2011年度の事業方針は「攻める」「変わる」
パナソニック、パネルのサイズ別棲み分け戦略を撤廃 − 液晶テレビを中型サイズで積極展開
パナソニック(株)は、2010年度の連結業績と、2011年度の事業方針に関する説明会を開催した。会見には同社社長の大坪文雄氏らが出席した。
2010年度の決算は、売上高はアジアや中国などの新興国が牽引。2桁の増収を実現した。また営業利益は前年比1.6倍の増益となった。税引き前利益、純利益とも大幅増益で黒字転換となった。
2010年度の連結売上高は8兆6,927億円で、前年比は117%。三洋電機の2009年4〜12月分を合算した数値の前年比と比べても101%となった。
また営業利益は3,053億円で、前年比は160%。2010年7月時点での、3,100億円という見通しをほぼ達成した。純利益についても740億円となり、前年の1,035億円の赤字から大幅に黒字転換した。
三洋電機を別にした内訳では、パナソニックグループの営業利益は3,133億円で前年比1,221億円増、三洋電機は80億円の営業赤字だった。
デジタルAVCネットワーク事業については、売上高は3兆3,040億円で、BDレコーダーなどは好調に推移したものの、携帯電話やデジカメなどの売上げが減少し、前年比97%の減収となった。営業利益は1,149億円で、前年より276億円の増益となった。売上げの減少を固定費削減や合理化努力などによってカバーした効果が現れた。
このうちAVC社については、2010年度の売上高は1兆7,006億円で、ほぼ前年と同じ。営業損益は281億円の赤字となったが、前年よりは60億円回復している。パナソニックモバイルコミュニケーションについては売上げが2,434億円で、営業利益は55億円だった。
■大坪氏が2011年度の事業方針を説明
続いて、大坪社長が2011年度の事業方針について説明した。
大坪氏は冒頭、東日本大震災に関する被災状況について説明。3月から4月にかけて主要生産拠点が次々に生産を再開し、一部にはフル操業中のところも出てきているという。
一方で震災から1ヶ月半を経て、サプライチェーンの混乱が続いていることも明かし、代替が難しい部材に一部制約が出ているほか、供給先の減産が理由で生産できない製品も多いと述べた。
大坪氏は「支援を継続するとともに、事業復旧の加速や、次なるリスクへの備えを行っていく。業績への悪影響に対し、経費の削減などを行うことも必須だ」としながらも、「何よりも重要なのは、本業の商品や事業で復興に貢献していくこと」と述べ、これが結果的に復興につながるとの考えを強調した。
さらに、震災後の新たな社会基盤の構築に向け、電力不足や停電対策に対しては省エネ機器の普及牽引を行っていく。また創エネや蓄エネ、エネマネの新提案を行っていくほか、被災地の本格復興や新たな新たな震災対策については、家・ビル・街 まるごとソリューションの展開を図っていくという。
■3事業分野に再編。三洋のサブブランドも適宜活用
続いて大坪氏は、2011年度から事業再編に力を入れていく計画を説明。パナソニックは今年4月1日にパナソニック電工と三洋電機の完全子会社化を完了しているが、今後は事業再編の前倒しを推進、早期に成長戦略を加速させることを基本計画としている。
グループ全体での事業構造では、現在パナソニックがデジタルAVCネットワーク/アプライアンス/電工パナホーム/デバイスの4セグメントと三洋電機の5セグメントになっているが、これをビジネスモデル別の3事業分野に分け、コンシューマー/デバイス/ソリューションの3事業分野に分ける。
今後はこれらの3つの事業分野に9つの事業ドメインがぶらさがる構造となる。たとえば、AVCネットワークスはコンシューマー事業分野の中に入るというかたちだ。
コンシューマー事業分野では、マーケティング力強化に力を入れる。中でもAVC関連については、現在のAVC社の海外システム販社を除いた部分と、三洋電機のテレビ/プロジェクター部門を統合させ、AVCネットワークスという組織で運営していく。
