≪炭山アキラのショウレポート≫ 真空管オーディオフェア&真空管アンプ・テクノフェア【スピーカー編】
10月8日、9日の2日間に渡り、秋葉原の町で「真空管オーディオフェア」「真空管アンプ・テクノフェア」の両イベントが開催されている。今回はオーディオ・評論家、炭山アキラ氏が双方のイベントで見つけた魅力的な製品の数々をレポートする。
■[Part.2] 魅力的なスピーカー製品群を紹介
真空管オーディオフェアとは銘打っているものの、真空管以外にも、そしてアンプ以外にも注目すべき製品は結構ある。
今回の取材で最も感激したのは、マクソニックのスピーカーだった。マクソニックといえば、ずいぶん前に消えていったメーカーというイメージしかなかったが、実は超ド級の励磁型スピーカーを開発し、試作までうまくいったところで社長が航空機事故で急死、撤退のやむなきに至ったという過去があるのだそうだ。このたびエス・アール・シー・シーがマクソニックのブランドを復活させ、幻の励磁型スピーカーを再開発したものだそうだ。元があったとはいっても開発は全く白紙からという状態に近く、1千万単位の費用を要しているのではないかという。
そのサウンドは、猛烈な静けさと立ち上がりの軽さ、そして大地に根を下ろしたような実体感をはっきりと聴き取ることができた。これはすごいスピーカーである。
主役が真空管アンプだからというわけではなかろうが、往年の名作スピーカーユニットを用いたスピーカーの展示が目立ったのも印象的だ。
山本音響工芸は以前からアルテックの38cm同軸型604のためのキャビネットを製作していたが、今回は平面バッフルを製作していた。同社ならではの美しい木材は、25mm厚のアサダ桜材である。ユニットの604-Aおよび同Bには同社の手で改造が施され、センターのセクトラルホーンは取り同社オリジナルの黒檀製円形ホーンに交換されている。音は604ならではの彫りの深さ、豪快さに平面バッフルの素直さが加わった、じっくりと聴いていたくなるようなものであった。
同じく往年のユニットというと、エイフルのブースでリファレンスとして用いられていたウエスタンの30cmフルレンジ728にも度肝を抜かれた。同社の300Bアンプで美空ひばりを聴かせてもらったのだが、何とも色っぽく艶めかしい歌唱が楽しめたのである。さすがに高域は早めに落ちており、トゥイーターを足せばいいのかとも思うのだが、この味わいはやはり“素”味わうべきものなのだろう。
一転、極めて現代的なサウンドを聴かせてくれたのは、コイズミ無線のALCOM-X55である。自作スピーカー専門店として創業55周年を迎えた同店が、カーオーディオでおなじみのアルパインとコラボレーションして生み出された完成品スピーカーである。素晴らしく伸びやかで、2ウェイにありがちな声の帯域のクロスオーバー歪みのようなものが感じられないと思ったら、何とクロスオーバー周波数は6kHz近辺と極めて高い。かといって分割振動の不自然さも感じさせないのだから、大したものだ。販売店のオリジナル製品だけに、あまり販路が広くないのは残念だが、機会があったら聴いておいて損はのない製品だ。
一方、ちょっと不思議なスピーカーを展示していたのは「重ねてつくる」バックロードホーン(以下BH)でおなじみのハセヒロである。一見すると単なる薄型キャビの密閉箱なのだが、新開発のキャビネット塗布材SSC(スーパー・サウンド・コーティング)を塗ることにより、板の響きが整って美しくなるので、その響きを生かすためにバッフルを大きくした設計なのだという。しかも、密閉箱ではなく、少しだけスリットをあけてやるのが高音質の秘訣なのだとか。面白い考え方のキャビネットである。
ハセヒロといえばBH、というわけでもないが、今回はBHの展示が多く見られたのが面白かった。まず、名古屋からやってきた浜風商店の「デコイ」がすごい。某オーディオ誌の自作SPコンテストで「村井裕弥賞」を獲得したこのキャビネットは、全体が曲面で構成された、文字通りの「デコイ型」である。まじまじと見れば見るほど、この“街の木工房”がどれほどの技術を持っているかが分かる、驚くべきキャビネットだ。もう一つの10cmBH「タイプJS-II」も、素晴らしくシュアーな音が楽しめた。
もう一つは、北海道は室蘭からやってきたM・J・Qオーディオ。懐かしいローサーの20cmフルレンジPM-6Aで非常に手堅いBHを製作している。いささか懐かしめの音ではあるが、力強く、しかし繊細で、ハイスピードだが結構な厚みも感じさせるという、BHのおいしいところが詰まったようなサウンドを味わわせてくれた。
