今後登場予定の新フォーマットにも対応予定
デノン、準フラグシップAVアンプ「AVC-X6500H」。11ch独立基板パワーアンプ搭載、32万円
また、モノリス・コンストラクションを実現するために、アンプ素子をヒートシンクに対してチェッカーマウント状に配置して、熱源を分散させ効率的な放熱を実現する「チェッカーフラッグマウント・パワートランジスタ」を、AVC-X8500Hと同様にAVC-X6500Hも採用する。ヒートシンクにはアルミ押し出し材を用いている。
なお、AVC-X8500Hは一体型モデルとしては破格の筐体サイズを活かして、パワーアンプの独立基板を電源トランスを中央において左右シンメトリカルにレイアウトしている。AVC-X6500Hは筐体サイズの制限からシンメトリカル・レイアウトではなく11ch分の基板を横一列に配置しているが、むしろAVR-X4500Hと同サイズの筐体に各ch独立基板で11chパワーアンプを搭載したことは驚くべきことだろう。
なお、モノリス・コンストラクションを実現させるメリットとして、高橋氏は「ティンバーマッチングの最適化」を挙げる。これはマルチチャンネルを構成する各スピーカーをいかに同一クオリティにするかの考え方なのだという。
■ダブルレイヤードシャーシで共振を排除
筐体のシャーシ構造も各グレードで異なっている。AVC-X8500Hは3層構造(ボトムプレート+ボトムシャーシ+トランスプレート)のトリプルレイヤードシャーシと、3ピース構成のトップカバーを採用。今回登場したAVC-X6500HとAVR-X4500Hは2層構造(ボトムシャーシ+トランスプレート)のダブルレイヤードシャーシを採用、1ピースで構成されたトップカバーを用いている。なお、AVR-X2500H以下のモデルはシングルレイヤードシャーシ/1ピーストップカバーという構成だ。
AVC-X6500HとAVR-X4500Hが採用するダブルレイヤードシャーシだが、AVR-X6500Hは上位モデルとしてより強固なシャーシを採用する。具体的には、シャーシとトランスベースがAVR-X4500Hではそれぞれ1.0mm厚なのに対して、AVC-X6500Hはそれぞれが1.2mm厚となっている。また、AVC-X8500Hと同じ共振防止リブ付きフットを採用している。
ダブルレイヤードシャーシの利点も改めてアピール。衝撃の伝播がより小さく、ノイズもより速やかに減衰するという。
また、最新世代の各モデルではAVC-X8500Hにならってデザインを刷新しているが、AVC-X6500Hも同様。さらにはこれに伴ってトラップドアを改良。その厚みを従来から1mm増した5mm厚として、ドア自体の質量も243gと従来から110g重くした。これにより、重心をセンターに集めることが可能になり、重量アップも合わせてさらなる不要共振の排除が可能になったという。
■D/Aコンバーターは8ch DAC「AK4458VN」を2基搭載
DACチップについては、AVC-X6500Hは旭化成エレクトロニクス(AKM)の8ch DAC「AK4458VN」を2基搭載する。これはAVR-X4500Hと同様で、対してフラグシップAVC-X8500HはAKMの2ch DACチップ「AK4490EQ」を8基搭載する。
AVR-X4500HとDACチップのモデルと個数は同じとはいえ、AVC-X6500HのD/Aコンバーター回路には数段上の物量が投入されている。それは上の写真をみれば明かだろう。なお、デノンではD/Aコンバーターは「アナログ回路」と捉え、デジタル系基板と切り離した独立基板として、ノイズ対策をはじめAVアンプ内においても最良の環境を与えているという。
■11chアンプを余裕を持って駆動する電源部
マルチチャンネル・パワーアンプ用に大出力を必要とするAVアンプにおいて、電源部の電流供給能力は重要だ。一方で、扱うチャンネル数が多いため、ノイズが低いことも求められる。電源部の要となるのが、電源トランスとブロックコンデンサーだ。電源トランスは家庭用に供給される100V電源をアンプに必要な適性電圧に変換する。変換されたAC電源は、ダイオードで整流され、ブロックコンデンサーに充電されることでアンプを駆動するためのDC電源を作りだす。
電源トランスについては、デノンのAVアンプは各モデルでカスタム仕様のEIコアトランスを搭載する。AVC-X6500Hでは、5.3kgという大型EIコアトランスを採用している(AVC-X8500Hは8.6kg、AVR-X4500Hは4.9kg)。カスタム仕様により、オーディオ向けの高電流供給、低リーケージフラックス(漏洩磁束)、低振動を可能として、オーディオ特性とサウンドの両方を追求しているという。
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