北米市場の最注目オーディオショウ
【レポート後編】AXPONAで見た、北米のPC/ネットワークオーディオ最新動向
■ついに来たハイレートDSDの波
数年前、DSD256対応といってもほとんど海外ブランドはピンとこなかったようだが、今年のAXPONAでは様々な場所で「Quad DSD」(口語では256は言いにくいためこのように呼ばれることもある)についての会話を耳にした。ショウで直接ユーザーから声が多く上がることで、海外ブランドも本格的にDSD256対応に本腰を入れ始めるかもしれない。
■対応製品が続々登場するMQA。その評価は?
MQAがいかなるフォーマットであるか、その価値はどこにあるのか、ということは海外でも当然話題や議論になっている。AXPONAではMQA対応製品の展示も徐々に増えてきていた印象だ。セミナーでは媒体関係者から、現状のMQAの立ち位置はmp3の上位フォーマットとして理解すべきであり、これまでmp3を使っていた人々がMQAを使うことで結果的に良い音に触れる機会が増えることを歓迎したいという趣旨の発言があったが、これが素直な理解だろう。
特にMQA対応をアピールしていたのがMYTEKだ。CEOのミカエル氏に意図を尋ねたところ、オーディオ機器を販売するメーカーはフォーマットの良し悪しについての議論には深入りすべきではなく、あらゆるフォーマットに対応すること、そのフォーマットの真価を発揮させることに注力することが本分という考えのようだ。
MQAはボブ・スチュアート氏が語るように、本来携帯など帯域幅の限られた状況下で最良の音質を実現するためのフォーマットであるから、ストリーミング再生と何かしらの方法で連携することを想定するようであれば、今後MQAに対応する製品が増えていくことだろう。
■その他注目の新製品
ここまで紹介してきた製品以外にも、AXPONAには注目すべき製品が多数出展されていた。その一部を紹介しておこう。
CH Precisionのブースには、「I1 Universal Integrated Amplifier」と「T1 Time Reference」が出展された。前者は2017年7月、後者は同年6月発売予定。最近は特にヨーロッパ市場からインテグレーテッドアンプの強い需要があるそうで、各社が高級インテグレーテッドアンプの開発を行っているのが見てとれた。
GOLDMUNDのスピーカー「Logos Sukha」は、今月発売されたばかりの商品だ。Epilogue 1+2を彷彿とさせるサイズ感で、日本市場にはこのくらいが適切ではないかと思う。
Voxativの「Zeth with Z-Bass」スピーカーシステム。サブウーファーとのセット商品とすることで、キャビネットの小型化に成功したとのこと。
◇
これまで日本の媒体があまり取り上げてこなかったAXPONAだが、いかがだっただろうか。昨年は各社の新製品展示が相次いでいたが、今回は残念ながら日本の市場でも注目を浴びそうな新製品発表は少なかったかもしれない。筆者がやや気になったのは、特にデジタル系において、特定ブランドの製品が本当に多くのブースで展示されていた点だ。確かに皆優れた製品なので、多くの顧客を獲得するのも当然なのだが、この一極集中の状況が吉と出るのか凶と出るのかは、今しばらく判断に時間を要するだろう。
とはいえ、アメリカの新しいオーディオショウのあり方という意味でも大変刺激的なイベントであり、結果的に今年のAXPONAも出展社・ブース数・参加者ともに非常に恵まれた魅力的なショウとなった。
AXPONAは現在の北米市場で最も注目すべきオーディオショウであるといって差し支えないだろう。コンシューマーオーディオ業界において、ポストCESはAXPONAで決定したかもしれない、とさえ感じたほどだ。シカゴ・成田間は直行便があり、シャトルバスで会場のホテルにいくことができるほか、周辺にもホテルがいくつもあるので、周辺環境としては参加しやすい。日本のオーディオファンも是非足を運んでみてはいかがだろうか。
(島幸太郎、エミライ/OPPO Digital Japan)
数年前、DSD256対応といってもほとんど海外ブランドはピンとこなかったようだが、今年のAXPONAでは様々な場所で「Quad DSD」(口語では256は言いにくいためこのように呼ばれることもある)についての会話を耳にした。ショウで直接ユーザーから声が多く上がることで、海外ブランドも本格的にDSD256対応に本腰を入れ始めるかもしれない。
■対応製品が続々登場するMQA。その評価は?
MQAがいかなるフォーマットであるか、その価値はどこにあるのか、ということは海外でも当然話題や議論になっている。AXPONAではMQA対応製品の展示も徐々に増えてきていた印象だ。セミナーでは媒体関係者から、現状のMQAの立ち位置はmp3の上位フォーマットとして理解すべきであり、これまでmp3を使っていた人々がMQAを使うことで結果的に良い音に触れる機会が増えることを歓迎したいという趣旨の発言があったが、これが素直な理解だろう。
特にMQA対応をアピールしていたのがMYTEKだ。CEOのミカエル氏に意図を尋ねたところ、オーディオ機器を販売するメーカーはフォーマットの良し悪しについての議論には深入りすべきではなく、あらゆるフォーマットに対応すること、そのフォーマットの真価を発揮させることに注力することが本分という考えのようだ。
MQAはボブ・スチュアート氏が語るように、本来携帯など帯域幅の限られた状況下で最良の音質を実現するためのフォーマットであるから、ストリーミング再生と何かしらの方法で連携することを想定するようであれば、今後MQAに対応する製品が増えていくことだろう。
■その他注目の新製品
ここまで紹介してきた製品以外にも、AXPONAには注目すべき製品が多数出展されていた。その一部を紹介しておこう。
CH Precisionのブースには、「I1 Universal Integrated Amplifier」と「T1 Time Reference」が出展された。前者は2017年7月、後者は同年6月発売予定。最近は特にヨーロッパ市場からインテグレーテッドアンプの強い需要があるそうで、各社が高級インテグレーテッドアンプの開発を行っているのが見てとれた。
GOLDMUNDのスピーカー「Logos Sukha」は、今月発売されたばかりの商品だ。Epilogue 1+2を彷彿とさせるサイズ感で、日本市場にはこのくらいが適切ではないかと思う。
Voxativの「Zeth with Z-Bass」スピーカーシステム。サブウーファーとのセット商品とすることで、キャビネットの小型化に成功したとのこと。
これまで日本の媒体があまり取り上げてこなかったAXPONAだが、いかがだっただろうか。昨年は各社の新製品展示が相次いでいたが、今回は残念ながら日本の市場でも注目を浴びそうな新製品発表は少なかったかもしれない。筆者がやや気になったのは、特にデジタル系において、特定ブランドの製品が本当に多くのブースで展示されていた点だ。確かに皆優れた製品なので、多くの顧客を獲得するのも当然なのだが、この一極集中の状況が吉と出るのか凶と出るのかは、今しばらく判断に時間を要するだろう。
とはいえ、アメリカの新しいオーディオショウのあり方という意味でも大変刺激的なイベントであり、結果的に今年のAXPONAも出展社・ブース数・参加者ともに非常に恵まれた魅力的なショウとなった。
AXPONAは現在の北米市場で最も注目すべきオーディオショウであるといって差し支えないだろう。コンシューマーオーディオ業界において、ポストCESはAXPONAで決定したかもしれない、とさえ感じたほどだ。シカゴ・成田間は直行便があり、シャトルバスで会場のホテルにいくことができるほか、周辺にもホテルがいくつもあるので、周辺環境としては参加しやすい。日本のオーディオファンも是非足を運んでみてはいかがだろうか。
(島幸太郎、エミライ/OPPO Digital Japan)