ネットオーディオのハイレゾ音源にもマッチ
「音色」の生まれる瞬間に立ち会えるスピーカー − ECLIPSE「TD510」× 大橋伸太郎
■ECLIPSEがCHORD社とコラボレーションした背景
そうして聴こえてきたものは、楽器や声の実在感と、生々しい色付きのない音色だった。新たなミレニアムが開幕した2000年、ECLIPSE TDの初号機「512」は各国の展示会で紹介されるや、瞬く間に世界中のミュージシャン、作曲家、アレンジャーら「音を知る」プロフェッショナル達の心を捉えた。
オーディオビジュアル製品大国の日本だが、スピーカーシステムだけは世界に通用する製品が少なかった。日本発のスピーカー技術がこれだけ国際的に高い評価を受けたのは初めてといっていい。
ECLIPSE TDの衝撃的デビューから10年。ラインナップにはフラグシップの「TD712z」、スーパーウーファー「TD725sw」などが加わってユーザー層を広げているが、最新のトピックが英CHORD社とのコラボレーションである。
CHORD社のケーブル部門(CHORD CABLE CAMPANY)の技術開発担当取締役、ナイジェル・フィン氏がECLIPSE TDに惚れ込み、同社のレファレンス・スピーカーケーブル「Carnival Silver Screen」のパートナー(デモ再生機)にECLIPSE TDを選んだのである。ちなみにCarnival Silver Screenは、英国の主要HiFi専門誌『What HiFi Sound & Vision』で2008年から3年連続で「年間ベスト・スピーカー・ケーブル大賞」を受賞した製品だ。
彼は2001年にECLIPSE TDに出会った時の驚きをこう語る。「音を聴いた瞬間に素晴らしい可能性を直感したよ。実際に仲間内では『あれ、聴いた?』と噂になったしね」。
■「自分たちと同じことを目指していると共感した」
2007年にECLIPSE UKのスタッフが、完成したフラグシップTD712zの試聴の機会を設けたことで、両者の関係は急速に深まる。「まず強い印象を受けたのは信じられないくらいのコヒーレント(波形が整い揃っていて乱れがない)さ、スピード感、そして音のレゾリューションの高さの素晴らしさだ。自分たちと同じことを目指していると共感したよ」。
フィン氏は、CHORDのケーブル作りの方向性を「音の全てのエッセンスを出せるような正確なケーブルを作ること」と強調。「音のスモール・ダイナミクス、性質など、聴感レベルではとても小さなものを含め、全てのエッセンスを捉えてそのまま伝えられるようなものを作る」ことが重要であると説く。
こうした音の小さなディテールが積み重なることで「ただの『音』がどんどん『音楽』になっていく」とフィン氏は説明。さらにECLIPSE TDについて、その真骨頂は「このスモール・ダイナミクスを聴く事が出来る性能にある」と述べ、ケーブル作りのレファレンスにも活用しているという。「素材、素材の大きさ、ラミネート方法、シールドの有無と方法などを変えると、ECLIPSEではその違いを如実に聞き分ける事ができるから助かっている」。