癒しの声を持つ類まれなメロディメーカー
NHK『みんなのうた』で注目のシンガーソングライター“彩”インタビュー。無料ハイレゾも配信中
NHK『みんなのうた』の「七つの海」でデビュー、類まれな美しいメロディを作るシンガー・ソングライター“彩(あや)”のファーストアルバム『First Color』が2017年1月11日より発売されている。
この春、本アルバムに収録された「桜雪」「春の幻」「月夜の蝶々」のハイレゾデータが無料配信されていることを受け、彩さんご本人に直接お会いする機会を得たので、その様子をレポートしたい。
◆ ◆ ◆
ーー 彩さんの音楽は、まず声が素敵で、それを乗せるメロディラインがとても印象に残る音楽ですね。
彩 ありがとうございます。私の声は、ソロで歌うようになったここ5年の間に試行錯誤してきて、ようやく辿りついた発声なんです。学校でコーラスをしてきた経験があるので、ドレミファ以外はファルセットになってしまったり、音符の最後まで伸ばして歌うクセがあって、プロデューサーの西本憲吾さんに、伸ばさないで、語りかけて伝えるように、と提案されて、地声とファルセットの絶妙な混ざり具合を編み出しました。
ーー その混ざり具合がいいですね。ライブとレコーディングでは声を使い分けていますか。
彩 えぇ、使い分けています。録音の時は、ヘッドホンを半分つけた状態で生の声とリバーブ、どちらも聴いて歌った方がきれいにできるな、とか考えながら歌います。ピアノの高音も、自分が気持ちいい音になるかが大事です。鍵盤に指を落とす時、音がふわっとする力加減があって、自分の声と気持ちよく混ぜられるかが変わってきます。それが空気感につながっているのかも……。そういう音を西本さんが録ってくれています。
ーー 彩さんは類まれなメロディメーカーだと思いますが、メロディは自然と湧いてくるのですか。
彩 ありがとうございます。降ってくる時もあれば捻り出す時もあります(笑)。ミュージカルの舞台で歌っているつもりになって書く時もあります。メロディの魅力を大切にしていますので、そこは絶対に妥協しないようにしています。
ーー 例えば、ピアノと歌から始まって、次第にストリングスなども入ってきたりと、展開がダイナミックですね。女の子の心の歌かと思いきや、母なる大地にスケールアップしているといいますか(笑)。そもそも音楽との出会いはどんな風だったのでしょう。
彩 コーラスをやってきたこともあって、本当はミュージカル俳優になりたかったんです。でも途中である病気になってしまって、踊りができなくなってしまいました。それでもミュージカルに関わりたくて、作曲ならやってきているから作曲をしよう、と。時々、世界観が大きいねと言っていただくことがありますが、それは私の原点がミュージカルだったからかもしれません。音大に入ってからは、ミュージカルに携わる夢が映画音楽に代わっていき、渡辺俊幸先生についてオーケストレーションなどを勉強して、その先に歌ものを書く流れになっていきました。
ーー なるほど、スケールの大きさに納得しました。ところで、「七つの海」がNHKの『みんなのうた』で取り上げられたことが彩さんのひとつのブレイクスルーでしたが、この曲の生まれたいきさつを語っていただけませんか。
彩 「七つの海」にはそもそも西本さんと話しているなかで、見えてきたテーマがありました。それは、いろいろと生きづらくなってきている世の中で、特に若者の、先が見えない不安、というようなものです。そっと背中を押してあげたいという思いがありました。そこで、世界中の大きな海をテーマに書いてみました。怖くて一歩を踏み出す勇気が持てないのを、海へ踏み出す気持ちで踏み出そう、と。その先には大きな世界が待っていて、歌詞の最後のように「君だけの海」が待っているはずだと。
ーー ファンタジーの世界と思っておりましたが、社会派というか、つらい人に寄り添う視点をお持ちなんですね。「それだけでいいよ」は恋の歌ですか?
