高橋敦氏がその実力へ徹底的に迫る
3D音響技術を搭載したマクセルのハイCP機 iPod/iPhone対応スピーカー「MXSP-2200」登場
◆◇◆ 試聴レポート Part 1 ◆◇◆ |
■「マジックスピーカー」は脱帽モノの効果
マクセルの…というより他社を含めたiPod/iPhone対応スピーカーの中でも、特にコンパクトと言えるこのMXSP-2200。
となると、音質面では相当に不利なはずなのだが、しかし実際に聴いてみると驚かされた。「コスト/パフォーマンス」と「設置面積/パフォーマンス」の両面から高く評価できる音だ。つまりどういうことかというと「この小ささとお値段でこの高音質なら大満足!」なのである。
その“大満足”のポイントを見ていこう。
まずはやはり、「マジックスピーカー」技術の効果について紹介したい。
これほどコンパクトな筐体で左右のスピーカーが近距離に設置されていれば、音場の左右の広がりの狭さ、ステレオ感の大幅減少は、通常であれば不可避だ。しかし左右の音の大きさや時間差を処理することで、その広がりを仮想的に拡張してくれるのが「マジックスピーカー」技術だ。果たしてその効果はいかほどだろうか?
結論から言うと、脱帽モノの効果だ。リモコンにボタンが用意されており再生中にオン/オフが可能なので、様々な音源で聴き比べてみたが、オンにした瞬間の音場がパッと広がる感触は明確である。
例えばBill Evans Trio「Waltz For Debby」のベース。その定位は完全に左スピーカーに振られている。この音の再現に際して、マジックスピーカーをオフにした状態では、モノラルに近い音場の中で「ちょっと左に寄っているかな…」という程度。実際のスピーカー間隔の幅をそのまま反映して、その範囲の中で精一杯に左に寄っているという印象だ。
だがマジックスピーカーをオンにすると、本体の幅を大きく超えて音場が広がり、ベースはその音場の左端に大きく振られた。同技術によってスピーカー間隔を仮想的に約60cmにまで拡張できるという売り文句にも納得させられる。
さらに驚かされたのはMathias Landaeus Trio「Opening」を聴いたときだ。この音源はワンポイントステレオ録音という手法でレコーディングされており、極めて高い空間性が特長だ。しかしマジックスピーカーをオフにした状態では、それが少々感じにくい。筐体のコンパクトさが故に、左右の広がりもそうなのだが、奥行感や立体感も感じにくく、やや平面的な音場になってしまう。
ところがマジックスピーカーをオンにすると、その奥行感や立体感までもがありありと蘇る。オフの状態ではまさに本体が置かれているその点からのみ音が届いていたが、オンにすると、本体を通り過ぎた後方にまで音場が広がり、ドラムスなどはそこに定位される。これは期待を超えた効果だ。
開発意図がどのようなものであったのかは聞き及んでいないが、しかし結果として、左右のスピーカーの間隔を仮想的に拡張することは、音場の奥行方向の広がりに再現にもつながっているようだ。
また、空間が広がることで音像の密集も解消されるので、ひとつひとつの音もより細やかに届いてくる。例えばシンバルの1枚1枚がちゃんと別の位置に定位されるので、それらの音のそれぞれの分離が確保され、その繊細な演奏の機微が引き出される。
またそもそも音場中央に定位するボーカルはこの機能の影響をあまり受けないかと思いきや、実際にJacintha「Lush Life」で試してみると、歌声の自然なほぐれや広がりに大きな差があった。もちろんオンの方がずっとずっと好ましい感触だ。
というわけで「マジックスピーカー」の効果は絶大だ。この手のいわゆる「バーチャル〜」機能にありがちな、音調の不自然な加工感も特には気にならない。オン/オフできるわけだが、このような聴き比べを行う場合以外では、オフにする理由が見当たらない。普通はオンのままでよいだろう。