9月27、28日開催
ライブとオーディオ再生が一度に楽しめる「PureLIVE」開催!TADラボエンジニア&Suaraさんインタビュー
アナログやハイレゾ録音を採用した高音質で親しみやすいジャズアレンジアルバムとして製作されたハイブリッドSACD『Pure2~Ultimate Cool Japan Jazz~』(以下、『Pure2』)の発売を記念したライブイベント、『Pure LIVE~Legend Of Pure Sound~』(以下、『PureLIVE』)が9月27、28日に開催される(関連ニュース)。
本イベントはタイトルの通り、『Pure2』の楽曲を主体に構成された、レコーディングメンバーによるライブパートと、「テクニカルオーディオデバイセズラボラトリーズ(以下、TADL)」の協力によって実現した、ハイエンドなオーディオシステムによる“ピュアサウンド”が楽しめるパートから成っている。
ライブ会場は渋谷・道玄坂にある「Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」(1&2階・計318席)となっており、この春Suaraさんのアコースティックライブが催された会場でもある。『Pure2』を聴かれた方であれば、ライブパートはアルバムの持っているサウンドの鮮度の良さ、ミュージシャンの卓越した演奏力の素晴らしさがそのまま反映されるであろうことは容易に想像がつくのではないか。
しかし、「TAD」のフルラインアップが揃うピュアサウンドセッションにおいては、特にPhile-web読者にとって、どういう内容になるのか気になるところではないだろうか。実際、通常のライブ会場へ「TAD」のようなコンシューマーなオーディオセットを運び入れて鳴らすというイベントは前代未聞であり、実現に当たっては数カ月に渡って各方面で調整・交渉を行ってきている。
今まさにライブへの準備が着々と進んでいるが、この度「TADL」の取締役・技術担当の川村克明さんとエクスパートエンジニアの沼崎裕光さんへのインタビューを敢行、ピュアサウンドセッションにおける心境を伺うことができた。さらにこの秋5枚目のオリジナルアルバム『花凛(かりん)』をリリース予定のSuaraさんからも『PureLIVE』への意気込みを語っていただいた。
■『PureLIVE』に「TAD」が参加した経緯とは
そもそも『PureLIVE』になぜ「TAD」システムが採用されることになったのか、そのあらましからご説明しよう。
『Pure2』の制作中、一般家庭を想定してSACDを聴くことができる手軽なオーディオ機器をスタジオに用意することになったのだが、国内外のブランドの中でまとまりの良い手頃な高音質システムとしてパイオニアの「PDX-Z10」と「S-81B」が選ばれた(本システムの組み合わせはライブ会場のロビーでデモ展示も行う予定である)。ミックスダウンの工程で下川直哉エグゼクティブ・プロデューサーが主にそのサウンドに耳を傾けていたが、下川さんを含め、製作スタッフが歴史のあるスタジオモニターとして慣れ親しんだ「TAD」のサウンドの片鱗をこのシステムに対して見出していたこともあり、後日「パイオニア」を通じて「TADL」とコンタクトを取り、フラグシップスピーカーである「TAD Reference One」を試聴するに至った。
「F.I.X.RECORDS」サイドは、究極のピュアオーディオである「Reference One」のサウンドに感銘を受け、『Pure2』を楽しまれているリスナーの皆さんにもその感動を聴いてほしいという、一つの想いを持ったそうである。すでにアルバム制作の段階で『PureLIVE』の構想はおぼろげながら誕生していたが、下川さんの閃きでライブパートに「Reference One」を中心に据えたピュアサウンドパートを加えてみてはどうだろうというアイデアがこのときに生まれたのである。「TADL」の商品開発におけるチャレンジの姿勢にも「F.I.X.RECORDS」が共感していたこともあり、『PureLIVE』への参加を正式に要請したところ、「TADL」社内での協議・検討の末、協力いただけることになった。
しかし、ここまでの道のりは『Pure2』の制作と同様、簡単なものではなかった。「TADL」の川村さんは『PureLIVE』への打診を受けた時の心境を次のように語ってくださった。
