世界中で話題を集めたモデル
DJ界にも押し寄せる「ハイファイ」の波? RANEから登場したロータリーミキサー「MP2015」
先日、とあるニュースがDJの間で大きな話題となった。世界中のクラブDJ達に支持されるミキサーを世に送り出してきたRANEから、ロータリーミキサーの新製品がここ日本で発売されたのだ。一見、コンシューマーオーディオを取り扱う本メディアではあまり関係のないことのように思えるかもしれないが、「ハイファイ」というマーケットを広義に捉えた場合、見逃すことのできない製品と言えそうだ。
そもそも、ロータリーミキサーとは何か。
世界的に一般的なのは、いわゆるフェーダー式のミキサーだ。これは最終的なボリュームノブがスライドで動かすフェーダーになっており、そのプレイのしやすさで、現在発売されるミキサーのほとんどでこのフェーダー式が採用されるようになった。
一方のロータリーミキサーとは、音量調整ノブに至るまで全てロータリー式(つまり回すタイプ)となるミキサーだ。ロータリーミキサーは主にハウスやテクノのDJで活用されることが多く、いわゆるフェーダー式に比べ、より繊細なコントロールができるとして多くの愛用者を抱えてきた。また主にジャズやソウルなどの曲をメインにプレイするDJの中には、このロータリーミキサーに対して熱烈なこだわりを持つ方が多いのも特徴。事実、かつて「オーディオチェックディスクシリーズ」として発売される程サウンドが評価されるSalsoulレーベルの作品を始めとした70's DISCOの時代も、多くのクラブでこのロータリーミキサーを用いてプレイされていたと聞く。
ロータリーミキサーにはかつて、UREIの「1620」や、BOSAKなどいわゆる「銘機」と言われる機器が存在し、発売後数十年を経たいまでも、そのサウンドは多くのDJの心を捉えて離さない。しかし、フェーダー式と比較してコスト高になることから、一時期はほとんど新製品が登場しない状態となっていた。
ところがここ数年、状況が少しずつ変化していくことになる。スイスから登場したVARIA INSTRUMENTSや、日本のとあるDJが尋常ではない熱意で製品化したCompact Dsico Sound System(通称CDS)など、いわゆるガレージメーカーがロータリーミキサーならではのサウンドを世に送り出し始めたのだ。確かに、値段が高価であることも変わりないものの、この動きは世界のDJから大き注目を集めてきた。
そんな状況下のなかでただひとつ、大手ともいえる規模を誇るブランドでありながらロータリーミキサーを開発してきたのがRANEだ。先日日本でも発売がアナウンスされたMP2015は、そんなRANEが40年以上に渡って培ってきたロータリーミキサーのノウハウを投入した新製品として発表されたのである。これは話題にならない方がおかしい、というわけである。
MP2015で注目したいのは、あくまで「現代版のロータリーミキサー」ということだ。
その特徴のひとつが、多様化する音源が使用される今日のDJシーンにおいて、ハイレゾクオリティの再生に対応すること。搭載されるのは旭化成エレクトロニクス製のデルタシグマ型モジュレーター・コンバーターで、24bit音源の再生にも対応している。注目は音作りに設ける各種フィルターも全てデジタルで構成されていることで、このあたりが「ただの古きよき時代の再現」にとどまらないポイントとみていいだろう。
それと、内部回路が全てバランス構成となっていることも注目だ。アンバランス信号でも内部でバランス伝送させることで、最大で116dBというダイナミックレンジを確保。24bit音源はそのダイナミックレンジの表現力に分があるといわれるが、その再現力を損なわないスペックを実現していると見ていいだろう。
このアプローチを見ていて思うのは、DJ機器とは言えオーディオ機器。その高音質へのアプローチやトレンドは、ハイファイオーディオと共通する部分が多いということである。
MP2015の日本での発売価格はオープン価格として発表されたが、市場での想定価格は¥298,000。確かに、DJミキサーとしてはハイエンドの部類ではあるが、実はMP2015が世界的に発表された時「40万円を超えるのでは」という声もあったくらいだった。このことも、いま改めてロータリーミキサーが話題を集める大きな要因となったことは間違いない。
もちろん、フェーダー式のミキサーのなかにも高級機は多数存在するし、サウンド的にハイクオリティなモデルも非常に多い。ただし、今回のMP2015の日本発売によって、DJシーンでもよりハイクオリティなサウンドに改めて注目が集まったことも事実だろう。こうしたハイクオリティ化は、当然ミキシングに使用するヘッドフォンやプレイバック用のモニタースピーカーなど、さまざまな面で「クオリティ」に改めてスポットが集まる大きなポイントとなることも予想される。
