CES Unveiled Tokyo開催 − 5月のCESアジアの展望とは/新興国市場のカギはスマホにあり
■2015年CESのトレンドまとめ
Koenig氏は2015年のCESでのトレンドについても発表。テレビについては「量子ドット技術」「HDR」「湾曲テレビ」「4K」が、オーディオでは「ハイレゾ」がキーワードだったと語る。
「量子ドット技術は画質の表現力を高めるもので、コンシューマーにとって価格以上に重要なポイントになるだろう。HDRは今後もプレミアム価格帯モデルを中心に搭載機が増えていくのでは。湾曲テレビは、出荷台数は伸びているもののまだニッチな存在。デスクトップモニターではアリだと思うが、大型テレビでも付加価値になるかどうかは判断が難しい市場だ。そして4Kだが、今後40インチ以上のモデルはほぼ4K対応になるはず。その傾向は我々の予想を上回るスピードで進んでいくかも知れない。特に中国市場での4Kモデルの売れ行きは非常に大きい」(Koenig氏)。
またハイレゾについては「コンシューマーはこういったクオリティの高いオーディオ体験を求めている。競争が非常に激しい分野であり、今後は廉価化が進み手が届きやすいものになっていくのではないか」との見方を示した。
■今後注目は「スマートホーム」など5ジャンル
さらに、発展が目覚ましい今後注目のジャンルとして「スマートホーム」「VR(Virtual Reality)/AR(Augmented Reality)」「ウェアラブル」「ロボティクス」「自動車関連」についても紹介された。
「今年のCESで、スマートホームはリアリティのあるものになってきたと感じた。DIY的に取り入れられるものも増え、家庭内の全システム・全部屋がコネクトされたインテリジェントな居住空間が、人々をケアするかたちになってきている。VR/ARはテイクオフした感があり、ここには沢山のクリエイティビティが詰まっていると思っている。facebookがOculus VR社を20億ドルで買収したことは記憶に新しいが、それだけ可能性があるということだろう。様々なメーカーも参入してきている。今後は生産性の向上や、ビジネス化が重要になってくるだろう。
ウェアラブルは、細分化が進んでいる。スマートウォッチだけでなくfitbitのようにフィットネス/ヘルスケア用途のものも注目を集めているし、腕時計のようなかたちだけでなく、自転車につけたりニット帽に埋め込んだりするものも登場してきている。
ロボティクスは、東芝のコミュニケーションアンロドイドのようなものからお掃除ロボットまで幅広い活用方法がある。自動車関連については非常に多くのポイントがあるが、たとえばコネクテッドカーなどのトレンドは2015年以降も続いていくだろう」(Koenig氏)。
そのほか、マス向け製品だけではなく、3DプリンターやドローンなどBtoB向けアプリケーションにも注目のものがあることにも触れられた。
■トレンドのカギを握る「スタートアップ企業」の現状とは?
前述のとおり「インターナショナルCESアジア」はイノベーティブな会社を集めて展示を行うことも特徴としている。会場には、今年のCESにスノーボード用バインディング「SNOW-1」などを出展して話題を集めたスタートアップ企業「Cerevo(セレボ)」代表取締役 の岩佐琢磨氏と、ソニーとIoT会社を立ち上げたベンチャー投資ファンド「WiL」代表取締役の西條晋一氏が登場。日本経済新聞 論説委員 兼 編集委員でテクノロジー分野に知見を持つ関口和一氏の司会のもとパネルディスカッションを行った。
岩佐氏は「『日本の大企業が元気がない』というより『大企業自体が元気がない』のが現状。いまベンチャーが注目を集めているのは、IoTの時代になったからというよりは、イノベーティブな製品を作るためのコストが下がってきていることと、そういう仕組みが整備されたことが理由では。大企業に比べてスタートアップはリスクテイクしやすいし、AV関連は安くて性能の良い部品を手に入れられるので参入もしやすい。やってみたいという人は周りをみてもいるので、もう一年くらい待ってくれればもっと増えるのでは? 日本は世界でいちばんハードウェア技術者が多い国。回路やメカの設計は家電のキモとなる部分。そういった人材層が厚い国でハードウェアスタートアップをやるのは意味があると思う。それに、全体的に(製品化までの)スピードが遅い。デザインと設計は日本、アセンブリはアジアの他の国、でも良いはず」と意見。
関口氏は「日本は大企業モデルで成功したが、中小ではまだ。中小企業が大企業の下請けになっているという構造自体を変えないといけないかも知れない」と分析。
西條氏は「ベンチャーキャピタルの投資資金は余るほどあって、投資先を探している。だから起業家がもっと出てきてほしい。そのためにはムードと成功事例が必要」と語っていた。