(オーディオ評論家・炭山アキラ)
■[Part.2] 魅力的なスピーカー製品群を紹介
真空管オーディオフェアとは銘打っているものの、真空管以外にも、そしてアンプ以外にも注目すべき製品は結構ある。
今回の取材で最も感激したのは、マクソニックのスピーカーだった。マクソニックといえば、ずいぶん前に消えていったメーカーというイメージしかなかったが、実は超ド級の励磁型スピーカーを開発し、試作までうまくいったところで社長が航空機事故で急死、撤退のやむなきに至ったという過去があるのだそうだ。このたびエス・アール・シー・シーがマクソニックのブランドを復活させ、幻の励磁型スピーカーを再開発したものだそうだ。元があったとはいっても開発は全く白紙からという状態に近く、1千万単位の費用を要しているのではないかという。
そのサウンドは、猛烈な静けさと立ち上がりの軽さ、そして大地に根を下ろしたような実体感をはっきりと聴き取ることができた。これはすごいスピーカーである。
主役が真空管アンプだからというわけではなかろうが、往年の名作スピーカーユニットを用いたスピーカーの展示が目立ったのも印象的だ。
山本音響工芸は以前からアルテックの38cm同軸型604のためのキャビネットを製作していたが、今回は平面バッフルを製作していた。同社ならではの美しい木材は、25mm厚のアサダ桜材である。ユニットの604-Aおよび同Bには同社の手で改造が施され、センターのセクトラルホーンは取り同社オリジナルの黒檀製円形ホーンに交換されている。音は604ならではの彫りの深さ、豪快さに平面バッフルの素直さが加わった、じっくりと聴いていたくなるようなものであった。
同じく往年のユニットというと、エイフルのブースでリファレンスとして用いられていたウエスタンの30cmフルレンジ728にも度肝を抜かれた。同社の300Bアンプで美空ひばりを聴かせてもらったのだが、何とも色っぽく艶めかしい歌唱が楽しめたのである。さすがに高域は早めに落ちており、トゥイーターを足せばいいのかとも思うのだが、この味わいはやはり“素”味わうべきものなのだろう。
一転、極めて現代的なサウンドを聴かせてくれたのは、コイズミ無線のALCOM-X55である。自作スピーカー専門店として創業55周年を迎えた同店が、カーオーディオでおなじみのアルパインとコラボレーションして生み出された完成品スピーカーである。素晴らしく伸びやかで、2ウェイにありがちな声の帯域のクロスオーバー歪みのようなものが感じられないと思ったら、何とクロスオーバー周波数は6kHz近辺と極めて高い。かといって分割振動の不自然さも感じさせないのだから、大したものだ。販売店のオリジナル製品だけに、あまり販路が広くないのは残念だが、機会があったら聴いておいて損はのない製品だ。
一方、ちょっと不思議なスピーカーを展示していたのは「重ねてつくる」バックロードホーン(以下BH)でおなじみのハセヒロである。一見すると単なる薄型キャビの密閉箱なのだが、新開発のキャビネット塗布材SSC(スーパー・サウンド・コーティング)を塗ることにより、板の響きが整って美しくなるので、その響きを生かすためにバッフルを大きくした設計なのだという。しかも、密閉箱ではなく、少しだけスリットをあけてやるのが高音質の秘訣なのだとか。面白い考え方のキャビネットである。
ハセヒロといえばBH、というわけでもないが、今回はBHの展示が多く見られたのが面白かった。まず、名古屋からやってきた浜風商店の「デコイ」がすごい。某オーディオ誌の自作SPコンテストで「村井裕弥賞」を獲得したこのキャビネットは、全体が曲面で構成された、文字通りの「デコイ型」である。まじまじと見れば見るほど、この“街の木工房”がどれほどの技術を持っているかが分かる、驚くべきキャビネットだ。もう一つの10cmBH「タイプJS-II」も、素晴らしくシュアーな音が楽しめた。
もう一つは、北海道は室蘭からやってきたM・J・Qオーディオ。懐かしいローサーの20cmフルレンジPM-6Aで非常に手堅いBHを製作している。いささか懐かしめの音ではあるが、力強く、しかし繊細で、ハイスピードだが結構な厚みも感じさせるという、BHのおいしいところが詰まったようなサウンドを味わわせてくれた。
(オーディオ評論家・炭山アキラ)
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