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完全ワイヤレスイヤホンのための新SoC「QCC5100」発表

<CES>クアルコム担当者に聞いた、「完全ワイヤレスイヤホンに革命をもたらす新チップ」とは

公開日 2018/01/14 12:31 山本 敦
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「左右のイヤホンにBluetoothモジュールを入れて、プレーヤーとイヤホン間の通信をさらに最適化することができます。1台のソース機器に対して左右のイヤホンを同時にペアリングして、ソース機器の側であらかじめ左右のオーディオ信号に分割してからそれぞれのイヤホンに送り出します。

こうすることで片チャンネルあたりに通す信号の情報量を減らすことができるので、SoCにとって処理の負担が減り、接続の安定性が高まるとともに駆動時の消費電力も下がります。伝送時の遅延性能もだいたいaptX Low Latency(ロー レーテンシー)のコーデックのレベルにまで高められます」。

昨年末に開催されたSnapdragonのメディア向けイベントでも、1台のソース機器に対して左右のイヤホンを同時に接続して接続の安定性を高める独自技術が言及された。今回はその詳細がハーヴェル氏のコメントによって明らかになった格好だ

なお、この機能についてはQCC5100と、昨年末にクアルコムがモバイル向けの次世代のフラグシップSoCとして正式発表したSnapdragon 845(関連ニュース)とを組み合わせた環境に限定して使えるスペシャルモードとして用意されているのだという。

スマートフォンのペアリングリストには左右のイヤホンが一つのプロダクトとして表示されるので、ユーザーが使い勝手の面で新たに意識すべきことはない。ソース機器の側が音楽ストリーミングのデータと一緒に左右のイヤホンに同期情報を送出して正確なステレオ再生の同期を図る。

「QCC5100のチップセットは2018年の第1四半期(=3月の終わりごろ)までに量産化が計画されていますので、以降Snapdragon 845を搭載する端末が出てきたときに、プロダクトのレベルにまで落とし込んだ具体的な内容がお伝えできると思います」。

ハーヴェル氏が言及したスペシャルモードでは、同じオーディオ信号を伝送した場合にプロセッサーの処理に余力が確保できることになる。しかし、96kHz/24bitを超えるハイレゾ信号をBluetoothでも送信できるようになるのかといえば答えは「否」ということになり、そこはBluetoothオーディオの機能向上と後継規格の登場を待つ必要がありそうだ。

現在のところは最大48kHz/24bitのBluetoothオーディオの伝送までをサポートするaptX HDが天井ということになるが、それでももし今年の後半頃にaptX HDによる高品位なオーディオリスニングが楽しめる完全ワイヤレスイヤホンが続々と登場することになれば大歓迎だ。

ハーヴェル氏にQCC5100を搭載するデバイスの登場がいつ頃になりそうか水を向けてみたが、当然ながら彼らの口からは「コメントできない」という答えが返ってきた。ただし、「クアルコムとしてサンプルはもうご用意できていますので、あとは皆様のご想像におまかせします」とヒントも与えてくれた。

ハイレゾ対応USB type-Cインターフェースも出展

クアルコムがCESに出展したブースでは、ほかにもUSB type-Cをインターフェースとして採用するオーディオ機器向けのSoCチップ「WHS9410/15/20」によるリファレンスデザインが紹介されていた。こちらは昨年の6月にクアルコムが開催した記者会見のレポートでも詳細が伝えられているものだ。

クアルコムのブースにはUSB Type-Cを搭載するデバイス向けのSoCを紹介するリファレンスのデモが行われていた。最上位のチップでは最大192/24のリニアPCM音源のデコードにも対応する

トップエンドにあたるWHS9420には192kHz/24bitのリニアPCM信号のデコードまで対応するDACチップが統合されている。ハーヴェル氏は他社のSoCに比べてクアルコムのチップはオーディオのパフォーマンス(=音質)を重視していることが大きな違いであると述べている。ANCはフィードバック・フォワードの両方をサポートしている。

昨今はUSB type-Cを搭載するハイエンドスマホやノートPCが増えてきたので、これらのデバイスに直接つないで最もコンパクトにハイレゾリスニングが楽しめる、クアルコムのSoCを搭載したイヤホン・ヘッドホンが今年は数多く誕生することになるかもしれない。

家庭や建物内に安定したネットワークを提供する「Wi-Fiメッシュ」

もうひとつ、ブースに展示されていた興味深いトピックスである「Wi-Fiメッシュ」のプラットフォームについて紹介しておこう。

家屋の大きなアメリカでは、一つの家庭や建物に均等なスループット性能を実現するWi-Fiネットワークを張り巡らせる必要がある。また昨今のIoTデバイスの普及に伴い、ホームネットワークの安定性をさらに高めるための技術にも関心が向いてきたことから、クアルコムが提案する「Wi-Fi SON(Self-Organizing Network)」のコンセプトに注目が集まっている。

クアルコムWi-Fi SONのプラットフォームに対応するデバイスもブースに。ASUSはワイヤレススピーカーにアクセスポイントを組み込んだ製品を発売している

現在アメリカ国内ではWi-Fiメッシュに対応するアクセスポイントの販売が好調であるという。Wi-Fiメッシュに対応する製品を屋内の色んな場所に置くことで均等に品質の高いネットワーク環境を宅内に張り巡らせることができる。日本でも一般に販売されている「Wi-Fi中継器」と用途は似ているように思えるが、クアルコムのWi-Fi SONに対応するチップセットを搭載したメッシュ機器の場合、それぞれのアクセスポイントになるデバイスが連携しながら、ネットワーク全体の通信スループットが安定したレベルに保たれるように自律(=Self Organizing)して動けるのが特徴だ。

クアルコムではスマートホーム向けに、Wi-Fiメッシュネットワークのプラットフォームとリファレンスデザインを拡張したことをCESの機会に発表した。ブースには現在様々なパートナーがアメリカで発売している商品が展示されていたが、中にはASUSのようにWi-Fiメッシュをワイヤレススピーカーに組み込んで商品化した事例もある。日本国内でも今後スマートホームの普及に伴い、Wi-Fiメッシュのアクセスポイントを搭載したスマートスピーカーやIoTデバイスに関心が向けられることになるかもしれない。

(山本敦)

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