パノラミック画面などソニーの技術が結集
<CES>ソニーのクルマは音もすごい! “車体の壁が消える” 360度サウンドを体験
■VISION-Sでの360 Reality Audioは「あたかも車体の壁を取り払ったよう」
ホームリスニングの場合、スピーカーで部屋全体を使い立体音響再生環境を構築するが、今回のコンセプトカーでは、4つのシートそれぞれの位置でベストな360 Reality Audio体験が味わえるようスピーカーを組み込んでいる。具体的には車内のフロント側ダッシュボードとヘッドレストの周囲、そして足下あたりの位置に360 Reality Audioの特徴である“下方から迫り来るようなサウンドオブジェクト”を再現するためのスピーカーがある。
コンセプトカーの中ではいくつかの音楽コンテンツを試聴させていただいた。あたかも車体の壁を取り払ったような豊かな音の広がりと、ボーカルや楽器の明瞭な定位感に引き寄せられてしまう。パーカッションのリズムが頭の後ろに回り込みながら左右に移動するようなエフェクトもクリアに再現される。今回、ソニーがブースに出展したサウンドバーや一体型ワイヤレススピーカーで聴いた360 Reality Audioのサウンドとはまたひと味違う、濃厚な密度感だ。
この360 Reality Audioのリスニング体験を切り出し、次世代のモビリティエンターテインメントを担う「VISION-S」のパッケージアイテムのひとつとしていくことも考えられるのだろうか。筆者の質問に川西氏は「考えられると思うが、今はまだ具体的なことは決まっていない」と答えている。
5Gの商用サービスが本格化して来る頃には、クルマとスマートホームをネットワークでつないだり、AIアシスタントがクルマの中で活躍する場面も増えてくるだろう。これらの技術をVISION-Sの中に取り込んでいくことは「いかようにも可能」であると川西氏は話している。
コンセプトカーを試乗体験させていただく際、ソニーのR&Dセンターで360 Reality Audioの技術開発に携わる主任研究員の知念徹氏にも、オートモーティブでの360 Reality Audioの展開を聞くことができた。
知念氏によると、昨年秋に開催された2019 AES INTERNATIONAL CONFERENCE ON AUTOMOTIVE AUDIOにも、BMW 7シリーズに360 Reality Audioのリスニング環境を組み込んだデモを行い、好評価を集めたのだという。360 Reality Audio対応のクルマを広く普及させるための活動も着実に進んでいるようだ。
今後5Gの商用サービスが本格的に立ち上がってくれば、高音質・高画質なエンターテインメントが楽しめる次世代のモビリティにも脚光が注がれることになるだろう。ソニーの「VISION-S」のビジョンも、これから細部が具現化していくのではないだろうか。