ディナウディオ 新Confidenceも
【HIGH END】注目の最新スピーカーを聴く(2)。VIvid Audio「KAYA」/エラック 新400シリーズなど
前編に続き、HIGH END 2018 MUNICHの会場で音を聴くことができたスピーカーの新製品を紹介する。
■VIvid Audio「KAYAシリーズ」
VIvid AudioからはKAYAシリーズが新たに登場した。同社のスピーカーは創設者ローレンス・ディッキーによる奇抜なデザインがアピールポイントの一つになっているが、今回は少なくとも正面から見る限り奇抜さは影をひそめ、リビングルームに置いても目立ちすぎないデザインを身にまとっている。真横から見るとウーファー部分がふくらんでおり、たしかにユニークな形ではあるが、それもなじんでしまえばほとんど気にならないだろう。
今回のキャビネット設計には外部のデザイナーが加わっているようで、ディッキーのオリジナルデザインとは明らかにベクトルが違うが、家庭用スピーカーとして違和感なく導入できるようになったことはたしかだ。
使用ユニットはGiyaシリーズとほぼ共通の技術を導入し、トゥイーターには背面の振動を減衰させるテーパードチューブを装備。ミッドレンジとトゥイーターのハウジングは内部で独立しており、ウーファーとの相互干渉を抑えている。キャビネットは軽量かつ高剛性の複合樹脂を採用しており、フロントからサイドにかけての曲面やバスレフポート周辺など、MDFでは加工が難しい形状にもあえて挑戦している。
側面にダブルウーファーを搭載したKAYA 90の再生音は深々としたステレオ音場のなかに立体的な音像が浮かび、Vivid Audioでなければ体験できない空間再現力をそなえている。音像はスピーカーの位置に張り付かず、前後左右に自在に展開し、中央のステレオイメージも独特の浮遊感があるが、GiyaやOvalに比べると音像に適度な広がりがあり、ややゆったりとした感触がそなわる。GIYAの下位に位置する価格設定も含め、導入のハードルはかなり低くなるのではないだろうか。
■ELAC 新「400シリーズ]
エラックは「Concentro」の姉妹機「ConcentroM」と400シリーズの後継となるVELA400シリーズを新製品として発表。ブースでは「BS403.2」と「FS407.2」を公開したが、そのなかから筆者はFS407.2の音を聴いた。
新しい400シリーズはキャビネット形状が大きく変わり、背面側への絞り込みやラウンド処理など、洗練されたスタイルを採用したことが目を引く。フロントバッフルに各ユニットを直接取り付ける方法に変更してすっきりした外観になったが、アルミ製ベースプレートとバスレフポートの一体設計など、内部構造はキャビネットの剛性を高める方向での改善が行われている。
その効果は再生音にはっきり現れていて、特に低音の一部音域でのふくらみやにじみやが消えて、ベースラインが以前よりも活発に動き回るようになった。前作もJETトゥイーターのレスポンスの良さに十分追随していたと思うが、まだ改善の余地があったということだ。もう一つ、大音量再生で低音が飽和しにくくなったことにも注目したい。
ConcentroMの音は今回聴いていないが、Concentroのコンセプトを受け継ぎながら導入しやすい大きさにダウンサイジングしており、エラックの次世代サウンドを手に入れるためのハードルがかなり低くなった。
■ディナウディオ 新「Confidenceシリーズ」
ディナウディオは7年ぶりにConfidenceシリーズをリニューアルし、Confidence 50/30/20の3機種をブースで公開。同社ブースで最上位モデルのフロア型Confidence70を聴くことができた。
現行のConfidenceシリーズはフロア型に2個のトゥイーターを積んでいるが、新シリーズではDDC(Dynaudio Directivity Control)を新世代に更新し、DDCレンズと呼ばれるアルミ製ウェーブガイドを設けることによって、1個のトゥイーターで水平方向の幅広い指向性を確保しつつ、床などからの有害な反射を抑えることに成功したという。当然ながらネットワーク回路もシンプルに構成できるし、新開発トゥイーター「Esotar3」の性能を最大限に引き出すことへの期待も高まる。
