為替の影響などで2,278億円の営業赤字
ソニー、2008年度決算を発表 - 今期は構造改革で損失縮小見込む
質疑応答では詰めかけた報道陣から次々に質問が集中した。以下、会見で行われた質疑応答の様子をお届けする。
Q.ゲーム市場の収益改善に関する今後の見通しを教えて欲しい
A.PS3はコスト改善が進んでいる。今後もコストダウンは順調に推移するだろう。値下げなどの価格戦略についてはノーコメントだ。これまでPS3はネット機能の強化などを重視し、販売台数そのものは追わないという考えでやってきたが、2009年度は3割ほど台数を伸ばしていきたい。
また、PSPについてはソフトに対するユーザーの姿勢が据え置き型と異なっている部分がある。そのため、本体の販売台数が増えてもソフトの売上が比例するような状況にない。この点については、ネット機能を充実させていったり、PS3や、場合によってはPS1のソフトも使えるようにするなど、ソフトを充実させていきたい。
Q.ネットワーク事業について聞きたい。事業形態を新体制にしたが、4期連続で最高益を更新しているソネットをグループ会社に持ちながらも、決算でソネットの収益は「その他分野」扱いとなっている。目指すべき方向性とズレているような印象を受けるが、ネットワーク事業をどう捉えているのか。
A.指摘されたようなことは確かにその通り。今後の在り方についてはこれからさらに検討していく。
Q.“サイバーショット”の出荷予測が前期実績から200万台減少している。他社では横ばいか微増という予測が多いが、減少を予測した背景について教えて欲しい。
A.他社製品と比べ商品力に差がある部分もあると捉えての減少予測だ。だが、例えば「メカニカルシャッター」搭載機など、商品力のある製品が増えてきているため今後は販売台数も上向いてくるだろう。現在はちょうど過渡期であるとも言えるのではないか。
また、台数を伸ばすために価格を下げるような戦略は取りたくない。販売台数を多少落としても、ちゃんと利益を確保できる方向に持って行きたいと考えている。
Q.デジタル一眼レフカメラ“α”は、エントリーからフラグシップまでラインナップが揃った。現在、シェアなどはどのような状況にあるのか。
A.シェアは10%以上を目標にしている。販売台数も、具体的な数字は避けるが100万台を超えている。同製品については、どちらかというと一眼レフでもエントリー層向けにウェイトを置いている。そこの市場でシェアを伸ばす戦略を取っている。損益については、来年度にブレイクイーブンを目指す。
Q.テレビについて、2009年度は回復を見込んでいるとのことだが、具体的な考えを教えて欲しい。
A.あまり具体的なことを明かせないが、台数は変わらないか、多少下がるくらいになると考えている。また、大型化やハイフレームレート化した機種がフィーチャーされていくだろう。こうした所を強調して狙っていきたい。また、新興国についてはOEMなどを使ってマーケットを取っていきたい。
2009年度のテレビについては、上期は厳しい経済状況などもあるため黒字にならないだろうが、下期はブレイクイーブンへ持っていきたいと考えている。
また、そのためにはコストダウンをきちんとやっていく必要がある。人員計画についても、エンジニアや正規従業員も削減対象とし固定費などコスト削減をしていく必要があるかもしれない。
コストについては、世界の各地域で設計してバラバラに作るのではなく1ヶ所で設計するなどのことも検討材料になるかもしれない。そのほかにも、パネルなどのサプライチェーンをしっかりするなどしていきたい。
Q.事業所の閉鎖や再編成について、合理化以外の要因があれば教えて欲しい。
A.基本的には合理化という理由がベースにある。現在行っている事業をそのまま今後も社内で続けてやっていく必要があるのかを考えた場合、OEMなどでもやれる部分があるのではないか。こうしたことなどを検討して統廃合を行っている。
Q.今後は新興国の需要が高まっていくことが予想されるが、その中でもとりわけ中所得者層の取り込みについて、どのような戦略を持っているのか。
A.新興国も狙っていく必要性は認識しているが、そうした国で現在生産されている製品とソニー製品では、価格面などでまだニーズにギャップがある。今後の成長によってそのギャップが埋まっていくことも十分に考えられるので、できる範囲のことを精一杯行っていきたい。
また、ソニーは比較的早い段階から海外志向を持ち、販売網も充実している。こうした所も活用していきたい。
Q.新興国では低価格モデルの開発など価格戦略も必要になってくると思うが、そうした点についてはどう考えているのか。
A.OEMを活用するなど、やり方を多少変えるといった方法もあるだろう。しかし、OEMなどで丸投げするのではなく、「ソニーらしさ」をどうやって出していけるかを考えていく必要がある。
Q.統廃合で再編された事業所の人員の扱いがどうなるのかを教えて欲しい。また、国内の事業所の在り方についてどのように考えているのかを聞かせて欲しい。
A.原則として、移管される分野の従業員については異動のオファーを出し、事情があって異動に応じられない人員については早期退職などで対応する。事業所の在り方については、デバイス系のものは設備投資が必要なこともあり、半導体などは今後もまだ国内に残るのではないか。
Q.原材料価格が下がり始めているが、その影響は出ているのか。
A.確かにそういった側面もあるので、今年度は2008年度よりは多少大きなコストダウンを現在のところは考えている。また、新体制となりソニー全体に横串が通った。全体を通して材料を仕入れることなどによってもコストダウンを図っていける。
Q.新興国の状況など、他国との関係でコストが上がる可能性についてはどう考えているのか。
A.他国との競争による原材料費の変動などは為替と同じようなもの。今の段階で具体的な数字を説明するのは難しい。
Q.「台数を狙わない」という発言があったが、それは以前から掲げていた「世界ナンバーワンを目指す」という旗を降ろすということなのか。
A.今の段階、現在の時期ではナンバーワンを狙うべきではないと考えたということだ。現在の状況下では、数を追うよりも利益を確保していくことが重要だと考えている。
Q.エプソンとの協議など、中小型液晶についてどのように考えているのかを教えて欲しい。
A.液晶におけるエプソンとソニーの領域は実はオーバーラップしていない。液晶サイズ全体のラインナップとして考えたときに、エプソンとの協業はかなりのシナジー効果があると考えている。
Q.エコポイント制度がスタートするが影響はどの程度あると考えているのか。
A.世界的に見た場合、実は国内はソニーにとってマーケットとしての割合がそれほど大きくないのだが、国内需要を喚起してくれることを期待している。
Q.テレビの世界的な地域別の売上内訳を教えて欲しい。
A.地域別の数字については一切非公表だ。
Q.シャープとの合弁会社について、ソニーの体制が変わったことによる変化などはあるのか。
A.発表している通り、現在は何ができるのかを協議している段階。今後発表できる機会もあるだろうが、現時点で具体的なことは差し控えたい。
Q.人員計画について1万6,000人のメドが立ったとのことだが、これ以上の削減は考えていないと捉えて良いのか。
A.この先もいくつかのプランがある。
Q.今後の事業拠点再編プランはどうなるのか。
A.個別の事業がどのように進んでいくのかによる。