ファインテック・ジャパン専門技術セミナー
大型有機ELの現状と課題 − 最大のライバル「液晶」にコストと付加価値で勝てるか
その言葉の通り、登壇したメーカーの担当者たちは「開発コストが課題」と口を揃える。以下、各社の開発陣の講演内容を紹介する。
■大型有機ELディスプレイ実用化の可能性を探る
− コダック(株)OLEDシステムズ事業部 シニアディレクター 辻村隆俊氏
大型有機ELディスプレイの実用化の方法を具体的に提示した辻村氏。有機ELのカラーパターニング技術は、シャドウマスク方式、白+カラーフィルター(CF)方式、レーザーパターニングといった多様な方式が存在するが、辻村氏によると現状はソニー「XEL-1」などに採用されているRGB塗り分け方式が主流だという。ただ「ここ3年ほどで白+CF方式の輝度が急激に向上した。今後は小型ディスプレイにはRGB塗り分け方式、高精細な中大型には白+CF方式といった棲み分けがでてくる可能性もある」と説明する。
さらに「有機ELディスプレイの大型化を実現するためには、欠陥密度対策が何よりも重要。白+カラーフィルター方式といった成熟した技術を利用して実用化に向けて開発を進めた方が、パフォーマンスに優れていても研究が未熟な新技術を採用するより大型化への早道となる」と自身の見解を述べた。
辻村氏は、カラーパターニング技術以外にも同氏が“スケーラブルな技術"と呼ぶ、小型有機ELディスプレイで実用されている既存の技術を用い、それらを組み合わせることで低リスクな大型ディスプレイの製作が可能だということを詳しく解説。また実際に“スケーラブルな技術"を用いて8V型の試作機を開発し、その考えを証明してみせたという。「この試作機は製品レベルのパネル特性を持ち、32V型といった大型化も可能なスペックを備えている。実用化に向けてスケーラブルな技術を使用した製品開発を検討してほしい」と会場で聴講する関係者にアピールしていた。
■有機ELディスプレイを“本物”にする課題と技術
− ソニー(株)AD事業開発室 AD技術部 統括部長 吉田 昭彦 氏
「有機ELを、本当の意味で“本物”にするためには、付加価値がどこにあるのかを明確にしていかなくてはいけないのではないか」と語る吉田氏。本格普及期を迎えつつある有機ELだが、この動きを加速させるために付加価値の確立とコストという面で課題があるという。
有機ELの映像は、エッジノイズが少ないといったナチュラルさや映像の奥行き感、安定感など画質面での優位性を持っている。吉田氏は液晶に比べて黒の沈み込みに優れる旨のデータも示し、技術特性を説明。その上で、「様々な特性を持っている有機ELだが、こうしたものを表現できる評価技術指標の開発も今後の課題だろう」とコメントする。
そして、吉田氏が指摘するもうひとつの問題がコスト面だ。「有機ELの画像は非常にキレイだが、感度の高いデバイスであるためにTFTやELの欠陥に対しても敏感に反応してしまう」と、素材特性上の問題を説明する。
有機ELの製造で起こりやすい問題に、微小異物が混入しての電気的ショートによる画素非点灯や、複雑な画素回路であるがゆえのTFTでの配線欠陥などが挙げられる。吉田氏はこうした問題に対して精度の高いリペア技術など、コスト技術を追求することが必要と語った。
■有機ELビジネスの障壁は生産技術とマーケット
− カシオ計算機(株)ELプロジェクト サブプロジェクトリーダー 白嵜 友之 氏
「2007年にサムスンSDIやソニーから製品が発売されたことで、市場は有機ELを高画質・薄型ディスプレイとして高いレベルで認知されたと思う」と語る白嵜氏。しかし、数パーセントという材料利用効率や歩留まりなどの生産技術に加え、液晶との競争というマーケット上の障壁も有機ELの課題だと説明する。
続けて白嵜氏は「有機ELの課題は、実は画質に関するものではない。有機ELの画質は液晶に対して原理的な優位性があるので、生産性やコストに関する技術開発こそが課題だ」とコメント。「液晶は唯一のFPDとして起ち上がり、関連技術も同時に成長するなど、コストと精度に寛容な市場で成長してきた。こうして成熟した液晶が立ちはだかっている現状が、有機ELのビジネス上の大きな問題だ」とも語り、コスト面を重視しなければならないと述べた。
同社ではこうした認識の下に、生産性向上とコスト低減の技術開発、そして大型基板生産というコンセプトを掲げ研究を続けている。具体的には、成熟した既存のアモルファスシリコンTFT技術による高生産性を実現させたほか、湿式印刷成膜によるスループットの向上などを行っているという。