バッフル面の立体的な形状は外見上もインパクトが強く、アグレッシブな印象を与えるが、Confidence50の再生音から受けた印象もそれに近いものだった。ギターやドラムは一音一音に実在感があり、5mほど離れた位置から聴いても密度を失わない。ベースは現行のConfidence C4よりも輪郭の描写がタイトに引き締まり、付点音符のリズムの切れの良さが伝わりやすくなった。
一番感心したのはヴォーカルの焦点がピタリと定まることで、背の高いフロア型スピーカーとしては異例なほどフォーカスが良い。2年前に発売されたContourシリーズも新しい志向を強く印象付けたが、Confidenceはさらに一歩踏み込んで新しい世代の音に生まれ変わっている。
■DALIのワイヤレススピーカー「CALLISTO」
HIGH ENDの会場全体を見渡すとアクティブスピーカーが例年より増えているように感じたが、その動きを代表する製品をダリが出展し、大きなスペースを割り当ててデモンストレーションを行った。昨年のIFAで公開された「CALLISTO 6C」と「CALLISTO 2C」、そしてWi-Fi送信モジュールの「CALLISTO HUB」で構成されるシンプルなシステムで、ハイレゾ音源まで対応する独自規格の無線伝送を行うため、本体へのケーブル接続は電源しかなく、すっきりとしたセッティングができる。
ブースでの展示はそのスマートな部分を印象付ける工夫が行われており、まるで友人のリビングルームを訪ねたような雰囲気のなかで音を体験することができた。
フロア型モデルのCALLISTO 6Cの再生音は、家庭用アクティブスピーカーの一般的な製品とは一線を画す本格派で、伸びやかで質感の高い低音に支えられたバランスのサウンドを堪能することができた。HUBがコンパクトに設計されていることもあり、部屋のなかで目に入るのはほぼスピーカーだけというシンプルなシステムだが、高級ホームオーディオとしての高い完成度を見せている。マルチルーム用プラットフォームBLUOSも用意されるなど、CALLISTOはシリーズとしての拡張性も確保している点に注目したい。
■Vienna Acoustics やTADからも注目の試作機が登場
音のデモンストレーションはなかったが、Vienna Acousticsが「Beethoven」と「Haydn」のレンジに導入する後継機のプロトタイプを公開したり、TADが「TAD-E1」のリニューアルモデルを展示するなど、目を引く展示にもいくつか遭遇した。これらのモデルは今年後半から来年前半にかけての登場が期待されるので、機会をあらためて紹介することにしよう。
■VIvid Audio「KAYAシリーズ」
VIvid AudioからはKAYAシリーズが新たに登場した。同社のスピーカーは創設者ローレンス・ディッキーによる奇抜なデザインがアピールポイントの一つになっているが、今回は少なくとも正面から見る限り奇抜さは影をひそめ、リビングルームに置いても目立ちすぎないデザインを身にまとっている。真横から見るとウーファー部分がふくらんでおり、たしかにユニークな形ではあるが、それもなじんでしまえばほとんど気にならないだろう。
今回のキャビネット設計には外部のデザイナーが加わっているようで、ディッキーのオリジナルデザインとは明らかにベクトルが違うが、家庭用スピーカーとして違和感なく導入できるようになったことはたしかだ。
使用ユニットはGiyaシリーズとほぼ共通の技術を導入し、トゥイーターには背面の振動を減衰させるテーパードチューブを装備。ミッドレンジとトゥイーターのハウジングは内部で独立しており、ウーファーとの相互干渉を抑えている。キャビネットは軽量かつ高剛性の複合樹脂を採用しており、フロントからサイドにかけての曲面やバスレフポート周辺など、MDFでは加工が難しい形状にもあえて挑戦している。
側面にダブルウーファーを搭載したKAYA 90の再生音は深々としたステレオ音場のなかに立体的な音像が浮かび、Vivid Audioでなければ体験できない空間再現力をそなえている。音像はスピーカーの位置に張り付かず、前後左右に自在に展開し、中央のステレオイメージも独特の浮遊感があるが、GiyaやOvalに比べると音像に適度な広がりがあり、ややゆったりとした感触がそなわる。GIYAの下位に位置する価格設定も含め、導入のハードルはかなり低くなるのではないだろうか。
■ELAC 新「400シリーズ]
エラックは「Concentro」の姉妹機「ConcentroM」と400シリーズの後継となるVELA400シリーズを新製品として発表。ブースでは「BS403.2」と「FS407.2」を公開したが、そのなかから筆者はFS407.2の音を聴いた。
