今年のSHVシアターはN響「悲愴」
<NHK技研公開:8K編>様々な技術が「8Kレディ」に。55型8K液晶や13.3型8K有機ELなども
加えて、22.2ch音声に対応したMPEG-4 AACによる音声エンコーダー/デコーダーと、圧縮した映像と音声のデータを束ねて伝送するためのMPEG-H MMTによる多重化・多重分離機能も開発。今後は、これらの装置で8Kをエンコード/デコードし、実際の放送衛星を使用して伝送実験を行うことで、開発装置の動作検証を進めるとともに、フレーム周波数120Hzに対応した8Kエンコーダー/デコーダーの開発を進めるとしている。
エンコード技術ではさらに、「リアルタイム超解像復元型映像符号化システム」も紹介。これは「Mastered in 4K」に近い考え方を持った技術とも言えるもので、元々の映像をいったんダウンコンバートし、そのダウンコンバートした際の情報を持たせたまま信号を伝送することで、その情報を利用して正確な超解像でアップコンバートするという技術。ダウンコンバートしてからの伝送を行うことで伝送時の圧縮率を抑えられるメリットがある。会場では4Kを2Kにしてから伝送して超解像で4Kに戻すというデモを行っており、将来的には、本技術によって8K映像を既存の圧縮技術の1/3程度のビットレートにするという。
■8K普及のための大画面シート型有機ELディスプレイの研究
またNHKでは、大型液晶テレビでは一般家庭への設置の際の手間などもあるため、8Kの普及のために薄くて軽い大画面シート型有機ELディスプレイの研究も行っている。これに関して、有機ELでの動きやボヤけの改善と長寿命化を両立するという「時間アパーチャー適応制御駆動技術」と、フィルム基板上でも長寿命化が可能な逆構造有機ELデバイスを展示している。
「時間アパーチャー適応制御駆動技術」は、部分的にパネルの発光時間率を制御する駆動方式。動画質の改善効果とともに、瞬時輝度の抑制による長寿命化が期待できるという。
逆構造有機ELデバイスは、その名の通り通常とは逆の構造にした有機ELデバイス。酸素や水分に強い新しい材料のみを使用できるため、封止性能の低いプラスチックフィルム基板を用いたディスプレイにおいても長寿命化が期待できるとしている。
また、8K/120Hzでの番組制作を実現させるため、圧縮記録装置も開発。120Hzの8K信号を記録できるメモリーパックと、1本の光ケーブルで8K信号の入出力が可能な機器間伝送インターフェースに対応した記録装置用の処理部を開発して展示。メモリーパックでは書き込む並列処理数を従来の2倍にし、さらにデータ書き込みの待ち時間を短縮するなどして書き込み効率を向上させ、記録速度を従来の2倍に高速化した。
そして、8K番組の長期保存技術として高密度ホログラムメモリーの研究を行っていることも紹介。従来は多重方式として、媒体への光の入射角度を変えながらデータを多重記録する「角度多重」を用いていたが、今回は記録媒体の配置自体を多重軸に加えた「二次元角度多重」を開発し、多重数を4倍に向上させた。
会場ではこのホログラムメモリーに収録した8K映像を再生。ホログラムメモリー再生のための並列信号処理手法とともに、機構系を改良することで、より安定した再生が行えるようになったという。