また、大型基板生産については「単に多面取りの基板を作るということでない。将来的にテレビへ使用できるようになった場合に、有機ELは液晶に対して非常に大きなアドバンテージを持つことになる」とコメント。液晶というライバルがいるマーケットを意識した上で、生産性の向上が課題であると説明した。
■大型有機ELディスプレイ実用化の可能性を探る
− コダック(株)OLEDシステムズ事業部 シニアディレクター 辻村隆俊氏
さらに「有機ELディスプレイの大型化を実現するためには、欠陥密度対策が何よりも重要。白+カラーフィルター方式といった成熟した技術を利用して実用化に向けて開発を進めた方が、パフォーマンスに優れていても研究が未熟な新技術を採用するより大型化への早道となる」と自身の見解を述べた。
辻村氏は、カラーパターニング技術以外にも同氏が“スケーラブルな技術"と呼ぶ、小型有機ELディスプレイで実用されている既存の技術を用い、それらを組み合わせることで低リスクな大型ディスプレイの製作が可能だということを詳しく解説。また実際に“スケーラブルな技術"を用いて8V型の試作機を開発し、その考えを証明してみせたという。「この試作機は製品レベルのパネル特性を持ち、32V型といった大型化も可能なスペックを備えている。実用化に向けてスケーラブルな技術を使用した製品開発を検討してほしい」と会場で聴講する関係者にアピールしていた。
■有機ELディスプレイを“本物”にする課題と技術
− ソニー(株)AD事業開発室 AD技術部 統括部長 吉田 昭彦 氏
「有機ELを、本当の意味で“本物”にするためには、付加価値がどこにあるのかを明確にしていかなくてはいけないのではないか」と語る吉田氏。本格普及期を迎えつつある有機ELだが、この動きを加速させるために付加価値の確立とコストという面で課題があるという。
有機ELの映像は、エッジノイズが少ないといったナチュラルさや映像の奥行き感、安定感など画質面での優位性を持っている。吉田氏は液晶に比べて黒の沈み込みに優れる旨のデータも示し、技術特性を説明。その上で、「様々な特性を持っている有機ELだが、こうしたものを表現できる評価技術指標の開発も今後の課題だろう」とコメントする。
そして、吉田氏が指摘するもうひとつの問題がコスト面だ。「有機ELの画像は非常にキレイだが、感度の高いデバイスであるためにTFTやELの欠陥に対しても敏感に反応してしまう」と、素材特性上の問題を説明する。
有機ELの製造で起こりやすい問題に、微小異物が混入しての電気的ショートによる画素非点灯や、複雑な画素回路であるがゆえのTFTでの配線欠陥などが挙げられる。吉田氏はこうした問題に対して精度の高いリペア技術など、コスト技術を追求することが必要と語った。
■有機ELビジネスの障壁は生産技術とマーケット
− カシオ計算機(株)ELプロジェクト サブプロジェクトリーダー 白嵜 友之 氏
「2007年にサムスンSDIやソニーから製品が発売されたことで、市場は有機ELを高画質・薄型ディスプレイとして高いレベルで認知されたと思う」と語る白嵜氏。しかし、数パーセントという材料利用効率や歩留まりなどの生産技術に加え、液晶との競争というマーケット上の障壁も有機ELの課題だと説明する。
続けて白嵜氏は「有機ELの課題は、実は画質に関するものではない。有機ELの画質は液晶に対して原理的な優位性があるので、生産性やコストに関する技術開発こそが課題だ」とコメント。「液晶は唯一のFPDとして起ち上がり、関連技術も同時に成長するなど、コストと精度に寛容な市場で成長してきた。こうして成熟した液晶が立ちはだかっている現状が、有機ELのビジネス上の大きな問題だ」とも語り、コスト面を重視しなければならないと述べた。
同社ではこうした認識の下に、生産性向上とコスト低減の技術開発、そして大型基板生産というコンセプトを掲げ研究を続けている。具体的には、成熟した既存のアモルファスシリコンTFT技術による高生産性を実現させたほか、湿式印刷成膜によるスループットの向上などを行っているという。
また、大型基板生産については「単に多面取りの基板を作るということでない。将来的にテレビへ使用できるようになった場合に、有機ELは液晶に対して非常に大きなアドバンテージを持つことになる」とコメント。液晶というライバルがいるマーケットを意識した上で、生産性の向上が課題であると説明した。