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プログレでも歌われたブーリンの数奇な運命

話題のソフトを“Wooo"で観る − 第20回『ブーリン家の姉妹』(Blu-ray)

公開日 2009/06/01 13:52 大橋伸太郎
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映画『ブーリン家の姉妹』は史劇なのだから、筋書きにあまり深入りしないでもいいだろう。王妃が子供を産めなくなったことを知り、宮廷に食い込む好機とばかりに、ブーリン氏は領地に狩りにやってきた王に、勝ち気で頭の回転のいい長女アン(ナタリー・ポートマン)を世継ぎのいないヘンリー八世に差し出そうと企てる。しかし、ヘンリー八世(エリック・バナ)はうぶで心の優しい既婚の妹メアリー(スカーレット・ヨハンソン)の方を愛人に所望する。かくして、姉妹揃って宮廷へ。メアリーはすぐに懐妊し出産するが女の赤ん坊にヘンリーは失望し、フランスの宮廷で洗練と知性を身につけて帰って来たアンに心を移してしまう。術数に長けたアンはすぐに体を与えず翻弄し唆す。ついにヘンリーは離婚を禁止するローマ教会と絶縁して国教会を設立し自ら教会長になり、妃を弾劾裁判にかけて離縁、アンは念願かなって王妃の座に座るのだが…。

本作の製作総指揮は『ノー・カントリー』、近作では『愛を読むひと』のスコット・ルーディン、製作は『エリザベス』のアリソン・オーウェン、脚本が『クイーン』のピーター・モーガン、衣装デザインが『恋におちたシェイクスピア』のサンディ・パウエルである。こうした史劇にも経験を持つ米英のベテランが、今回が長編デビュー作である監督ジャスティン・チャドウィックを支えている。主演は先に紹介した顔ぶれで、運命のシーソーゲームを演じるナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンの姉妹の演技に映画の見所が集約されるが、二人の若手女優は観客の期待に見事に応えきった。撮影はドーバー城のような実在の歴史建築での自然光を活かしたロケを取り入れているが、宮廷でのシーンはすべて制約の少ないセットでの撮影である。この撮影手法が本作の映像を決定づけているといっていい。

本作はセットに史劇としての忠実さを追求し、チューダー朝時代の衣装はホルバインの絵画を参考にし、宮廷風俗の描写に絵画的な重厚さを狙っているが、主演のスカーレット・ヨハンソンを一躍トップ女優に押し上げたイギリス映画『真珠の耳飾りの少女』のように、終始一貫絵画的な階調と光線で映像を作っているわけでない。基本は、ハリウッドの新作映画らしく先鋭なディテールのハイコントラスト(悪く言えばドンシャリ)で鮮やかな色彩の現代映像である。つまり、画質的に二つの顔を持つといっていい。

だからブルーレイディスク『ブーリン家の姉妹』を家庭で完璧に再現するためには、「二つの画質の顔」を分裂させず矛盾なく統一した映像美学に高めていけるディスプレイ(テレビ)が理想である。私はこのブルーレイディスクに関して、最初にLCOS方式のプロジェクターで見て再生の難しさに気づき、次に各社の液晶方式で確信を深めた。

皆さんもご承知の通り、現在の薄型テレビは液晶方式とプラズマ方式に二分される。両方式は一長一短だが、画質に関していうと、液晶方式は明るさと鮮鋭感、プラズマ方式はやや照明を調光した環境下でのなめらかで自然な映像に特徴がある。液晶方式で再生した場合、「二つの画質の顔」の現代的な鮮鋭感が液晶方式の画質傾向と重なり強調され全体のバランスを支配してしまう。

プラズマ方式の最大の特徴として、パネルが自発光であることが挙げられる。自然光を活かした歴史的建造物でのロケシーンでこれが柔らかな光の描写につながり、映像のユニフォーミティ(一体感、連続感)を生み出す。現在、液晶方式はLEDバックライト(RGB方式と擬似白色の二種類がある)のローカルディミング(部分制御)で映像の部分部分で明るさをコントロール、階調表現を高める工夫を競っているが、画素単位で点灯消灯を繰り返すプラズマ方式は、ある意味「究極の部分制御」である。『ブーリン家の姉妹』は典型的なプラズマ方式向きのソフトである。ただし、出来のいいプラズマ方式、に限られるのだが。

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