「正直なところ、我々のシステムをどのようにイベントの中で活用いただけるのか、お話をいただいた時は真意がつかめなかったのですが、初めての試みですし社内でもイベント参加に対しては賛否両論でした。しかしながらこれまでTADLを知らなかった皆さんにも国内ブランドでこれだけのハイエンドなシステムを提供できるところがあるのだとアピールすることができる貴重な場であることには変わりません。今後のフィードバックを含めて、皆さんと一緒にその場を楽しめればという気持ちでいます。音楽を軸に色々な違う世界と融合させるのは良いことですよね。とにかくやってみようというチャレンジ精神が正直な心境です。本当にフィックスさんはすごいことを思いつくなと」
また川村さんは参加することへの決定打ともなった『Pure2』のサウンドについて「実際に聴かせていただいて我々と共通の音に対する真摯な姿勢を感じることができました。これはきっと我々が普段付き合っている人たちにも共通するサウンドの良さを持っている、日本の現場でもやっとここまでのものができるようになったかと感心しましたよ」と振り返る。
これには沼崎さんも同意され「内容的に十分我々のハードウェアと親和性がある」と続けた。
「イベントでは家で聴くシステムと違って、ライブ会場では機器から再生した音楽がこれだけ鳴るんだという差を実感してもらいたいですね。我々としてはTAD製品を買ってもらうのが最終目的ですが、そうした垣根を乗り越えて聴いてもらえることだけでも身のあることなのではないかと思っています」
ライブパートでは会場に設置されているPA用スピーカーを用いるので「TAD」システムはマスター音源やSACD再生のみとなるが、もともと「TAD」ではPA用スピーカー開発やレコーディングスタジオのモニターも開発しており、業務機ブランドとしても名が通っている。今回イベントで使用するコンシューマー製品である“Referenceシリーズ”とプロ機開発の点で違うことはどういったところにあるのだろうか。
「我々は昔からプロオーディオをやっていますが、逆にコンシューマー向けとは設計コンセプトがまったく違うのです。コンシューマーは狭いリスニング空間の中でいかにソースに忠実な音を再現できるか、指向性を含めて自然さを追求します。いわゆる点音源で音を拡散させるような方向性です。しかしプロ用ユニットはいかに限られた範囲のお客さんに向けてエネルギーを集中して届けるかというポイントに特化させています。そのためスピーカーも特定エリアにダイレクトに音が到達するよう、指向性が鋭いホーンタイプが多いわけですね。アンプに対してもコンシューマー用は忠実度を追求するためには色々惜しみませんが、プロ用アンプは耐久度に重きを置き、何をやっても壊れないようにしている。ただ、スピーカーユニットそのものの設計に関しては同じスタッフが担当していまして、本当に基本に忠実なことだけが成功に導くという共通のポリシーを持って開発に臨んでいます」と川村さん。立つ舞台は違えど、同じ「TAD」というブランドの中でテクノロジーとポリシーの継承が連綿と受け継がれ、繋がっているというわけだ。
「Reference Oneは当然家庭環境で理想となるように作っています。しかしこういうライブ会場でどういうパワー、表現ができるのかを実際に聴いてほしいですね」
最後に、「TADL」のお二人からピュアサウンドセッションに向けての抱負を伺った。
川村さん:家庭用のオーディオ機器と生演奏を楽しめるライブという世界とは今まで別物という考え方がありました。しかし同じ音楽を愛する人間として、『Pure2』という共通のコアを通し同じ時間を共有すること、さらに同じ会場で違う機器を使って音を出してみるという意義。基本的にライブ会場と家庭では試聴環境が違いますが、これがお互いにプラスになりながら、家庭のオーディオで聴いて良かった、もう一回ライブに行って良かった、それでまたCDを買って家で楽しむというサイクルがそこにあってほしい。同じ音楽を違った環境でお客様が共有する、ライブだけで満足するのではなく、家庭でも満足できるよう、一つの手段のきっかけになればと思います。これを機会にイヤホンやヘッドホンだけでなく、家庭でもスピーカー再生によって色々な音楽を楽しんでもらいたいですね。
沼崎さん:今回の取り組みによって、いろんな音楽をクオリティの高い装置で楽しんでもらえるようなきっかけになればいいなと思っています。今すぐにiPodからの移行はないにしても、改めてオーディオに興味を持ってもらったときに「TAD」の存在を思い出してもらいたいですし、認識してもらえるための場としたいですね。人類の癒しとしてこれまで培ってきたオーディオの文化を手放してはいけないと思っていますし、これからも守らなくてはならないと考えています。