AVCネットワークスの2012年度計画は、売上高2.1兆円超と営業利益率3.9%以上の実現を狙う。パナソニックと三洋のシナジーを創出することで、プロジェクターではラインナップを強化。常設プロジェクターナンバーワンを目指していく。またXactiブランドで親しまれたタテ型ムービーについては、「動画+写真」のアクティブな撮影スタイルで新規需要を開拓し、ユーザーと販路を拡大することで、HDグローバルシェア30%超に挑戦するという。
さらに薄型テレビ事業では、現地発のボリュームゾーンの商品投入を強化し、新興国のシェア向上をねらっていく。インドでは音にこだわり、コスト力のある直下型LEDモデルを投入するほか、新興国では、これらの地域でニーズの高い、USB動画再生機能を標準搭載していくという。
また大坪氏は「新しい本社の姿」として、これまでの、パナソニックやパナソニック電工、三洋電機がそれぞれ本社をもっていた形態から、一つの本社を中心に、周囲に5つの地域統括を置く形態へ変えることを説明。これにより筋肉質でスピーディー、かつグローバルな経営を目指していく。
三洋電機については、パナソニックの3事業分野/9ドメインの外に、事業部門と管理部門を置く。この三洋電機法人は、9ドメインに統合しないデジカメOEM事業などの運営、三洋電機に帰属する資産の管理運用などを行っていくという。
また大坪社長は「ブランドの使い方についても整理しておく」と述べ、コーポレートブランドとサブブランドの使い分けにも言及した。
「Panasonic」ブランドは、コーポレートブランドとして、全事業分野で一本化することを基本とする。一方、LUMIXやVIERA、DIGAなど、もともとパナソニックが使っていたものはもちろん、eneloopやGorilla、Xactiなど三洋電機のものまで、サブブランドについては必要に応じて活用していくという。
■薄型テレビは「デバイスにこだわらないインチ戦略」に転換
続いて大坪氏は、今後の事業改革について説明を行った。事業改革は「攻める」「変える」をキーワードに行っていくという。
「攻める」では、新興国での大幅な拡販を狙い、売上げを前年比127%の6,150億円を目指していく。このために「インド大増販プロジェクト」を行い、現地での商品ラインナップを強化。Panasonic Beautyを新展開していくほか、マーケティング体制についてもブランドショップを増やすなどの拡充を行っていく。
また、次世代照明デバイスの開発についても「攻める」一環として紹介。有機EL照明は「LED照明と市場を二分する可能性がある」とし、パナソニック電工と出光興産で設立したパナソニック出光OLED照明(株)などを使って、照明用有機ELパネルの事業家や市場開拓を行っていく。
事業改革の「変える」部分については、薄型テレビの事業構造改革に力を入れていく。
薄型テレビでのパネル事業ではまず、外部調達や提携を拡大し、新規投資を凍結。アセットライト化を強力に進める。既存設備での生産については「デバイスにこだわらないインチ戦略を行う」として、液晶パネルについては「マーケティング戦略に則ったサイズ展開を行う」と説明した。プラズマパネルについては大型化やフルHD化シフトを加速させるほか、「非テレビ向け」の拡大も行って稼働率を上げるという。
また薄型テレビのセット事業では、海外生産体制を強化し、モジュール生産をマレーシアやタイで行うほか、新興国向けの開発もマレーシアで行う。機種展開については、液晶テレビの3D対応モデルを中型でも展開し、新興国での普及価格帯モデルを増やす。さらにプラズマはフルHDの大画面モデルに集中させ、フルHDでは全シリーズを3D対応させる。このほか、IPTVについても強化を継続していく。
経営再編では、再編前で38.5万人の従業員を、2012年度には35万人規模に減らす。また人員削減の他にも様々な構造改革を行い、拠点の再編や人員再配置も実行していく。構造改革費用は2011年度に1,100億円規模、2012年度に500億円規模を想定している。