新しい400シリーズはキャビネット形状が大きく変わり、背面側への絞り込みやラウンド処理など、洗練されたスタイルを採用したことが目を引く。フロントバッフルに各ユニットを直接取り付ける方法に変更してすっきりした外観になったが、アルミ製ベースプレートとバスレフポートの一体設計など、内部構造はキャビネットの剛性を高める方向での改善が行われている。
その効果は再生音にはっきり現れていて、特に低音の一部音域でのふくらみやにじみやが消えて、ベースラインが以前よりも活発に動き回るようになった。前作もJETトゥイーターのレスポンスの良さに十分追随していたと思うが、まだ改善の余地があったということだ。もう一つ、大音量再生で低音が飽和しにくくなったことにも注目したい。
ConcentroMの音は今回聴いていないが、Concentroのコンセプトを受け継ぎながら導入しやすい大きさにダウンサイジングしており、エラックの次世代サウンドを手に入れるためのハードルがかなり低くなった。
■ディナウディオ 新「Confidenceシリーズ」
ディナウディオは7年ぶりにConfidenceシリーズをリニューアルし、Confidence 50/30/20の3機種をブースで公開。同社ブースで最上位モデルのフロア型Confidence70を聴くことができた。
現行のConfidenceシリーズはフロア型に2個のトゥイーターを積んでいるが、新シリーズではDDC(Dynaudio Directivity Control)を新世代に更新し、DDCレンズと呼ばれるアルミ製ウェーブガイドを設けることによって、1個のトゥイーターで水平方向の幅広い指向性を確保しつつ、床などからの有害な反射を抑えることに成功したという。当然ながらネットワーク回路もシンプルに構成できるし、新開発トゥイーター「Esotar3」の性能を最大限に引き出すことへの期待も高まる。
バッフル面の立体的な形状は外見上もインパクトが強く、アグレッシブな印象を与えるが、Confidence50の再生音から受けた印象もそれに近いものだった。ギターやドラムは一音一音に実在感があり、5mほど離れた位置から聴いても密度を失わない。ベースは現行のConfidence C4よりも輪郭の描写がタイトに引き締まり、付点音符のリズムの切れの良さが伝わりやすくなった。
一番感心したのはヴォーカルの焦点がピタリと定まることで、背の高いフロア型スピーカーとしては異例なほどフォーカスが良い。2年前に発売されたContourシリーズも新しい志向を強く印象付けたが、Confidenceはさらに一歩踏み込んで新しい世代の音に生まれ変わっている。
■DALIのワイヤレススピーカー「CALLISTO」
HIGH ENDの会場全体を見渡すとアクティブスピーカーが例年より増えているように感じたが、その動きを代表する製品をダリが出展し、大きなスペースを割り当ててデモンストレーションを行った。昨年のIFAで公開された「CALLISTO 6C」と「CALLISTO 2C」、そしてWi-Fi送信モジュールの「CALLISTO HUB」で構成されるシンプルなシステムで、ハイレゾ音源まで対応する独自規格の無線伝送を行うため、本体へのケーブル接続は電源しかなく、すっきりとしたセッティングができる。
ブースでの展示はそのスマートな部分を印象付ける工夫が行われており、まるで友人のリビングルームを訪ねたような雰囲気のなかで音を体験することができた。
フロア型モデルのCALLISTO 6Cの再生音は、家庭用アクティブスピーカーの一般的な製品とは一線を画す本格派で、伸びやかで質感の高い低音に支えられたバランスのサウンドを堪能することができた。HUBがコンパクトに設計されていることもあり、部屋のなかで目に入るのはほぼスピーカーだけというシンプルなシステムだが、高級ホームオーディオとしての高い完成度を見せている。マルチルーム用プラットフォームBLUOSも用意されるなど、CALLISTOはシリーズとしての拡張性も確保している点に注目したい。
■Vienna Acoustics やTADからも注目の試作機が登場
音のデモンストレーションはなかったが、Vienna Acousticsが「Beethoven」と「Haydn」のレンジに導入する後継機のプロトタイプを公開したり、TADが「TAD-E1」のリニューアルモデルを展示するなど、目を引く展示にもいくつか遭遇した。これらのモデルは今年後半から来年前半にかけての登場が期待されるので、機会をあらためて紹介することにしよう。