本イベントはタイトルの通り、『Pure2』の楽曲を主体に構成された、レコーディングメンバーによるライブパートと、「テクニカルオーディオデバイセズラボラトリーズ(以下、TADL)」の協力によって実現した、ハイエンドなオーディオシステムによる“ピュアサウンド”が楽しめるパートから成っている。
ライブ会場は渋谷・道玄坂にある「Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE」(1&2階・計318席)となっており、この春Suaraさんのアコースティックライブが催された会場でもある。『Pure2』を聴かれた方であれば、ライブパートはアルバムの持っているサウンドの鮮度の良さ、ミュージシャンの卓越した演奏力の素晴らしさがそのまま反映されるであろうことは容易に想像がつくのではないか。
しかし、「TAD」のフルラインアップが揃うピュアサウンドセッションにおいては、特にPhile-web読者にとって、どういう内容になるのか気になるところではないだろうか。実際、通常のライブ会場へ「TAD」のようなコンシューマーなオーディオセットを運び入れて鳴らすというイベントは前代未聞であり、実現に当たっては数カ月に渡って各方面で調整・交渉を行ってきている。
今まさにライブへの準備が着々と進んでいるが、この度「TADL」の取締役・技術担当の川村克明さんとエクスパートエンジニアの沼崎裕光さんへのインタビューを敢行、ピュアサウンドセッションにおける心境を伺うことができた。さらにこの秋5枚目のオリジナルアルバム『花凛(かりん)』をリリース予定のSuaraさんからも『PureLIVE』への意気込みを語っていただいた。
■『PureLIVE』に「TAD」が参加した経緯とは
そもそも『PureLIVE』になぜ「TAD」システムが採用されることになったのか、そのあらましからご説明しよう。
『Pure2』の制作中、一般家庭を想定してSACDを聴くことができる手軽なオーディオ機器をスタジオに用意することになったのだが、国内外のブランドの中でまとまりの良い手頃な高音質システムとしてパイオニアの「PDX-Z10」と「S-81B」が選ばれた(本システムの組み合わせはライブ会場のロビーでデモ展示も行う予定である)。ミックスダウンの工程で下川直哉エグゼクティブ・プロデューサーが主にそのサウンドに耳を傾けていたが、下川さんを含め、製作スタッフが歴史のあるスタジオモニターとして慣れ親しんだ「TAD」のサウンドの片鱗をこのシステムに対して見出していたこともあり、後日「パイオニア」を通じて「TADL」とコンタクトを取り、フラグシップスピーカーである「TAD Reference One」を試聴するに至った。
「F.I.X.RECORDS」サイドは、究極のピュアオーディオである「Reference One」のサウンドに感銘を受け、『Pure2』を楽しまれているリスナーの皆さんにもその感動を聴いてほしいという、一つの想いを持ったそうである。すでにアルバム制作の段階で『PureLIVE』の構想はおぼろげながら誕生していたが、下川さんの閃きでライブパートに「Reference One」を中心に据えたピュアサウンドパートを加えてみてはどうだろうというアイデアがこのときに生まれたのである。「TADL」の商品開発におけるチャレンジの姿勢にも「F.I.X.RECORDS」が共感していたこともあり、『PureLIVE』への参加を正式に要請したところ、「TADL」社内での協議・検討の末、協力いただけることになった。
しかし、ここまでの道のりは『Pure2』の制作と同様、簡単なものではなかった。「TADL」の川村さんは『PureLIVE』への打診を受けた時の心境を次のように語ってくださった。
「正直なところ、我々のシステムをどのようにイベントの中で活用いただけるのか、お話をいただいた時は真意がつかめなかったのですが、初めての試みですし社内でもイベント参加に対しては賛否両論でした。しかしながらこれまでTADLを知らなかった皆さんにも国内ブランドでこれだけのハイエンドなシステムを提供できるところがあるのだとアピールすることができる貴重な場であることには変わりません。今後のフィードバックを含めて、皆さんと一緒にその場を楽しめればという気持ちでいます。音楽を軸に色々な違う世界と融合させるのは良いことですよね。とにかくやってみようというチャレンジ精神が正直な心境です。本当にフィックスさんはすごいことを思いつくなと」