さらにパナソニック電工や三洋電機などとのシナジー効果を発揮することで、売上を2010年度の8.7兆円から2012年度には9.4兆円へ増やすことを計画。営業利益率についても2010年度の3.5%から2012年度には5%以上に高めることを目標としている。
2010年度の決算は、売上高はアジアや中国などの新興国が牽引。2桁の増収を実現した。また営業利益は前年比1.6倍の増益となった。税引き前利益、純利益とも大幅増益で黒字転換となった。
2010年度の連結売上高は8兆6,927億円で、前年比は117%。三洋電機の2009年4〜12月分を合算した数値の前年比と比べても101%となった。
また営業利益は3,053億円で、前年比は160%。2010年7月時点での、3,100億円という見通しをほぼ達成した。純利益についても740億円となり、前年の1,035億円の赤字から大幅に黒字転換した。
三洋電機を別にした内訳では、パナソニックグループの営業利益は3,133億円で前年比1,221億円増、三洋電機は80億円の営業赤字だった。
デジタルAVCネットワーク事業については、売上高は3兆3,040億円で、BDレコーダーなどは好調に推移したものの、携帯電話やデジカメなどの売上げが減少し、前年比97%の減収となった。営業利益は1,149億円で、前年より276億円の増益となった。売上げの減少を固定費削減や合理化努力などによってカバーした効果が現れた。
このうちAVC社については、2010年度の売上高は1兆7,006億円で、ほぼ前年と同じ。営業損益は281億円の赤字となったが、前年よりは60億円回復している。パナソニックモバイルコミュニケーションについては売上げが2,434億円で、営業利益は55億円だった。
■大坪氏が2011年度の事業方針を説明
続いて、大坪社長が2011年度の事業方針について説明した。
大坪氏は冒頭、東日本大震災に関する被災状況について説明。3月から4月にかけて主要生産拠点が次々に生産を再開し、一部にはフル操業中のところも出てきているという。
一方で震災から1ヶ月半を経て、サプライチェーンの混乱が続いていることも明かし、代替が難しい部材に一部制約が出ているほか、供給先の減産が理由で生産できない製品も多いと述べた。
大坪氏は「支援を継続するとともに、事業復旧の加速や、次なるリスクへの備えを行っていく。業績への悪影響に対し、経費の削減などを行うことも必須だ」としながらも、「何よりも重要なのは、本業の商品や事業で復興に貢献していくこと」と述べ、これが結果的に復興につながるとの考えを強調した。
さらに、震災後の新たな社会基盤の構築に向け、電力不足や停電対策に対しては省エネ機器の普及牽引を行っていく。また創エネや蓄エネ、エネマネの新提案を行っていくほか、被災地の本格復興や新たな新たな震災対策については、家・ビル・街 まるごとソリューションの展開を図っていくという。
■3事業分野に再編。三洋のサブブランドも適宜活用
続いて大坪氏は、2011年度から事業再編に力を入れていく計画を説明。パナソニックは今年4月1日にパナソニック電工と三洋電機の完全子会社化を完了しているが、今後は事業再編の前倒しを推進、早期に成長戦略を加速させることを基本計画としている。
グループ全体での事業構造では、現在パナソニックがデジタルAVCネットワーク/アプライアンス/電工パナホーム/デバイスの4セグメントと三洋電機の5セグメントになっているが、これをビジネスモデル別の3事業分野に分け、コンシューマー/デバイス/ソリューションの3事業分野に分ける。
今後はこれらの3つの事業分野に9つの事業ドメインがぶらさがる構造となる。たとえば、AVCネットワークスはコンシューマー事業分野の中に入るというかたちだ。
コンシューマー事業分野では、マーケティング力強化に力を入れる。中でもAVC関連については、現在のAVC社の海外システム販社を除いた部分と、三洋電機のテレビ/プロジェクター部門を統合させ、AVCネットワークスという組織で運営していく。
