Z9DとA1Eの「キャラの違い」も説明
<CES>画面から音が出る新体験。ソニー初の4K有機ELテレビ「A1E」を見た、聴いた
またA1Eシリーズについて小倉氏は「Z9Dとは追求するところが違う。徹底的に映像にこだわったのはZ9Dで、A1Eは有機ELのメリットであるナチュラルな画作りや、薄型であることによる新しい体験を狙った」ともコメント。あくまで同社の画質としての最上位機はZ9Dであるという。
とはいえ、A1Eの画質を軽視しているわけではない。Z9Dで培った技術は有機ELでも有効だという。中でも、X1 Extremeの果たしている役割は大きい。
X1 Extremeではまず信号解析を行い、その後信号処理、パネル駆動という流れのほか、パネル駆動した際にフィードバックされる情報を解析し、その解析結果を信号処理に組み入れる、という2つの流れがある。このパネル解析によって小さなバラツキも抑えることができ、またパネルの種類や大小によらず、最適な映像処理ができるのだという。
そのほか、HDRリマスター処理も有機ELというパネル特性に合わせて最適化。デュアルデータベースプロセッシングも「データベースそのものはZ9Dと変わらないが、そのデータの引き出し方を変えている」という。
難しいのは、約800nitsというパネルの明るさの上限だという。Z9Dはもっと明るいが、A1Eの場合は800nitsの中で、もっと明るい部分の情報が入っている映像を表現しなければならない。
■映像信号処理の優位性を実感。暗部と明部のノイズも対策
映像を他社製有機ELテレビと仔細に比較視聴する。やはり大きな違いを感じるのは、デュアルデータベースプロセッシングによるディテール復元能力だ。草や木の細かな表現や、羊の毛の流れなど、他社製有機ELテレビでは見えづらいディテールが、A1Eではしっかりと描き出せている。
そのほか、最暗部と最明部付近のノイズ対策や階調表現能力にも差があった。他社製有機ELテレビでは暗部のノイズが多く、全体的に黒浮きのように見えてしまう夜の闇が、A1Eではしっかりと漆黒として表現されている。
またネオンライトを撮影した映像では、明るい背景の上に電球があることが、A1Eでははっきりとわかる。このあたりも、他社製有機ELテレビでは判別しづらくなる部分だ。
最後に、本機がドルビービジョンを採用したことについても触れておこう。ドルビービジョンを採用したのは、映像配信業者やコンテンツプロバイダー側からの意向を受けて判断したものだという。処理に際して特別なチップは不要で、X1 Extremeを使ったソフトウェアソリューションで実装しているという。「X1 Extremeは処理能力が高いため、ドルビービジョンの処理を入れても十分動かせる」(同社)。
昨日行われたプレスカンファレンスでは、Z9Dもドルビービジョンにファームウェアアップデートで対応することが明らかにされたが、これもX1 Extremeの処理能力の高さゆえと言えそうだ。
小倉氏は説明の最後にもう一度、「A1EとZ9Dはキャラが違う」と繰り返した。そのユニークなスタンドレス/スピーカーレスのスタイルや、意外なほど良いサウンドを聴くと、その意味がよくわかった。まだ発売時期や価格などが発表されていないことだけが気がかりだが、正式発表を楽しみに待ちたい。