今年のSHVシアターはN響「悲愴」
<NHK技研公開:8K編>様々な技術が「8Kレディ」に。55型8K液晶や13.3型8K有機ELなども
また、「ここまで来た8Kディスプレイ」と題し、パナソニックが開発した55インチ8K液晶ディスプレイや、半導体エネルギー研究所(SEL)が開発した13.3インチ8K有機ELディスプレイを展示。大画面を主に想定している8Kスーパーハイビジョンだが、中小型ディスプレイでも精細感などを充分に体感できることをアピールしている。
なお、55インチ8K液晶ディスプレイはフレーム周波数120Hz対応で、ピーク輝度は400カンデラ、色域はDCIやAdobeRGBをカバーし、コントラストが1,500対1というスペック。IPS-Pro液晶で178度と広視野角であることから、各種プロユースにも活用可能としている。
一方の13.3型有機ELディスプレイは、8K有機ELディスプレイとして世界最小で、664ppiという画素密度を実現。8Kタブレットなどのパーソナルユースも可能だと紹介している。
また、別ブースでは8K放送でも採用されるBT.2020をカバーするレーザーバックライト液晶ディスプレイも展示。三菱電機によるもので、50インチの4K対応モデルだが、将来の8K対応を睨んでの展示だという。
加えて、BT.2020で撮影された元映像を、より自然にBT.709に収めるよう変換する装置も展示し、8K撮影したソースを現行のフルHD放送にも活用できる手法を提案している。
さらに、JVCと共同開発した、8K/120Hz対応の「フルスペック8Kスーパーハイビジョンプロジェクター」も展示。同製品は、従来の4K素子と同サイズの1.3インチの3,300万画素反射型液晶素子(LCOS)3枚を120Hzで駆動し、光源にRGBの半導体レーザーを採用したというもので、約144Gbpsにもなるフルスペック8K映像信号を、光マルチリンクケーブル(U-SDI)1本で入力できる。会場では、本プロジェクターからの8K映像を450インチの大型スクリーンで視聴できる。
そのほか、8Kはハイブリッドキャストにも活用できることも紹介。大画面を活かして1つのディスプレイ上に放送の8K映像とネットからの情報を組み合わせて表示させたり、現行のハイブリッドキャストのようにスマホ/タブレットを連携させるといった利用方法の提案も行っている。
また、8K用の音響透過スクリーンも展示。従来の音響透過スクリーンでは穴の繰り返しピッチが大きく、8Kの最適視聴距離では穴の繰り返しが見えてしまったり、音が通っても高域で減衰するといった問題があった。これに対し、穴の繰り返しピッチを画素より小さくし、音の減衰も少ないスクリーンを開発したという。
■8K放送実現のための様々なハードウェアや符号化技術
そして、ロンドン五輪やサッカーブラジルW杯などでも使用されたデュアルグリーンカメラや、単板カメラなどで不足する色画素情報を周辺画素から補間するデモザイキング装置、ハイビジョンの約100倍のデータ量にもなる8K映像信号を1本のケーブルで伝送できるインターフェース「U-SDI(Ultrahigh-definition Signal/Data interface)」など、8Kコンテンツを制作するためのハード面を紹介。U-DSIでは、新たに22.2マルチチャンネル音声多重装置を開発し、番組制作に必要な映像と音声信号を一度に伝送できるようになったという。
また、8K映像と22.2ch音響を高品質なまま効率的に圧縮して伝送する技術の研究成果として、国内標準規格ARIB STD-B32 3.1版に準拠した方式で映像と音声を圧縮伝送できるエンコーダー/デコーダーを開発。既開発のMPEG-H HEVC/H.265による8Kエンコーダーに対応した8Kデコーダーの新開発によって、8K映像をリアルタイムにエンコード/デコードできるようにした。
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