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「ローカルフィット商品」をさらに強化

インドネシアで“レグザタブレット”を発売 ー 東芝・大角氏に聞く新興国での事業展開

公開日 2011/12/08 19:33 ファイル・ウェブ編集部
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(株)東芝は、12月15日からインドネシア市場に向けてAndroidタブレット「REGZA Tablet AT1S0」を発売する。東芝デジタルプロダクツ&サービス社 社長 大角正明氏を取材し、同社の新興国における今後の事業展開を尋ねた。


(株)東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 社長 大角正明氏
インドネシアでのタブレット製品の展開は、同社の新興国におけるビジネス戦略において重要な意味を持っている。今回同社は、インドネシア現地の大手メディア企業であるコンパス・グラメディア社(以下 コンパス社)と提携し、電子配信サービスを展開。タブレットには、コンパス社が展開する雑誌の電子版が読めるアプリがプリインストールされる。


インドネシア市場向けに発売される「REGZA Tablet AT1S0」

ローカルアプリコンテンツをプリインストールしている
新製品は7インチのAndroidタブレット「REGZA Tablet AT1S0」。プラットフォームにはAndroid OS 3.2を採用している。同社がアジア市場向けに7インチのタブレット製品を販売するのは本機が初めて。本機には電子書籍アプリ「Gramedia Majalah Lite」のほか、料理レシピ/女性情報誌/生活関連情報/IT製品情報/サッカー/女性向け総合情報/インテリアと、7種類のコンテンツアプリが標準搭載されており、購入してすぐ利用できる。現地での販売価格は日本円で5万円前後になる見込み。同社の月販予測は5千台から1万台前後。

東芝はこれまでも、グローバル市場における事業規模の拡大を図るため、新興国市場でのビジネス強化に取り組んできた。同社が戦略の基本としてきたのが、ローカル市場の需要に見合った開発・製造・販売体制を強化し、新興国市場でのプレゼンス拡大を実現することだ。


東芝のグローバル市場における事業拡大戦略

11年度に実行してきた拠点整備への取り組み
同社が新興国市場で具体的に取り組んできたのは拠点の整備で、1月はエジプトに液晶テレビ製造合弁会社を設立。6月からは本格生産をスタートし、以降は順調な立ち上がりをみせているという。中南米では3月にチリ/ペルー/コロンビアで、7月にアルゼンチンでそれぞれ販売会社を立ち上げた。また4月にはフィリピンに販売会社を設立。さらにインドでは6月からテレビ製品の現地生産を開始。またローカル市場の需要を的確にキャッチするため、インドネシア/ベトナム/インドにはR&Dセンターを設立した。


“Power TV”シリーズをテレビカテゴリの代表的な「ローカルフィット商品」に位置づける
大角氏は、新興国市場のユーザーニーズを捉えた商品を「ローカルフィット商品」として位置づけ、テレビのカテゴリーでは本体にバッテリーを内蔵した液晶テレビ“PowerTV”シリーズを、2010年末からインドネシア/マレーシア/フィリピン/シンガポール/タイ/ベトナムの6カ国で販売を開始した(関連ニュース)。今秋からはシリーズ“第2弾”として、アナログ放送に超解像技術を用いて高画質化するPS20シリーズ、PB20シリーズや、コンパクトサイズのHV10シリーズなどラインナップ拡充を図った。大角氏は「“PowerTV”シリーズの第1世代機は、発売以来1年間の累計販売台数が200万台を記録した。第2世代の投入により、この勢いをさらに加速させたい」と語る。

今秋発売の“第2弾”モデル「32PB20」

新興国市場でニーズの高い「動画ファイル再生」が楽しめるよう本体側面にUSB端子を設けた


CRT置き換えモデルとして展開する「19HV10」

上位機の狭額ベゼルデザインモデル「46TL20」
新興国における東芝のテレビ製品の販売状況については「右肩上がりの好調子」であるという。昨年11月に“PowerTV”シリーズが投入された後、ベトナム/インドネシア/マレーシアで東芝製品のシェアが急速に拡大し、同社の調査データによれば、ベトナムでは一時アジア市場で初めてのNo.1シェア(25%)を獲得し、現在も2位の位置に付けているという。調査結果によれば、インドネシア、マレーシアにおいてもトップシェアを争う好調ぶりを見せている。またタイやインドでも、本年夏頃から積極的に展開してきた広告キャンペーンにより、シェアは急速に高まりつつある。

