とはいえREAL BHRシリーズにも弱点があった。次回は各社のレコーダーテレビの操作性をまとめてチェックする。
(レポート/鈴木桂水)