また川村さんは参加することへの決定打ともなった『Pure2』のサウンドについて「実際に聴かせていただいて我々と共通の音に対する真摯な姿勢を感じることができました。これはきっと我々が普段付き合っている人たちにも共通するサウンドの良さを持っている、日本の現場でもやっとここまでのものができるようになったかと感心しましたよ」と振り返る。
これには沼崎さんも同意され「内容的に十分我々のハードウェアと親和性がある」と続けた。
「イベントでは家で聴くシステムと違って、ライブ会場では機器から再生した音楽がこれだけ鳴るんだという差を実感してもらいたいですね。我々としてはTAD製品を買ってもらうのが最終目的ですが、そうした垣根を乗り越えて聴いてもらえることだけでも身のあることなのではないかと思っています」
ライブパートでは会場に設置されているPA用スピーカーを用いるので「TAD」システムはマスター音源やSACD再生のみとなるが、もともと「TAD」ではPA用スピーカー開発やレコーディングスタジオのモニターも開発しており、業務機ブランドとしても名が通っている。今回イベントで使用するコンシューマー製品である“Referenceシリーズ”とプロ機開発の点で違うことはどういったところにあるのだろうか。
「我々は昔からプロオーディオをやっていますが、逆にコンシューマー向けとは設計コンセプトがまったく違うのです。コンシューマーは狭いリスニング空間の中でいかにソースに忠実な音を再現できるか、指向性を含めて自然さを追求します。いわゆる点音源で音を拡散させるような方向性です。しかしプロ用ユニットはいかに限られた範囲のお客さんに向けてエネルギーを集中して届けるかというポイントに特化させています。そのためスピーカーも特定エリアにダイレクトに音が到達するよう、指向性が鋭いホーンタイプが多いわけですね。アンプに対してもコンシューマー用は忠実度を追求するためには色々惜しみませんが、プロ用アンプは耐久度に重きを置き、何をやっても壊れないようにしている。ただ、スピーカーユニットそのものの設計に関しては同じスタッフが担当していまして、本当に基本に忠実なことだけが成功に導くという共通のポリシーを持って開発に臨んでいます」と川村さん。立つ舞台は違えど、同じ「TAD」というブランドの中でテクノロジーとポリシーの継承が連綿と受け継がれ、繋がっているというわけだ。
「Reference Oneは当然家庭環境で理想となるように作っています。しかしこういうライブ会場でどういうパワー、表現ができるのかを実際に聴いてほしいですね」
最後に、「TADL」のお二人からピュアサウンドセッションに向けての抱負を伺った。
川村さん:家庭用のオーディオ機器と生演奏を楽しめるライブという世界とは今まで別物という考え方がありました。しかし同じ音楽を愛する人間として、『Pure2』という共通のコアを通し同じ時間を共有すること、さらに同じ会場で違う機器を使って音を出してみるという意義。基本的にライブ会場と家庭では試聴環境が違いますが、これがお互いにプラスになりながら、家庭のオーディオで聴いて良かった、もう一回ライブに行って良かった、それでまたCDを買って家で楽しむというサイクルがそこにあってほしい。同じ音楽を違った環境でお客様が共有する、ライブだけで満足するのではなく、家庭でも満足できるよう、一つの手段のきっかけになればと思います。これを機会にイヤホンやヘッドホンだけでなく、家庭でもスピーカー再生によって色々な音楽を楽しんでもらいたいですね。
沼崎さん:今回の取り組みによって、いろんな音楽をクオリティの高い装置で楽しんでもらえるようなきっかけになればいいなと思っています。今すぐにiPodからの移行はないにしても、改めてオーディオに興味を持ってもらったときに「TAD」の存在を思い出してもらいたいですし、認識してもらえるための場としたいですね。人類の癒しとしてこれまで培ってきたオーディオの文化を手放してはいけないと思っていますし、これからも守らなくてはならないと考えています。
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