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ネットオーディオのハイレゾ音源にもマッチ

「音色」の生まれる瞬間に立ち会えるスピーカー − ECLIPSE「TD510」× 大橋伸太郎

公開日 2010/12/22 10:51 大橋伸太郎
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21世紀が新たなディケード(10年)に入ろうという今、10年目を迎えたECLIPSE TDに改めて耳を澄ませてみよう。

今回はあえてフラグシップのTD712zではなく、ECLIPSE TDの<原器>「512」の発展進化型である「TD510」を試聴した。TD510をドライブするアンプには国産製品ではなく、米NuForceのクラスDアンプ「IA-7E」を使用した。SACD/CDプレーヤーはアキュフェーズDP-700である。

「TD510」。ブラック/シルバー/ホワイトの3色が揃う。価格は92,400円/1本

スピーカーケーブルにはもちろんCHORDの「Carnival Silver Screen」を使っている。なお、富士通テンでは2011年3月21日までTD510を購入した方全員にCarnival Silver Screen(5mペア)をプレゼントするキャンペーンを実施している。

プリメインアンプにはNuForce「IA-7E」を使用した

■音色の生まれる瞬間に立ち会えるスピーカーシステム

TD510で様々な音楽を聴いた印象を一言で言うと、「音色の生まれる瞬間に立ち会えるスピーカーシステム」である。ピアノの場合、打鍵のスピードと深さ、圧力の総和で音色が生まれるるが、まさにコンタクトの瞬間を捉えるスピードと解像力がある。ピアニッシモからフォルティシモまで、それが一貫している。

内田光子(p)の弾く『シューマン ダビッド同盟舞曲集』(CD)は音色が透明でいて濃密、和声の描写が明快である。曲の進行や和声に発揮されたシューマンの異能というか、良い意味でのロマンティックな屈折が、実に豊かに味わい深く聞き取れる。

回析現象がほぼ無いエンクロージャーでフルレンジユニットを駆動しているため、とにかく音の鮮度が抜群に高い。音楽の全体像に、帯域分担によって不可避な断層や歪みがないのだ。音色がむらなく整い、弱音は研ぎ澄まされ、フォーカスが精密に合った曇りのない望遠レンズで見つめているようだ。位相の遅れや回転もなく、コンサートホール一階中央のほどよい距離からピアノ演奏の全体に正しく向き合っているような、心地よい定位感と自然な実在感がある。

■NuForceのIA-7Eとのマッチングも抜群

ポップス系ソースはどうだろう。最近筆者がよく聴くCD、セルジオ・メンデス&ブラジル’66の1970年大阪万博でのライブを聴いてみよう。

オンマイクで捉えた女性ボーカルのユニゾンの、抜群の解像感に息を呑む。フルレンジ駆動の鮮度とエンクロージャー形状の利で、音像がピタリとフロントセクションに収束し、実にリアルな実在感だ。


「IA-7Eとのマッチングも良い」と大橋氏
NuForceのIA-7Eとのマッチングも良い。音の鮮度に加え、デジタルアンプらしいくっきりしたコントラスト感とDレンジのレスポンスが、TD510のフルレンジの帯域の両翼を押し拡げ、躍動的なダイナミックレンジでスケール感を生み出している。

バックのパーカッションやピアノの硬質なギラリとした量感、切れ味も素晴らしい。その総和で生き生きとしたライブ感覚が試聴室に溢れ、オンサイトの臨場感に酔いしれる。この日聴いたECLIPSE TD510とIA-7Eの組み合わせは、まさに鮮度×鮮度の掛け合わせ。佇まいも音もシンプル・イズ・ビューティフルの極地だ。ここにはオーディオの新しい表情と存在感がある。

■ネットオーディオのハイレゾ音源の再生にも最適

ネットオーディオのハイレゾ音源が家庭のリスニングルームに続々とやって来ようという今、求められているものは新しい酒を盛るための新しい革袋だろう。つまりは、今までなかなか聴こえてこなかった、音楽表現の個性と響きの核心である生々しい<音色>を曇りなく捉え、伝えることの出来る再生システムである。

ソースの方はハイレゾへ進んだ。一方のハードはというと、<時間>を制するものがハイレゾを制する。それをこの日確信した。

オーディオの2000年台の開幕を告げたECLIPSE TDは、2011年からの新たな10年間をも、いち早く連れて来たのである。

(大橋伸太郎)

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