RANEのDJミキサーは、確かにDJ機器。しかしながら、そのこだわりの使用はオーディオファンであっても聴いてみたいと思えるものだ。クラシカルな外観と現在のデジタルを融合させた本機が果たして「ハイファイ」の市場にとってどのような影響を及ぼしていくのか。今後も注目したいと思わせるプロダクトだ。
そもそも、ロータリーミキサーとは何か。
世界的に一般的なのは、いわゆるフェーダー式のミキサーだ。これは最終的なボリュームノブがスライドで動かすフェーダーになっており、そのプレイのしやすさで、現在発売されるミキサーのほとんどでこのフェーダー式が採用されるようになった。
一方のロータリーミキサーとは、音量調整ノブに至るまで全てロータリー式(つまり回すタイプ)となるミキサーだ。ロータリーミキサーは主にハウスやテクノのDJで活用されることが多く、いわゆるフェーダー式に比べ、より繊細なコントロールができるとして多くの愛用者を抱えてきた。また主にジャズやソウルなどの曲をメインにプレイするDJの中には、このロータリーミキサーに対して熱烈なこだわりを持つ方が多いのも特徴。事実、かつて「オーディオチェックディスクシリーズ」として発売される程サウンドが評価されるSalsoulレーベルの作品を始めとした70's DISCOの時代も、多くのクラブでこのロータリーミキサーを用いてプレイされていたと聞く。
ロータリーミキサーにはかつて、UREIの「1620」や、BOSAKなどいわゆる「銘機」と言われる機器が存在し、発売後数十年を経たいまでも、そのサウンドは多くのDJの心を捉えて離さない。しかし、フェーダー式と比較してコスト高になることから、一時期はほとんど新製品が登場しない状態となっていた。
ところがここ数年、状況が少しずつ変化していくことになる。スイスから登場したVARIA INSTRUMENTSや、日本のとあるDJが尋常ではない熱意で製品化したCompact Dsico Sound System(通称CDS)など、いわゆるガレージメーカーがロータリーミキサーならではのサウンドを世に送り出し始めたのだ。確かに、値段が高価であることも変わりないものの、この動きは世界のDJから大き注目を集めてきた。
そんな状況下のなかでただひとつ、大手ともいえる規模を誇るブランドでありながらロータリーミキサーを開発してきたのがRANEだ。先日日本でも発売がアナウンスされたMP2015は、そんなRANEが40年以上に渡って培ってきたロータリーミキサーのノウハウを投入した新製品として発表されたのである。これは話題にならない方がおかしい、というわけである。
MP2015で注目したいのは、あくまで「現代版のロータリーミキサー」ということだ。
その特徴のひとつが、多様化する音源が使用される今日のDJシーンにおいて、ハイレゾクオリティの再生に対応すること。搭載されるのは旭化成エレクトロニクス製のデルタシグマ型モジュレーター・コンバーターで、24bit音源の再生にも対応している。注目は音作りに設ける各種フィルターも全てデジタルで構成されていることで、このあたりが「ただの古きよき時代の再現」にとどまらないポイントとみていいだろう。
それと、内部回路が全てバランス構成となっていることも注目だ。アンバランス信号でも内部でバランス伝送させることで、最大で116dBというダイナミックレンジを確保。24bit音源はそのダイナミックレンジの表現力に分があるといわれるが、その再現力を損なわないスペックを実現していると見ていいだろう。
このアプローチを見ていて思うのは、DJ機器とは言えオーディオ機器。その高音質へのアプローチやトレンドは、ハイファイオーディオと共通する部分が多いということである。
MP2015の日本での発売価格はオープン価格として発表されたが、市場での想定価格は¥298,000。確かに、DJミキサーとしてはハイエンドの部類ではあるが、実はMP2015が世界的に発表された時「40万円を超えるのでは」という声もあったくらいだった。このことも、いま改めてロータリーミキサーが話題を集める大きな要因となったことは間違いない。
もちろん、フェーダー式のミキサーのなかにも高級機は多数存在するし、サウンド的にハイクオリティなモデルも非常に多い。ただし、今回のMP2015の日本発売によって、DJシーンでもよりハイクオリティなサウンドに改めて注目が集まったことも事実だろう。こうしたハイクオリティ化は、当然ミキシングに使用するヘッドフォンやプレイバック用のモニタースピーカーなど、さまざまな面で「クオリティ」に改めてスポットが集まる大きなポイントとなることも予想される。
RANEのDJミキサーは、確かにDJ機器。しかしながら、そのこだわりの使用はオーディオファンであっても聴いてみたいと思えるものだ。クラシカルな外観と現在のデジタルを融合させた本機が果たして「ハイファイ」の市場にとってどのような影響を及ぼしていくのか。今後も注目したいと思わせるプロダクトだ。
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