AVCネットワークスの2012年度計画は、売上高2.1兆円超と営業利益率3.9%以上の実現を狙う。パナソニックと三洋のシナジーを創出することで、プロジェクターではラインナップを強化。常設プロジェクターナンバーワンを目指していく。またXactiブランドで親しまれたタテ型ムービーについては、「動画+写真」のアクティブな撮影スタイルで新規需要を開拓し、ユーザーと販路を拡大することで、HDグローバルシェア30%超に挑戦するという。
さらに薄型テレビ事業では、現地発のボリュームゾーンの商品投入を強化し、新興国のシェア向上をねらっていく。インドでは音にこだわり、コスト力のある直下型LEDモデルを投入するほか、新興国では、これらの地域でニーズの高い、USB動画再生機能を標準搭載していくという。
また大坪氏は「新しい本社の姿」として、これまでの、パナソニックやパナソニック電工、三洋電機がそれぞれ本社をもっていた形態から、一つの本社を中心に、周囲に5つの地域統括を置く形態へ変えることを説明。これにより筋肉質でスピーディー、かつグローバルな経営を目指していく。
三洋電機については、パナソニックの3事業分野/9ドメインの外に、事業部門と管理部門を置く。この三洋電機法人は、9ドメインに統合しないデジカメOEM事業などの運営、三洋電機に帰属する資産の管理運用などを行っていくという。
また大坪社長は「ブランドの使い方についても整理しておく」と述べ、コーポレートブランドとサブブランドの使い分けにも言及した。
「Panasonic」ブランドは、コーポレートブランドとして、全事業分野で一本化することを基本とする。一方、LUMIXやVIERA、DIGAなど、もともとパナソニックが使っていたものはもちろん、eneloopやGorilla、Xactiなど三洋電機のものまで、サブブランドについては必要に応じて活用していくという。
■薄型テレビは「デバイスにこだわらないインチ戦略」に転換
続いて大坪氏は、今後の事業改革について説明を行った。事業改革は「攻める」「変える」をキーワードに行っていくという。
「攻める」では、新興国での大幅な拡販を狙い、売上げを前年比127%の6,150億円を目指していく。このために「インド大増販プロジェクト」を行い、現地での商品ラインナップを強化。Panasonic Beautyを新展開していくほか、マーケティング体制についてもブランドショップを増やすなどの拡充を行っていく。
また、次世代照明デバイスの開発についても「攻める」一環として紹介。有機EL照明は「LED照明と市場を二分する可能性がある」とし、パナソニック電工と出光興産で設立したパナソニック出光OLED照明(株)などを使って、照明用有機ELパネルの事業家や市場開拓を行っていく。
事業改革の「変える」部分については、薄型テレビの事業構造改革に力を入れていく。
薄型テレビでのパネル事業ではまず、外部調達や提携を拡大し、新規投資を凍結。アセットライト化を強力に進める。既存設備での生産については「デバイスにこだわらないインチ戦略を行う」として、液晶パネルについては「マーケティング戦略に則ったサイズ展開を行う」と説明した。プラズマパネルについては大型化やフルHD化シフトを加速させるほか、「非テレビ向け」の拡大も行って稼働率を上げるという。
また薄型テレビのセット事業では、海外生産体制を強化し、モジュール生産をマレーシアやタイで行うほか、新興国向けの開発もマレーシアで行う。機種展開については、液晶テレビの3D対応モデルを中型でも展開し、新興国での普及価格帯モデルを増やす。さらにプラズマはフルHDの大画面モデルに集中させ、フルHDでは全シリーズを3D対応させる。このほか、IPTVについても強化を継続していく。
経営再編では、再編前で38.5万人の従業員を、2012年度には35万人規模に減らす。また人員削減の他にも様々な構造改革を行い、拠点の再編や人員再配置も実行していく。構造改革費用は2011年度に1,100億円規模、2012年度に500億円規模を想定している。
さらにパナソニック電工や三洋電機などとのシナジー効果を発揮することで、売上を2010年度の8.7兆円から2012年度には9.4兆円へ増やすことを計画。営業利益率についても2010年度の3.5%から2012年度には5%以上に高めることを目標としている。