米サンディエゴで発表会が開催
スマートスピーカーにもAVアンプにも使える、クアルコム多機能SoC「QCS40x」詳報
その下位クラスに位置付けられる、スマートスピーカーやエントリークラスのサウンドバーに最適なWi-Fi Mesh機能を持つ「QCS404」、小サイズのスマートスピーカーやホームハブ向けの「QCS403」が足場を固める。それぞれCPUのコア数にも違いがあり、QCS404以上は4コア構成、QCS403が2コア構成となる。
クアルコムではこれまでにも、いくつかのスマートスピーカーに採用実績のあるオーディオ用アプリケーションプロセッサー「APQ」シリーズを提供してきた。APQシリーズはスマートフォンやタブレット向けに開発設計されたSoCをベースにオーディオ用途に最適化を図ったICチップだった。そのため、オーディオコンポーネントには不要なほどハイスペックなグラフィックス機能や通信処理向けの拡張性能を積んだままだった。一方でオーディオの機能に特化した作り込みには不十分なところがあったり、SoCに外付けできるメモリがeMMCやDDR4など高価なものに限られるため、最終製品のコストにも影響を与えていた。
クアルコムの開発チームは、オーディオメーカーのパートナーと密にコミュニケーションを図りながら課題を洗い出し、QCS40xシリーズに反映させたという。例えば外付けメモリについてはより安価なNANDやDDR3/DDR2との組み合わせにも柔軟に対応できることから、最終製品のコストダウンにもつながるという。
スマートスピーカーやワイヤレススピーカーをはじめとしたオーディオコンポーネントのメインストリーム製品については、今後クアルコムとしてはQCS40xシリーズの採用を積極的に呼びかけていく方向に向かいそうだ。
■拡張性が充実。開発コストの負担減にも効果
QCS40xシリーズはSnapdragonシリーズと同様にARMのアーキテクチャをベースに設計された1.4GHzのマルチコアCPUを搭載している。ARMベースのオーディオ専用SoCは他の半導体メーカーも展開しているが、クアルコムのQCS40xシリーズではWi-FiやBluetoothとのコネクティビティのほかに、高いカスタマイズ性も特徴として謳っている。ソフトウェアの開発環境にはLinuxベースのSDKが提供される。
DSPにはSnapdragon 855シリーズにも搭載する「Hexagon(Ver.66)」をそのままQCS40xシリーズに移植した。このDSPは、オーディオ専用コアとAIエンジンなどコンピューティング処理専用のコアを分けたデュアルコア仕様となる。
QCS40xシリーズにはCPUとGPU、DSPを組み合わたヘテロジニアス・コンピューティングによる独自設計のAIエンジンが搭載される。こちらもモバイル向けSoCのSnapdragonシリーズの開発ノウハウをベースにしており、ディープラーニングの技術を活かした高度なAI解析による音声認識を可能にする。
クアルコムが独自に開発した高感度ビームフォーミングマイク、高精度なノイズキャンセリングとマルチチャンネル・エコーキャンセル、マルチウェイクワード認識などの「ボイスAI」系の技術については、まさしくこのAIエンジンが受け持つことになる。
「スリープ状態からの高速起動と省電力駆動を実現するパワーマネージメント、ならびにCPUやクラウドを使わずにエッジコンポーネント側だけで高度な処理をこなせるパフォーマンスが、Hexagonシリーズと同性能のDSPを搭載したことによってQCS40xシリーズで実現できた」とQualcomm Technologiesのプロダクトマネージメント部門Sr.DirectorのGary Brotman氏が説いている。パートナーがAIエンジンを活用できるようにクアルコム独自のSDK「Qualcomm Snapdragon Neural Processing Engine(SNPE)」も提供する。
■オーディオ再生は最強スペックが揃う
クアルコム独自のデジタルアンプIC「DDFA」を外付けできる拡張性も備えている。QCS40xシリーズと同日に発表された、出力段ICを統合した新たなDDFAチップ「CSRA6640」にオーディオフィルターを組み合わせるだけで、スマートスピーカーの骨組みを簡単に設計できる。QCS40xシリーズとDDFAの新しいICチップがともに省電力駆動を実現しており、実装面積も極めて小さい。今回クアルコムが発表したふたつのソリューションがウェアラブルタイプのスマートスピーカーや、AIエンジンとWi-Fi通信機能を載せた“スマートヘッドホン”カテゴリを活性化させることになるかもしれない。
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