彩 すれ違っている夫婦を描いた曲ですね、と言っていただいたり、解釈はリスナーの皆さんに託していますけれども、「それだけでいいよ」のきっかけは、実は3・11の震災だったんです。音楽をやっていていいのだろうかと自問自答していた時期に、私の持つ力、いまできることは、近くの人達に向けて歌を歌うことなんじゃないか、と気づけたんです。私達のそばにも大切な人はいる。それなのに普段そういうことを忘れて、文句ばかり言ってしまう毎日。でもそんな日々が、実はすごくありがたい、それは後で気づくんだよなと。ただ、こんなきっかけだけど、気づけたということは幸せなことだから。それでそばにいてくれるだけでいいよという歌に結び着いていきました。大っぴらにその話を言うつもりはありませんが、巡り巡って被災地の方に聴いてもらって、この曲で癒されてもらえたら、という願いを込めています。
―― それにも通じるのでしょうが、歌を作り続ける理由は何でしょう。
彩 曲作りは7歳の頃からやってきて、私にとって写真を撮るようなものです。一瞬逃せばあっという間に消えていってしまう記憶や、感じた気持ち。そういったものをちゃんと拾っておきたい。それが、歌を作る理由です。これから人生のステップを踏んでいく中で、これまで見えてこなかった景色がいっぱいあると思います。そうしたものも音楽にしていきたいなと思います。
彩『First Color』
DQC-1553 ¥2,500(税別)
2017.1.11 Release
VIVID Productions www.vvd.jp
NHK みんなのうた「七つの海」
NHK 中井精也のてつたび!「Happy Train」「わすれもの」収録
初回プレス限定「七つの海」DVDつき
(インタビュー:季刊オーディオアクセサリー編集部)
この春、本アルバムに収録された「桜雪」「春の幻」「月夜の蝶々」のハイレゾデータが無料配信されていることを受け、彩さんご本人に直接お会いする機会を得たので、その様子をレポートしたい。
ーー 彩さんの音楽は、まず声が素敵で、それを乗せるメロディラインがとても印象に残る音楽ですね。
彩 ありがとうございます。私の声は、ソロで歌うようになったここ5年の間に試行錯誤してきて、ようやく辿りついた発声なんです。学校でコーラスをしてきた経験があるので、ドレミファ以外はファルセットになってしまったり、音符の最後まで伸ばして歌うクセがあって、プロデューサーの西本憲吾さんに、伸ばさないで、語りかけて伝えるように、と提案されて、地声とファルセットの絶妙な混ざり具合を編み出しました。
ーー その混ざり具合がいいですね。ライブとレコーディングでは声を使い分けていますか。
彩 えぇ、使い分けています。録音の時は、ヘッドホンを半分つけた状態で生の声とリバーブ、どちらも聴いて歌った方がきれいにできるな、とか考えながら歌います。ピアノの高音も、自分が気持ちいい音になるかが大事です。鍵盤に指を落とす時、音がふわっとする力加減があって、自分の声と気持ちよく混ぜられるかが変わってきます。それが空気感につながっているのかも……。そういう音を西本さんが録ってくれています。
ーー 彩さんは類まれなメロディメーカーだと思いますが、メロディは自然と湧いてくるのですか。
彩 ありがとうございます。降ってくる時もあれば捻り出す時もあります(笑)。ミュージカルの舞台で歌っているつもりになって書く時もあります。メロディの魅力を大切にしていますので、そこは絶対に妥協しないようにしています。
ーー 例えば、ピアノと歌から始まって、次第にストリングスなども入ってきたりと、展開がダイナミックですね。女の子の心の歌かと思いきや、母なる大地にスケールアップしているといいますか(笑)。そもそも音楽との出会いはどんな風だったのでしょう。
彩 コーラスをやってきたこともあって、本当はミュージカル俳優になりたかったんです。でも途中である病気になってしまって、踊りができなくなってしまいました。それでもミュージカルに関わりたくて、作曲ならやってきているから作曲をしよう、と。時々、世界観が大きいねと言っていただくことがありますが、それは私の原点がミュージカルだったからかもしれません。音大に入ってからは、ミュージカルに携わる夢が映画音楽に代わっていき、渡辺俊幸先生についてオーケストレーションなどを勉強して、その先に歌ものを書く流れになっていきました。
ーー なるほど、スケールの大きさに納得しました。ところで、「七つの海」がNHKの『みんなのうた』で取り上げられたことが彩さんのひとつのブレイクスルーでしたが、この曲の生まれたいきさつを語っていただけませんか。
彩 「七つの海」にはそもそも西本さんと話しているなかで、見えてきたテーマがありました。それは、いろいろと生きづらくなってきている世の中で、特に若者の、先が見えない不安、というようなものです。そっと背中を押してあげたいという思いがありました。そこで、世界中の大きな海をテーマに書いてみました。怖くて一歩を踏み出す勇気が持てないのを、海へ踏み出す気持ちで踏み出そう、と。その先には大きな世界が待っていて、歌詞の最後のように「君だけの海」が待っているはずだと。
ーー ファンタジーの世界と思っておりましたが、社会派というか、つらい人に寄り添う視点をお持ちなんですね。「それだけでいいよ」は恋の歌ですか?
彩 すれ違っている夫婦を描いた曲ですね、と言っていただいたり、解釈はリスナーの皆さんに託していますけれども、「それだけでいいよ」のきっかけは、実は3・11の震災だったんです。音楽をやっていていいのだろうかと自問自答していた時期に、私の持つ力、いまできることは、近くの人達に向けて歌を歌うことなんじゃないか、と気づけたんです。私達のそばにも大切な人はいる。それなのに普段そういうことを忘れて、文句ばかり言ってしまう毎日。でもそんな日々が、実はすごくありがたい、それは後で気づくんだよなと。ただ、こんなきっかけだけど、気づけたということは幸せなことだから。それでそばにいてくれるだけでいいよという歌に結び着いていきました。大っぴらにその話を言うつもりはありませんが、巡り巡って被災地の方に聴いてもらって、この曲で癒されてもらえたら、という願いを込めています。
―― それにも通じるのでしょうが、歌を作り続ける理由は何でしょう。
彩 曲作りは7歳の頃からやってきて、私にとって写真を撮るようなものです。一瞬逃せばあっという間に消えていってしまう記憶や、感じた気持ち。そういったものをちゃんと拾っておきたい。それが、歌を作る理由です。これから人生のステップを踏んでいく中で、これまで見えてこなかった景色がいっぱいあると思います。そうしたものも音楽にしていきたいなと思います。
彩『First Color』
DQC-1553 ¥2,500(税別)
2017.1.11 Release
VIVID Productions www.vvd.jp
NHK みんなのうた「七つの海」
NHK 中井精也のてつたび!「Happy Train」「わすれもの」収録
初回プレス限定「七つの海」DVDつき
(インタビュー:季刊オーディオアクセサリー編集部)
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