新興国における東芝のテレビ製品販売状況の調査データ

さらに新興国でのテレビ製品の販売戦略について、大角氏は「メインサイズを32インチから24インチに変更し、20インチ台のCRTテレビからの買い換え需要を上手く刺激することができた」とし、同社の主力サイズのシフトチェンジ戦略が功を奏したことについて強調した。


PCカテゴリーの「ローカルフィット商品」として紹介された“Satellite C600”シリーズ

新興国でのPC製品の販売状況調査データ
PCの「ローカルフィット商品」は、新興国専用モデルとして発売するノートPC“Satellite C600”がブランドのシェア拡大を牽引している。本機の特徴として大角氏は「スタンダードモデルの機能を備えつつ、399ドルという低価格を合わせて実現したPCとして人気を集めている」とし、「新興国で需要の高い、PCで動画・音楽視聴を楽しむというライフスタイルに、“高品位”の付加価値を手軽に提供する製品として、現地のニーズにフィットしていることが成功の背景」と述べた。


Satellite C600シリーズ
新興国市場でのノートPCの販売状況を調べた東芝の調査データを見てみると、インドネシアでは2010年末からシェア2位を維持。マレーシア/インドでもシェアの拡大を実現している。大角氏はこの成果に「今後もより強い商品を提案して、PCのシェア拡大を実現したい」とコメントした。

これらの「ローカルフィット商品」を強化してきたことで、11年度7月〜9月の第2四半期は、液晶テレビ販売台数の伸長率が主要テレビメーカーの中で最大となり、グローバルで136%、新興国市場では221%という数値を達成したことがディスプレイサーチの調査結果からわかったという。


グローバル市場におけるプレゼンス拡大の一翼を、新興国市場における成長が担っているという
新興国市場における今後の取り組みについて大角氏に訊ねた。大角氏は「ローカルフィット商品」の開発をさらに加速させるとともに、市場に根ざした各種のローカルサービスを商品に搭載し、また有力パートナーとの連携も図りながら、差別化を含んだローカルフィット商品により市場創出を図ることが大事、と指摘する。今回、インドネシア市場で発売される「REGZA Tablet AT1S0」は、市場にフィットしたサービスを、現地パートナーとの協業により実現したモデルケースとなる。大角氏は今後さらに、同社が欧米日で展開するクラウドサービス「Toshiba Places」を、新興国などアジア地域に拡大していく考えについても言及した。その他、人材登用についても新興国地域からの採用を全社的に増やしていく。

有力パートナーとの連携も活用しながら、東芝独自の魅力を備えた商品を展開していく

インドネシアの有力メディアグループ、コンパス社との連携を発表

大角氏はまた、巨大なポテンシャルを持つインドネシア市場に引き続き注力していく計画を強調。生産環境については、液晶テレビの工場出荷規模を2015年度までに700万台に拡大し、一大生産拠点に位置づけていく。ホームアプライアンス製品についても、2012年夏に液晶テレビ工場の敷地内に洗濯機工場を建設し、15年には二槽式洗濯機を年間100万台生産の規模に持ち上げる。販売体制についても2013年度に、インドネシア国内で「PC/TV/ホームアプライアンス」のカテゴリを合わせて、売上高10億ドル(約800億円)を目指していく。大角氏は「今後拡大スピードを速めながら、新興国における当社のデジタルプロダクツの販売台数構成比を、11年度の32%から、13年度には50%に高める。これまでは欧米日に集中していたリソースを、徐々に新興国にもシフトしていくことで事業を再構築し、基盤を強化していく」と意気込みを示した。

インドネシア市場への注力を宣言

新興国におけるデジタルプロダクツの販売台数構成比を、13年度には50%に拡大していく

日本国内の事業環境について補足を加えた大角氏は「価格低下、需要減など厳しい状況だが、当社ならではの戦略的な商品を提案し続けることが私たちの使命だと考えている」とコメント。国内市況については「この年末商戦で、ようやく少し戻ってきたと感じている」とし、同社調査では、BDレコーダーが今年の4月から10月の期間で、対前年比で361%の伸長を記録したことや、液晶テレビ/ノートPCは20%を超えてトップグループシェアを堅持しており、デジタル商品のプレゼンスが向上していると紹介。12月10日から発売されることが決まった4K対応の液晶テレビ“レグザ”「55X3」をはじめ、「レグザサーバー」「レグザタブレット」(関連ニュース)など、注目商品が今後の成長を牽引するだろうと期待を寄せた。

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